680 / 731
第四章 アルティメット編開始
第677話 魔術師リアムのアルティメット編・最後の砦攻略、残すところはあと一人
しおりを挟む
麗子とユメが和解したことで、残す砦はあと一つ、羽田だけとなった。
社長の「麗子にばれたくない」という望みは叶わなかったが、今後は麗子の大海原の様に広い心に感謝して生きていくことになるだろう。そうなってもらわぬと、きっと誰も割に合わない。
「久住社長」
リアムが社長に向き直った。
「はい!」
社長が居住まいを正してリアムを見た。その目に浮かぶのは、安堵。図られたとはいえ、不義を働いたのはこの男も同様である。一番恐れていた麗子との別れが回避されたことで、ほっとしただろうことは理解出来た。
「あなたに、羽田さんの対処についてご対応いただきたい」
社長が、ごくりと唾を呑み込む音が聞こえた。
「……あなた、私も、いえ、私がちゃんと話をしないと」
「麗子さんは駄目だよ! だって羽田さんはずっと麗子さんのことが好きだったってことだろ!? 僕がやる! 僕が、ちゃんと今度こそ!!」
「でも、羽田さんにはいつも強く出れないじゃない!」
「そ、そうだけど!」
ここはここで何やら微妙な力関係があるらしい。すると、祐介がさらっと提案した。
「では、お二方に追加して、今回のプロジェクトリーダーの橋本さんに代表として立ち会っていただきましょうか」
「えっ山岸くん、それ喋っちゃうの?」
麗子が訝しげに社長と祐介を交互に見た。プロジェクトとは一体何のことか、という目だった。
祐介は麗子に向かっていつものあの有無を言わせない笑顔を見せると、はっきりと言った。
「社長命令で発足したプロジェクトなので、詳細は社長にお伺いください」
「ちょっ山岸くん!」
途端、社長が慌て出したが、祐介は一切動じない。
「僕、何か間違ったこと言いましたか?」
社長が、ぐっと詰まってそのまま黙り込んだ。この男はまだこの期に及んで隠し事を麗子に対ししようとしているらしい。愚かだ、とリアムは思った。
「……お二方」
「……はい」
しょぼくれた社長が、恨めしそうな目でリアムを見た。ここは、麗子にもきちんと伝えておいた方がいいだろう。
「私に貞操の危機があった件も踏まえ、きちんと処理をしていただきたいと思う」
麗子の目が見開かれた後、社長をぎろりと見た。社長は更に縮こまってしまった。
「祐介も、散々殴られた。沢山血も出た。その理由を質す質さないはお任せするが、我々が羽田さんを警戒し続ける数週間を送ったことを、是非念頭においていただきたいと思う」
リアムがそう告げると、麗子が社長の腕に触れ、しっかりと頷いてみせた。
「……分かったわ。早々に羽田さんと話をするから。もう、私達のことであなた達に迷惑は掛けないよう、ちゃんと話をします」
「頼んだ」
麗子の姿は凛として、見ていて心地よい。
「社員の安全を守るのは会社の義務よ。それを私達会社の代表が脅かしていたなんて、あってはならないことですから、ちゃんと、ちゃんとします。終わったら、きちんと報告をしますから」
リアムも祐介もユメも、麗子のその言葉に頷いた。社長は麗子の横でまだ少し不安そうな顔をしている。こんな情けない浮気性の男のどこがいいのかとも思うが、それでも離れられない絆があるのかもしれなかった。
リアムと祐介の様に。
「では、一旦退散しよう」
リアムがそう言うと、祐介が扉を開け、ユメは振り返ると麗子に向かってぺこりと深くお辞儀をした。
残すところはあと一人。
賽は投げられた。
社長の「麗子にばれたくない」という望みは叶わなかったが、今後は麗子の大海原の様に広い心に感謝して生きていくことになるだろう。そうなってもらわぬと、きっと誰も割に合わない。
「久住社長」
リアムが社長に向き直った。
「はい!」
社長が居住まいを正してリアムを見た。その目に浮かぶのは、安堵。図られたとはいえ、不義を働いたのはこの男も同様である。一番恐れていた麗子との別れが回避されたことで、ほっとしただろうことは理解出来た。
「あなたに、羽田さんの対処についてご対応いただきたい」
社長が、ごくりと唾を呑み込む音が聞こえた。
「……あなた、私も、いえ、私がちゃんと話をしないと」
「麗子さんは駄目だよ! だって羽田さんはずっと麗子さんのことが好きだったってことだろ!? 僕がやる! 僕が、ちゃんと今度こそ!!」
「でも、羽田さんにはいつも強く出れないじゃない!」
「そ、そうだけど!」
ここはここで何やら微妙な力関係があるらしい。すると、祐介がさらっと提案した。
「では、お二方に追加して、今回のプロジェクトリーダーの橋本さんに代表として立ち会っていただきましょうか」
「えっ山岸くん、それ喋っちゃうの?」
麗子が訝しげに社長と祐介を交互に見た。プロジェクトとは一体何のことか、という目だった。
祐介は麗子に向かっていつものあの有無を言わせない笑顔を見せると、はっきりと言った。
「社長命令で発足したプロジェクトなので、詳細は社長にお伺いください」
「ちょっ山岸くん!」
途端、社長が慌て出したが、祐介は一切動じない。
「僕、何か間違ったこと言いましたか?」
社長が、ぐっと詰まってそのまま黙り込んだ。この男はまだこの期に及んで隠し事を麗子に対ししようとしているらしい。愚かだ、とリアムは思った。
「……お二方」
「……はい」
しょぼくれた社長が、恨めしそうな目でリアムを見た。ここは、麗子にもきちんと伝えておいた方がいいだろう。
「私に貞操の危機があった件も踏まえ、きちんと処理をしていただきたいと思う」
麗子の目が見開かれた後、社長をぎろりと見た。社長は更に縮こまってしまった。
「祐介も、散々殴られた。沢山血も出た。その理由を質す質さないはお任せするが、我々が羽田さんを警戒し続ける数週間を送ったことを、是非念頭においていただきたいと思う」
リアムがそう告げると、麗子が社長の腕に触れ、しっかりと頷いてみせた。
「……分かったわ。早々に羽田さんと話をするから。もう、私達のことであなた達に迷惑は掛けないよう、ちゃんと話をします」
「頼んだ」
麗子の姿は凛として、見ていて心地よい。
「社員の安全を守るのは会社の義務よ。それを私達会社の代表が脅かしていたなんて、あってはならないことですから、ちゃんと、ちゃんとします。終わったら、きちんと報告をしますから」
リアムも祐介もユメも、麗子のその言葉に頷いた。社長は麗子の横でまだ少し不安そうな顔をしている。こんな情けない浮気性の男のどこがいいのかとも思うが、それでも離れられない絆があるのかもしれなかった。
リアムと祐介の様に。
「では、一旦退散しよう」
リアムがそう言うと、祐介が扉を開け、ユメは振り返ると麗子に向かってぺこりと深くお辞儀をした。
残すところはあと一人。
賽は投げられた。
0
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
性欲排泄欲処理系メイド 〜三大欲求、全部満たします〜
mm
ファンタジー
私はメイドのさおり。今日からある男性のメイドをすることになったんだけど…業務内容は「全般のお世話」。トイレもお風呂も、性欲も!?
※スカトロ表現多数あり
※作者が描きたいことを書いてるだけなので同じような内容が続くことがあります
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
[恥辱]りみの強制おむつ生活
rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。
保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる