ドラゴンに殺られそうになって（電車にはねられそうになって）気が付いたらＯＬになっていた（気が付いたら魔術師になっていた）件

第四章 アルティメット編開始

第664話 ＯＬサツキのアルティメット編のマグノリア邸での身支度

　サツキが暫くそうやって考え事をしながらベッドでゴロゴロしていると、首にバスタオルを掛けた上半身裸なユラが、寝室の入り口からひょっこりと顔を覗かせた。

「ここにいたのか」

　そして、嬉しそうにベッドに腰掛けると言った。

「髪の毛拭いて」

　見ると、いつもの如く髪からは雫がポタポタと落ちている。サツキは思わず笑顔になると、起き上がって膝立ちになり、ユラの髪の毛をバスタオルで拭き始めた。

　ユラの細い絹の様な金髪を、押さえる様にして水気を拭き取っていく。あのまま日本にいたら、金髪に手を触れることなど一度もなかっただろうな、などと思った。

「ユラの髪の毛、綺麗だね」
「ん？　そうか？　俺はお前の真っ直ぐな黒髪の方がいいと思うけど」
「じゃあお互いないものねだりだね」
「なくはないだろ」
「え？」

　ユラは薄く笑うと、サツキの手首を掴んでサツキをじっと見つめる。水色の瞳の中にある少しグレーがかった虹彩に吸い込まれる感覚に陥った。

　すると、ユラが囁く様に言った。

「お前の目は、吸い込まれそうだ」
「……同じこと考えてたよ」
「俺の目？」
「うん。綺麗」

　はは、と笑うユラの顔が急に真顔に戻ったかと思うと、顔が近付いて、優しく触れて去っていく。

「……風呂入ってこいよ。酒盛りの用意してるから」
「……うん」

　不覚にも、離れたくなくてしがみつきたくなってしまった。でも確かに言う通り、サツキもかなり薄汚れている。風呂にはしっかりと入りたかった。

　ユラが手首を離して立ち上がると、サツキの頭をポンと撫でて寝室を出て行った。

「サツキ？　どうしたの？」

　ベッドの足元で二人の様子を眺めていたラムが、不思議そうに尋ねてきた。ぽうっとしてしまっていたらしい。

「あは、何でもないよ。お風呂に入ってくるね」
「うん。ラムここにいるね」

　ラムも今日は相当魔力を消費しているからか、先程から少し眠そうだ。

「うん、休んでて」

　サツキがそう言うと、ラムはその場で丸くなった。今夜はゆっくり魔力をあげないとかな、とサツキは微笑んだ。