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第四章 アルティメット編開始
第675話 魔術師リアムのアルティメット編・最後の砦攻略、久住社長と麗子さんの続き
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麗子が、ユメを見上げた。
「どうしよう、私あなたのことを責められなんてしない……」
「……いえ、理由はどうであれ、私がやったことは最低なことです」
麗子が立ち上がった。
「だって聞いてたもの! さっき言ってたじゃない! 昏睡状態の弟さんの入院費が必要だったって!!」
「そうですけど! だからってやっていいことと悪いことは!!」
「だって!!」
麗子が叫んだ。
「だって、羽田さんがあなたに嫌がらせをして働き口を奪っちゃったんでしょう!? それって、元を質せば私の所為じゃない!!」
「でも……」
「追い詰められて、それをこの人は呑気に……!」
麗子の叫びに、社長が項垂れた。こやつに関しては、それでいい。リアムがうんうんと頷く。
「あなたの人生を、狂わせた……!」
麗子はそう言うと、なんとユメに抱きついて泣き出してしまった。
すると、祐介がリアムの袖を周りからは見えない様に小さく摘んだ。リアムが何事かと祐介を見上げると、後ろにくいっと引っ張って、小さく笑った。つまり、今は口出しするな、ということらしい。リアムは頷いてみせた。
まさかの愛人の妻に抱きつかれてしまったユメは驚いて、リアムに助けを求める様な視線を送ってきたが、確かに祐介の言う通りこれはリアムにはどうしようもないことだ。リアムが口を挟む様なことではないのだから。
すると、ユメが諦めた様に、ふ、と力を抜いた。
「……実は昨日、弟が三年ぶりに目を覚ましたんです」
「え……?」
麗子さんが、涙でぐしゃぐしゃになった顔を上げた。
「羽田さんにされたことで確かに私の、その……言い方はあれですけど身も心も汚れましたけど、でも全部が全部、無駄じゃなかったですから」
身も心も汚れた、と言われ、社長が更に深く項垂れた。うむ。
「弟が目を覚ますきっかけを与えてくれたのは、野原さんですから」
「え……?」
麗子が驚いた様な表情をして、リアムを振り返る。
「あー、その、ツボ押しとかを調べてくれたりしたんです!」
ツボ押し。祐介がリアムにやってくれるあれであろうか。まあ魔法を使ったなどと言えないこの世界では、その辺りが妥当な説明になるのだろうか?
「私の様子を寝ている弟に話しかけてくれたり!」
一服しているユメの姿を映像として送り込んだあれのことであろう。
「そうしたら、昨日! 三年ぶりに弟が起きたんです! だから野原さんに出会えてなかったら、弟は目を覚ましてなかった!」
ユメの説明には無理やり感が否めなかったが、リアムはとりあえず肯定の意を示す為、こくりと頷いた。
「……だから、無駄じゃなかった、です」
ユメが、また頭を下げた。
「図々しいのは分かってます。ですけど、私を救ってくれた野原さんがいるこの会社で、まだ働き続けたいんです」
「早川さん……」
「勿論、今のみたいなあり得ないお給料はもうもらえません。だけど、だけど……ここに、まだいさせてはもらえませんでしょうか……!」
麗子は驚いた顔をした後、ゆっくりと社長に振り向いた。
「あなた」
「……はい」
「彼女には、もう絶対に手を出さないって約束出来るかしら?」
麗子がそう言うと、社長は飛び上がって答えた。
「勿論です! 僕、これからは心を入れ替えて、もう麗子さんしか見ないから!!」
麗子は、今度はユメを見た。その表情には、怒りは窺えなかった。
「早川さん」
「はい!」
「お互い、思う所はあると思うけど」
「……はい」
「今後は、私もあなたの力になる」
ユメが、驚愕の表情で麗子を見返す。
「罪滅ぼしを、させて下さい」
凛としてそう言う麗子は、美しく強い女性だ、とリアムは思ったのだった。
「どうしよう、私あなたのことを責められなんてしない……」
「……いえ、理由はどうであれ、私がやったことは最低なことです」
麗子が立ち上がった。
「だって聞いてたもの! さっき言ってたじゃない! 昏睡状態の弟さんの入院費が必要だったって!!」
「そうですけど! だからってやっていいことと悪いことは!!」
「だって!!」
麗子が叫んだ。
「だって、羽田さんがあなたに嫌がらせをして働き口を奪っちゃったんでしょう!? それって、元を質せば私の所為じゃない!!」
「でも……」
「追い詰められて、それをこの人は呑気に……!」
麗子の叫びに、社長が項垂れた。こやつに関しては、それでいい。リアムがうんうんと頷く。
「あなたの人生を、狂わせた……!」
麗子はそう言うと、なんとユメに抱きついて泣き出してしまった。
すると、祐介がリアムの袖を周りからは見えない様に小さく摘んだ。リアムが何事かと祐介を見上げると、後ろにくいっと引っ張って、小さく笑った。つまり、今は口出しするな、ということらしい。リアムは頷いてみせた。
まさかの愛人の妻に抱きつかれてしまったユメは驚いて、リアムに助けを求める様な視線を送ってきたが、確かに祐介の言う通りこれはリアムにはどうしようもないことだ。リアムが口を挟む様なことではないのだから。
すると、ユメが諦めた様に、ふ、と力を抜いた。
「……実は昨日、弟が三年ぶりに目を覚ましたんです」
「え……?」
麗子さんが、涙でぐしゃぐしゃになった顔を上げた。
「羽田さんにされたことで確かに私の、その……言い方はあれですけど身も心も汚れましたけど、でも全部が全部、無駄じゃなかったですから」
身も心も汚れた、と言われ、社長が更に深く項垂れた。うむ。
「弟が目を覚ますきっかけを与えてくれたのは、野原さんですから」
「え……?」
麗子が驚いた様な表情をして、リアムを振り返る。
「あー、その、ツボ押しとかを調べてくれたりしたんです!」
ツボ押し。祐介がリアムにやってくれるあれであろうか。まあ魔法を使ったなどと言えないこの世界では、その辺りが妥当な説明になるのだろうか?
「私の様子を寝ている弟に話しかけてくれたり!」
一服しているユメの姿を映像として送り込んだあれのことであろう。
「そうしたら、昨日! 三年ぶりに弟が起きたんです! だから野原さんに出会えてなかったら、弟は目を覚ましてなかった!」
ユメの説明には無理やり感が否めなかったが、リアムはとりあえず肯定の意を示す為、こくりと頷いた。
「……だから、無駄じゃなかった、です」
ユメが、また頭を下げた。
「図々しいのは分かってます。ですけど、私を救ってくれた野原さんがいるこの会社で、まだ働き続けたいんです」
「早川さん……」
「勿論、今のみたいなあり得ないお給料はもうもらえません。だけど、だけど……ここに、まだいさせてはもらえませんでしょうか……!」
麗子は驚いた顔をした後、ゆっくりと社長に振り向いた。
「あなた」
「……はい」
「彼女には、もう絶対に手を出さないって約束出来るかしら?」
麗子がそう言うと、社長は飛び上がって答えた。
「勿論です! 僕、これからは心を入れ替えて、もう麗子さんしか見ないから!!」
麗子は、今度はユメを見た。その表情には、怒りは窺えなかった。
「早川さん」
「はい!」
「お互い、思う所はあると思うけど」
「……はい」
「今後は、私もあなたの力になる」
ユメが、驚愕の表情で麗子を見返す。
「罪滅ぼしを、させて下さい」
凛としてそう言う麗子は、美しく強い女性だ、とリアムは思ったのだった。
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