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第四章 アルティメット編開始
第681話 魔術師リアムのアルティメット編・最後の砦攻略、午後
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リアム達が席へと戻ると、大量の仕事が待っていた。
「後で詳しくね」
木佐ちゃんはそう言うと、意識をすぐに仕事へと切り替えた。次々にリアムにやってもらいことを横に積み上げていく。リアムは気合いを入れると、作業に集中し始めた。祐介もかなり仕事が溜まってしまったらしく、電話をかけてはメールをし、また電話をかけては書類を作って印刷をし、と忙しそうである。
あっという間に昼休みになると、リアムと祐介は外に昼飯を食べに行った。蒸し暑い中での移動は辛かったので、すぐ近くの蕎麦屋に赴いた。ざる蕎麦なるものは、何とも美味なものだ。リアムはすっかりハマってしまった。この国には美味しい物が山の様にあるのがいい。多少色味は味気ないが。
午後になって相変わらずバタバタと仕事をしていると、エレベーターの方から珍しく静かに羽田が入ってきた。そのすぐ後ろには、橋本がいる。展示場での商談が終わったのだろう。
三階の社員達は皆、羽田の様子がおかしいことにすでに気が付いている様だ。いつもだったら少しでもジロジロ見るとカーッとなる羽田が、今日は何も言わない。下ばかり向いているので、恐らく周りの視線に気付いていないのだろう。
「帰社後すぐにと仰ってましたから、落ち着いたらすぐに行きますよ」
ラガーマン橋本がそう言うと、羽田は素直に頷いてみせただけだった。
「一体何の話だって言うんだよ……」
「さあ、詳しくは。とにかく急ぎましょう」
「分かったよ」
羽田にはいつもの覇気がない。多分、麗子が来ていることは知っているのだろう。でなかればあんな態度にはなるまい。
社員達がしんとした状態で羽田と橋本が再び執務エリアを出るのを見送った。それを見届けた木佐ちゃんが、こそっとリアムに尋ねる。
「……どうしたの、羽田さん。知ってる?」
祐介が佐川に伝えたことは、まだ他の社員には伝わっていないらしい。リアムは小声で答えた。
「麗子さんに、全部バレたのだ」
「うわあ……。でも社長も羽田さんも、自業自得よね」
そしてにっこりと笑った。うむ、この人も暴力沙汰を目にしない限りは、相当しっかりとした女子である。肝っ玉も座っており、とても頼りがいのある上役だ。
「早川さんの件については、また別途話そう」
ユメの件は、かなり繊細な話である。麗子の話もまた然りだ。祐介の様に細やかな男であればいいのだろうが、そうではない様にも思われる他の者にもペラペラと内情を話してしまうのには抵抗があった。以前のただの男であったリアムだったら、もしかしたら大して深く考えることなく事実として話していたかもしれない。だが今は、ユメの苦悩と覚悟、そして麗子の女神の様な心の広さがどこに由来するものなのか、ついそれを考えてしまう様になってしまった。だからこの場ではもう言えなかった。
女とは、実に不思議な生き物だ。そしてリアムもその女の一人の身体の中に入っている。心はいつでも、きっといつまで経っても男のリアムのままだろうが、だが、少しずつ女というものがどういうものなのか分かってきた気がした。
化粧で武装し、笑顔で自分を守り、必死で生き抜いている。少なくとも、リアムが知っている女性はそうだ。
だから、初めて思った。
女の身体もなかなか悪くないかもしれない、と。
「後で詳しくね」
木佐ちゃんはそう言うと、意識をすぐに仕事へと切り替えた。次々にリアムにやってもらいことを横に積み上げていく。リアムは気合いを入れると、作業に集中し始めた。祐介もかなり仕事が溜まってしまったらしく、電話をかけてはメールをし、また電話をかけては書類を作って印刷をし、と忙しそうである。
あっという間に昼休みになると、リアムと祐介は外に昼飯を食べに行った。蒸し暑い中での移動は辛かったので、すぐ近くの蕎麦屋に赴いた。ざる蕎麦なるものは、何とも美味なものだ。リアムはすっかりハマってしまった。この国には美味しい物が山の様にあるのがいい。多少色味は味気ないが。
午後になって相変わらずバタバタと仕事をしていると、エレベーターの方から珍しく静かに羽田が入ってきた。そのすぐ後ろには、橋本がいる。展示場での商談が終わったのだろう。
三階の社員達は皆、羽田の様子がおかしいことにすでに気が付いている様だ。いつもだったら少しでもジロジロ見るとカーッとなる羽田が、今日は何も言わない。下ばかり向いているので、恐らく周りの視線に気付いていないのだろう。
「帰社後すぐにと仰ってましたから、落ち着いたらすぐに行きますよ」
ラガーマン橋本がそう言うと、羽田は素直に頷いてみせただけだった。
「一体何の話だって言うんだよ……」
「さあ、詳しくは。とにかく急ぎましょう」
「分かったよ」
羽田にはいつもの覇気がない。多分、麗子が来ていることは知っているのだろう。でなかればあんな態度にはなるまい。
社員達がしんとした状態で羽田と橋本が再び執務エリアを出るのを見送った。それを見届けた木佐ちゃんが、こそっとリアムに尋ねる。
「……どうしたの、羽田さん。知ってる?」
祐介が佐川に伝えたことは、まだ他の社員には伝わっていないらしい。リアムは小声で答えた。
「麗子さんに、全部バレたのだ」
「うわあ……。でも社長も羽田さんも、自業自得よね」
そしてにっこりと笑った。うむ、この人も暴力沙汰を目にしない限りは、相当しっかりとした女子である。肝っ玉も座っており、とても頼りがいのある上役だ。
「早川さんの件については、また別途話そう」
ユメの件は、かなり繊細な話である。麗子の話もまた然りだ。祐介の様に細やかな男であればいいのだろうが、そうではない様にも思われる他の者にもペラペラと内情を話してしまうのには抵抗があった。以前のただの男であったリアムだったら、もしかしたら大して深く考えることなく事実として話していたかもしれない。だが今は、ユメの苦悩と覚悟、そして麗子の女神の様な心の広さがどこに由来するものなのか、ついそれを考えてしまう様になってしまった。だからこの場ではもう言えなかった。
女とは、実に不思議な生き物だ。そしてリアムもその女の一人の身体の中に入っている。心はいつでも、きっといつまで経っても男のリアムのままだろうが、だが、少しずつ女というものがどういうものなのか分かってきた気がした。
化粧で武装し、笑顔で自分を守り、必死で生き抜いている。少なくとも、リアムが知っている女性はそうだ。
だから、初めて思った。
女の身体もなかなか悪くないかもしれない、と。
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