662 / 731
第四章 アルティメット編開始
第660話 OLサツキのアルティメット編のマグノリア邸帰宅へ
しおりを挟む
道のど真ん中で熱いキスを交わしていた二人は、荷台を引いてきた男に「邪魔だよ!」と言われるまでずっとその場にいた。
ぽわ、としてしまったサツキの力の抜け具合が分かったのか、ユラは笑うと抱き抱えたまま歩を進める。
「ユラ、私降りるよ」
「いいんだよ、お前はしがみついてろ」
ユラがそう言うので、サツキは慌てて抜いていた腕に力をまた入れて首に抱きついた。サツキは別に重くはないと思うが、それだって人ひとりだ。ずっと持っていたら、絶対重い。
「ユラは格好つけるのが好き」
ユラの横をぶすっと膨れてサツキの赤いローブの裾を小さく摘んだラムが、機嫌の悪さを隠しもせずに言った。それに対し、ユラはふふんと優越感満載の笑みで答えた。
「男なんざ格好つけてなんぼだぜ。あ、これもラムにゃまだ早かったか」
明らかに馬鹿にした様なその言い方に、ラムが怒った。
「ラム女の子だもん! だからまだ早いとかじゃないもん!」
「何言ってんだよガキが。いいか、俺は男だ。サツキは女だ。そんでお前はガキ。ほら簡単だろ? だからサツキは俺に任せときゃいいってことだ」
「ラムだって役に立つもん!」
「あーはいはい、バトルの時に役に立ってくれよ」
「ユラ腹立つ!!」
「あははっ」
サツキは二人のやり取りをハラハラとして見てることしか出来なかった。もう、どうしてこの二人はすぐに言い争いを始めてしまうんだろうか。サツキは小さく溜息をついた。
それにしても、とサツキは思う。今、ユラははっきりと言った。サツキは女だと。そこには一切の迷いもなさそうだった。だから、ユラはずっとサツキを女だと思っているということだ。男のリアムの姿の時も、そういえばこの人はサツキに対する態度は一切ぶれなかった。
目に見える物しか信じないと言っているユラなのに、男の姿のサツキを女と言うのか。
ユラはスタスタとどんどん進む。まるで何かに背中を押されているかの様に、段々と速度が速くなる。
「ユラ、どうしたの?」
トイレにでも行きたいのだろうか。
「うん?」
「焦ってるみたいだから、お腹でも痛いの?」
サツキがそう尋ねると、ユラが一瞬キョトンとした後、実に楽しそうに笑った。その笑顔はあまりにも素直な笑顔で、サツキの胸の奥がきゅ、とした。
「あは、違う違う。俺焦ってる様に見えるか?」
「うん」
ユラは更に笑い出した。何がそんなにおかしいんだろうか。
「やべえ俺、滅茶苦茶余裕なくなってんだろうな、自分で分かんなかった!」
「え!? やっぱりお腹痛いの!? 降りるよ! 先に走って行った方がいいんじゃない!?」
「だから違うって」
少し歩くスピードを落としたユラが、サツキの口にちゅ、とキスをした。
「楽しみ過ぎて、気が急いてる」
「楽しみ?」
「サツキと家に帰るのが楽しみ」
「酒盛りが?」
「それもあるけど、もっとある」
「え?」
サツキが首を傾げていると、ユラは横を歩くラムをチラリと見て呟いた。
「問題はこいつだな……どこかに閉じ込めとかねえと」
「え?」
「何でもねえよ! さ、帰ろうサツキ!」
最高の笑顔を浮かべたユラは、悪戯を仕掛けて待つ子供の様な笑顔で言ったのだった。
ぽわ、としてしまったサツキの力の抜け具合が分かったのか、ユラは笑うと抱き抱えたまま歩を進める。
「ユラ、私降りるよ」
「いいんだよ、お前はしがみついてろ」
ユラがそう言うので、サツキは慌てて抜いていた腕に力をまた入れて首に抱きついた。サツキは別に重くはないと思うが、それだって人ひとりだ。ずっと持っていたら、絶対重い。
「ユラは格好つけるのが好き」
ユラの横をぶすっと膨れてサツキの赤いローブの裾を小さく摘んだラムが、機嫌の悪さを隠しもせずに言った。それに対し、ユラはふふんと優越感満載の笑みで答えた。
「男なんざ格好つけてなんぼだぜ。あ、これもラムにゃまだ早かったか」
明らかに馬鹿にした様なその言い方に、ラムが怒った。
「ラム女の子だもん! だからまだ早いとかじゃないもん!」
「何言ってんだよガキが。いいか、俺は男だ。サツキは女だ。そんでお前はガキ。ほら簡単だろ? だからサツキは俺に任せときゃいいってことだ」
「ラムだって役に立つもん!」
「あーはいはい、バトルの時に役に立ってくれよ」
「ユラ腹立つ!!」
「あははっ」
サツキは二人のやり取りをハラハラとして見てることしか出来なかった。もう、どうしてこの二人はすぐに言い争いを始めてしまうんだろうか。サツキは小さく溜息をついた。
それにしても、とサツキは思う。今、ユラははっきりと言った。サツキは女だと。そこには一切の迷いもなさそうだった。だから、ユラはずっとサツキを女だと思っているということだ。男のリアムの姿の時も、そういえばこの人はサツキに対する態度は一切ぶれなかった。
目に見える物しか信じないと言っているユラなのに、男の姿のサツキを女と言うのか。
ユラはスタスタとどんどん進む。まるで何かに背中を押されているかの様に、段々と速度が速くなる。
「ユラ、どうしたの?」
トイレにでも行きたいのだろうか。
「うん?」
「焦ってるみたいだから、お腹でも痛いの?」
サツキがそう尋ねると、ユラが一瞬キョトンとした後、実に楽しそうに笑った。その笑顔はあまりにも素直な笑顔で、サツキの胸の奥がきゅ、とした。
「あは、違う違う。俺焦ってる様に見えるか?」
「うん」
ユラは更に笑い出した。何がそんなにおかしいんだろうか。
「やべえ俺、滅茶苦茶余裕なくなってんだろうな、自分で分かんなかった!」
「え!? やっぱりお腹痛いの!? 降りるよ! 先に走って行った方がいいんじゃない!?」
「だから違うって」
少し歩くスピードを落としたユラが、サツキの口にちゅ、とキスをした。
「楽しみ過ぎて、気が急いてる」
「楽しみ?」
「サツキと家に帰るのが楽しみ」
「酒盛りが?」
「それもあるけど、もっとある」
「え?」
サツキが首を傾げていると、ユラは横を歩くラムをチラリと見て呟いた。
「問題はこいつだな……どこかに閉じ込めとかねえと」
「え?」
「何でもねえよ! さ、帰ろうサツキ!」
最高の笑顔を浮かべたユラは、悪戯を仕掛けて待つ子供の様な笑顔で言ったのだった。
0
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
性欲排泄欲処理系メイド 〜三大欲求、全部満たします〜
mm
ファンタジー
私はメイドのさおり。今日からある男性のメイドをすることになったんだけど…業務内容は「全般のお世話」。トイレもお風呂も、性欲も!?
※スカトロ表現多数あり
※作者が描きたいことを書いてるだけなので同じような内容が続くことがあります
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
[恥辱]りみの強制おむつ生活
rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。
保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる