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第四章 アルティメット編開始

第654話 OLサツキのアルティメット編・フレイのダンジョンの精算

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 ウルスラが正面から畳み掛け、ジュリアンが逃げようとするとユラが横から退路を塞ぐ様に追い詰めていく。

 その様を少し離れたところから見ていたサツキとアールは、顔を見合わせていた。

「あいつら普段は仲悪い癖に、金のことになると滅茶苦茶意気投合するよな」
「見事な連携プレーだよね」
「あそこまで金に執着があるのに、何であいつらには金運がないんだろうなあ」

 アールがクスクスと笑った。

「うちに来れば、持ち家だからお金かからないのに」
「そうなの?」
「元々うちの実家の所有なんだよ」
「それ、ウルスラに教えた?」
「そういえば教えてないな」
「言えば多分すぐ女子寮から出ると思うよ……」
「おお! やっぱサツキは頭がいいな!」

 頭がいい以前の問題だと思ったが、アールが喜んでいるのでそれ以上コメントするのは控えた。

「ユラも、家賃が高いとかいっつもボヤいてるぜ。サツキの家、広いんだろ? 住まわせてやったらユラも助かるんじゃないか?」

 今度はサツキが驚く番だった。

「えっ!? ゆ、ユラと一緒に住む!?」

 すると、ユラが声を聞きつけたのか、こちらを振り返った。サツキはユラと目が合ってしまい、慌てて逸らした。拙い、聞かれただろうか。

 サツキは声をひそめると、アールの腕をぺちんと叩いた。

「ば、馬鹿! 何言ってんのよ!」

 今はリアムの姿だしジュリアンもいるしであんまり女らしい口調は避けた方がいいのかなとも思ったが、そんなことを考える余裕は今のサツキにはなかった。

 いやまあそりゃここのところ家に入り浸りだったし同じベッドで寝たりもしてるけど、そんな一緒に住もうなんて自分から同棲を申し込む様なこと。

 そこまで考えて、はたと気付いた。いや、同棲じゃない。この場合、サツキはおっさんリアムだからただの同居に過ぎない。

 急にスーッと焦りが消えた。

 それに、多分ユラはアールだったから男を好きになっただけで、この先男を好きになる保証はどこにもない。そんな状態で、家賃を浮かす為にユラを誘うなんて、いくらサツキがユラが好きでもあまりにも惨めだ。

 しかも恋人でも連れ込まれた日には、多分もう帰りたくなくなる。

「……ちょっと、耐えられないと思う」
「何が耐えられないんだ?」

 しょんぼりして床を見ていたサツキの目の前に、いきなりユラのどアップが現れた。薄汚れててもクールビューティーな顔ににこやかな笑みを乗せて、サツキを下から覗き上げている。

 こんなのといつもキスをしてるのかと改めて思うと、途端に先程までサツキの中に満ち溢れていた勇気が霧散してしまった。

 だから、またフイ、と目を逸らしてしまった。途端、ユラの声が不機嫌なものになる。

「アール? お前また何かサツキに言ったのか?」

 アールは大慌てで首をぶるぶると横に振った。頭が飛んでいきそうな勢いだ。

「ご、ごめんサツキ」

 アールはそう言うと、同じくこちらき戻って来ていたウルスラの背中に隠れる様にして縮こまった。

「サツキ、そう凹むなよ」

 ユラはそう慰めてくれたが、今回アールは何も悪くない。

「アールは何も悪くないよ。ちょっと私が勝手に想像して、勝手に凹んだだけだから」
「何をだよ」
「……」

 まさか本人にそんなことを言える訳もなく、サツキは黙り込んでしまったのだった。
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