656 / 731
第四章 アルティメット編開始
第654話 OLサツキのアルティメット編・フレイのダンジョンの精算
しおりを挟む
ウルスラが正面から畳み掛け、ジュリアンが逃げようとするとユラが横から退路を塞ぐ様に追い詰めていく。
その様を少し離れたところから見ていたサツキとアールは、顔を見合わせていた。
「あいつら普段は仲悪い癖に、金のことになると滅茶苦茶意気投合するよな」
「見事な連携プレーだよね」
「あそこまで金に執着があるのに、何であいつらには金運がないんだろうなあ」
アールがクスクスと笑った。
「うちに来れば、持ち家だからお金かからないのに」
「そうなの?」
「元々うちの実家の所有なんだよ」
「それ、ウルスラに教えた?」
「そういえば教えてないな」
「言えば多分すぐ女子寮から出ると思うよ……」
「おお! やっぱサツキは頭がいいな!」
頭がいい以前の問題だと思ったが、アールが喜んでいるのでそれ以上コメントするのは控えた。
「ユラも、家賃が高いとかいっつもボヤいてるぜ。サツキの家、広いんだろ? 住まわせてやったらユラも助かるんじゃないか?」
今度はサツキが驚く番だった。
「えっ!? ゆ、ユラと一緒に住む!?」
すると、ユラが声を聞きつけたのか、こちらを振り返った。サツキはユラと目が合ってしまい、慌てて逸らした。拙い、聞かれただろうか。
サツキは声をひそめると、アールの腕をぺちんと叩いた。
「ば、馬鹿! 何言ってんのよ!」
今はリアムの姿だしジュリアンもいるしであんまり女らしい口調は避けた方がいいのかなとも思ったが、そんなことを考える余裕は今のサツキにはなかった。
いやまあそりゃここのところ家に入り浸りだったし同じベッドで寝たりもしてるけど、そんな一緒に住もうなんて自分から同棲を申し込む様なこと。
そこまで考えて、はたと気付いた。いや、同棲じゃない。この場合、サツキはおっさんリアムだからただの同居に過ぎない。
急にスーッと焦りが消えた。
それに、多分ユラはアールだったから男を好きになっただけで、この先男を好きになる保証はどこにもない。そんな状態で、家賃を浮かす為にユラを誘うなんて、いくらサツキがユラが好きでもあまりにも惨めだ。
しかも恋人でも連れ込まれた日には、多分もう帰りたくなくなる。
「……ちょっと、耐えられないと思う」
「何が耐えられないんだ?」
しょんぼりして床を見ていたサツキの目の前に、いきなりユラのどアップが現れた。薄汚れててもクールビューティーな顔ににこやかな笑みを乗せて、サツキを下から覗き上げている。
こんなのといつもキスをしてるのかと改めて思うと、途端に先程までサツキの中に満ち溢れていた勇気が霧散してしまった。
だから、またフイ、と目を逸らしてしまった。途端、ユラの声が不機嫌なものになる。
「アール? お前また何かサツキに言ったのか?」
アールは大慌てで首をぶるぶると横に振った。頭が飛んでいきそうな勢いだ。
「ご、ごめんサツキ」
アールはそう言うと、同じくこちらき戻って来ていたウルスラの背中に隠れる様にして縮こまった。
「サツキ、そう凹むなよ」
ユラはそう慰めてくれたが、今回アールは何も悪くない。
「アールは何も悪くないよ。ちょっと私が勝手に想像して、勝手に凹んだだけだから」
「何をだよ」
「……」
まさか本人にそんなことを言える訳もなく、サツキは黙り込んでしまったのだった。
その様を少し離れたところから見ていたサツキとアールは、顔を見合わせていた。
「あいつら普段は仲悪い癖に、金のことになると滅茶苦茶意気投合するよな」
「見事な連携プレーだよね」
「あそこまで金に執着があるのに、何であいつらには金運がないんだろうなあ」
アールがクスクスと笑った。
「うちに来れば、持ち家だからお金かからないのに」
「そうなの?」
「元々うちの実家の所有なんだよ」
「それ、ウルスラに教えた?」
「そういえば教えてないな」
「言えば多分すぐ女子寮から出ると思うよ……」
「おお! やっぱサツキは頭がいいな!」
頭がいい以前の問題だと思ったが、アールが喜んでいるのでそれ以上コメントするのは控えた。
「ユラも、家賃が高いとかいっつもボヤいてるぜ。サツキの家、広いんだろ? 住まわせてやったらユラも助かるんじゃないか?」
今度はサツキが驚く番だった。
「えっ!? ゆ、ユラと一緒に住む!?」
すると、ユラが声を聞きつけたのか、こちらを振り返った。サツキはユラと目が合ってしまい、慌てて逸らした。拙い、聞かれただろうか。
サツキは声をひそめると、アールの腕をぺちんと叩いた。
「ば、馬鹿! 何言ってんのよ!」
今はリアムの姿だしジュリアンもいるしであんまり女らしい口調は避けた方がいいのかなとも思ったが、そんなことを考える余裕は今のサツキにはなかった。
いやまあそりゃここのところ家に入り浸りだったし同じベッドで寝たりもしてるけど、そんな一緒に住もうなんて自分から同棲を申し込む様なこと。
そこまで考えて、はたと気付いた。いや、同棲じゃない。この場合、サツキはおっさんリアムだからただの同居に過ぎない。
急にスーッと焦りが消えた。
それに、多分ユラはアールだったから男を好きになっただけで、この先男を好きになる保証はどこにもない。そんな状態で、家賃を浮かす為にユラを誘うなんて、いくらサツキがユラが好きでもあまりにも惨めだ。
しかも恋人でも連れ込まれた日には、多分もう帰りたくなくなる。
「……ちょっと、耐えられないと思う」
「何が耐えられないんだ?」
しょんぼりして床を見ていたサツキの目の前に、いきなりユラのどアップが現れた。薄汚れててもクールビューティーな顔ににこやかな笑みを乗せて、サツキを下から覗き上げている。
こんなのといつもキスをしてるのかと改めて思うと、途端に先程までサツキの中に満ち溢れていた勇気が霧散してしまった。
だから、またフイ、と目を逸らしてしまった。途端、ユラの声が不機嫌なものになる。
「アール? お前また何かサツキに言ったのか?」
アールは大慌てで首をぶるぶると横に振った。頭が飛んでいきそうな勢いだ。
「ご、ごめんサツキ」
アールはそう言うと、同じくこちらき戻って来ていたウルスラの背中に隠れる様にして縮こまった。
「サツキ、そう凹むなよ」
ユラはそう慰めてくれたが、今回アールは何も悪くない。
「アールは何も悪くないよ。ちょっと私が勝手に想像して、勝手に凹んだだけだから」
「何をだよ」
「……」
まさか本人にそんなことを言える訳もなく、サツキは黙り込んでしまったのだった。
0
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
性欲排泄欲処理系メイド 〜三大欲求、全部満たします〜
mm
ファンタジー
私はメイドのさおり。今日からある男性のメイドをすることになったんだけど…業務内容は「全般のお世話」。トイレもお風呂も、性欲も!?
※スカトロ表現多数あり
※作者が描きたいことを書いてるだけなので同じような内容が続くことがあります
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
[恥辱]りみの強制おむつ生活
rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。
保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる