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第四章 アルティメット編開始
第673話 魔術師リアムのアルティメット編・最後の砦攻略、久住社長と麗子さん
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ボロボロと泣く麗子に、社長は大慌てで社長室内にあるティッシュの箱を持ってくると、シュパシュパと大量にティッシュを出して麗子に渡した。
麗子はそれを受け取って涙を拭き取ると、皆に声を掛ける。
「……話は中でしましょう」
麗子がちらりと居心地が悪そうにしている田辺を見た。こんな修羅場を強制的に見せられている側も堪ったものではないだろう。
リアム達が社長室に再び入ると、祐介が扉を閉めた。
「……羽田さんが、こんなことを考えたの?」
ソファーに腰掛けた麗子が、誰を見るでもなく、ポツリと尋ねた。社長はそんな麗子の隣に座ると、一瞬迷った様だったが、すぐに彼女の手を取った。
「……ごめん、言えなかったんだ」
麗子はふるふると首を横に振った。さてこの後はどういう話になるか。とにかくユメの当面の職と、羽田への対処がはっきりとするまでは居心地が悪かろうがこの場を立ち去る訳にはいかぬだろう。
「ある日突然だったんだ」
社長が言うと、麗子がユメを見上げた。ユメは覚悟をとっくに決めているのだろう、一歩進むと、麗子に向かって言った。
「一年半前です。私が入社する少し前から、羽田さんは愛人となる相手を探していました」
「わざわざ探してまで? あの人が?」
麗子が驚いた表情になった。きっと、羽田が他の人に見せる姿と麗子に見せる姿は違うのだろう。だから信じられないのだ。
「私は彼に目を付けられて、当時勤めていたキャバクラに嫌がらせをされて、首になりました。そこで話を持ちかけられたんです」
麗子が口を押さえた。社長が覗き込む様に聞く。
「麗子さん、大丈夫……?」
「あなた、一年半前って、私が病院に行き始めた頃なの!」
「え?」
病院。何だろうか。
「麗子さん、羽田さんに何か話したの?」
「……ちょっと愚痴っちゃったことは、あった」
麗子が、自分の膝を見つめながら続ける。
「皆、何のことだか分からないと思うから言うと、実は私その頃から更年期障害が始まって、結構症状が酷くて、この人にもイライラして当たり散らしたりしちゃって、喧嘩が増えて、それでこの人にその、誘われてもこんな自分が嫌で、それで……」
麗子がひと息入れてから、言った。
「女として見られないんじゃないかって、だからこの人が避ける様になったんじゃないかって、羽田さんについ愚痴っちゃったの」
リアムは祐介をそっと見上げた。祐介もリアムを見ると、少し眉を顰めながら小さく頷いた。これがきっと、全てのきっかけだ。ずっと好きで好きで、それでも彼女の願いを、幸せを願って恋敵に譲った。それなのに、そんなにして一緒になった筈だったのに、ある日彼女から聞いてしまった不満。
以前祐介が教えてくれたこの更年期障害なるものは、女性には起こり得る症状なのだろう。それこそリアムが前回死ぬ程驚いた生理の様に、女性として生きていくならばついて回る問題に違いない。
飲み会で社長が言っていたことと、麗子の言っていることは合致している。夜の営みに誘われたが、女としての自信を失いかけていた麗子はそれに応えられず、そしてどんどん夫婦の関係が悪化していってしまったのだ。
とても繊細な問題だ。
「そうしたら羽田さん、黙っちゃって。どうしたのって聞いたら、試験をしてやるって。何のことか分からなかったけど、そう、これがそういうことだったのね」
そうして、羽田の心に火が点いてしまったのだ。
麗子はそれを受け取って涙を拭き取ると、皆に声を掛ける。
「……話は中でしましょう」
麗子がちらりと居心地が悪そうにしている田辺を見た。こんな修羅場を強制的に見せられている側も堪ったものではないだろう。
リアム達が社長室に再び入ると、祐介が扉を閉めた。
「……羽田さんが、こんなことを考えたの?」
ソファーに腰掛けた麗子が、誰を見るでもなく、ポツリと尋ねた。社長はそんな麗子の隣に座ると、一瞬迷った様だったが、すぐに彼女の手を取った。
「……ごめん、言えなかったんだ」
麗子はふるふると首を横に振った。さてこの後はどういう話になるか。とにかくユメの当面の職と、羽田への対処がはっきりとするまでは居心地が悪かろうがこの場を立ち去る訳にはいかぬだろう。
「ある日突然だったんだ」
社長が言うと、麗子がユメを見上げた。ユメは覚悟をとっくに決めているのだろう、一歩進むと、麗子に向かって言った。
「一年半前です。私が入社する少し前から、羽田さんは愛人となる相手を探していました」
「わざわざ探してまで? あの人が?」
麗子が驚いた表情になった。きっと、羽田が他の人に見せる姿と麗子に見せる姿は違うのだろう。だから信じられないのだ。
「私は彼に目を付けられて、当時勤めていたキャバクラに嫌がらせをされて、首になりました。そこで話を持ちかけられたんです」
麗子が口を押さえた。社長が覗き込む様に聞く。
「麗子さん、大丈夫……?」
「あなた、一年半前って、私が病院に行き始めた頃なの!」
「え?」
病院。何だろうか。
「麗子さん、羽田さんに何か話したの?」
「……ちょっと愚痴っちゃったことは、あった」
麗子が、自分の膝を見つめながら続ける。
「皆、何のことだか分からないと思うから言うと、実は私その頃から更年期障害が始まって、結構症状が酷くて、この人にもイライラして当たり散らしたりしちゃって、喧嘩が増えて、それでこの人にその、誘われてもこんな自分が嫌で、それで……」
麗子がひと息入れてから、言った。
「女として見られないんじゃないかって、だからこの人が避ける様になったんじゃないかって、羽田さんについ愚痴っちゃったの」
リアムは祐介をそっと見上げた。祐介もリアムを見ると、少し眉を顰めながら小さく頷いた。これがきっと、全てのきっかけだ。ずっと好きで好きで、それでも彼女の願いを、幸せを願って恋敵に譲った。それなのに、そんなにして一緒になった筈だったのに、ある日彼女から聞いてしまった不満。
以前祐介が教えてくれたこの更年期障害なるものは、女性には起こり得る症状なのだろう。それこそリアムが前回死ぬ程驚いた生理の様に、女性として生きていくならばついて回る問題に違いない。
飲み会で社長が言っていたことと、麗子の言っていることは合致している。夜の営みに誘われたが、女としての自信を失いかけていた麗子はそれに応えられず、そしてどんどん夫婦の関係が悪化していってしまったのだ。
とても繊細な問題だ。
「そうしたら羽田さん、黙っちゃって。どうしたのって聞いたら、試験をしてやるって。何のことか分からなかったけど、そう、これがそういうことだったのね」
そうして、羽田の心に火が点いてしまったのだ。
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