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第四章 アルティメット編開始
第636話 OLサツキのアルティメット編・フレイのダンジョンのフレイムドラゴン戦開始
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パーティーが全員揃い、前衛にアールとウルスラ、後衛にサツキとユラが布陣した。ドラゴンの身体の中の溶岩は、まだ動いていない。
「今の内に準備しましょう!」
ウルスラがそう言うと、ユラはバリアーラとアグレッサを唱えた。濃い緑色のヴェールに、赤の粒子が交じる。
「やっぱりサツキがいると全然違うな」
ユラがぼそりと言った。サツキは思わずユラを振り向いた。よく見たら、裾にも襟元にも血の痕がこびり付いているじゃないか。どれだけ苦労してここまで辿り着いたんだろう。サツキはさっさと気を失って、アールに起こしてもらうまではただ呑気に寝ていただけだ。モンスターに会うこともなく、ただ暗闇を歩いてきただけ。
ユラとウルスラをこんな目に遭わせたのは、サツキが咄嗟にメルトを唱えてしまったからだ。後に残される二人の気持ちなど考えもしなかったサツキの所為で、二人はこんなにボロボロになっても戦ってここまで来てくれた。
後悔の念が、サツキを襲った。
もっともっとちゃんと積極的に勉強していたら、もしかしたらアールを助ける別の方法が見つかっていたかもしれない。ユラのことを先生と頼り、自ら積極的に努力しなかったサツキの怠慢だ。
こんなことじゃ、いつまで経ってもユラの隣に立つ資格なんてない。好きだの何だの言っている場合じゃない。こんな情けないままじゃ、恥ずかしくて皆ともいられない。
「ごめん、ユラ。ごめんね」
サツキは小さく言った。ユラが、え? という顔でこちらを見る。
「今何か言ったか?」
「ううん。ユラ、私も全力で行くから」
「あんまり無茶すんなよ」
自分は満身創痍な癖に、こういうことを言うのはいかにもユラらしいが、でもただ喜んでその優しさの上に胡座をかいている訳にはいかなかった。
サツキはリアムだ。リアムはこのパーティーの主戦力だ。サツキがノロノロとした所為で、皆に迷惑を掛けたくはない。
「私からいく!」
サツキはそう宣言すると、スウ、と息を吸って、全神経を目の前のドラゴンに集中した。このドラゴンのレベルは分からないが、この体内の溶岩がこのダンジョンに熱を与えていたに違いない。この階の気温も、かなり暑い。サウナの中で戦っている様なものだ。これではいくら皆が強くても、長くは保たないから。
まずは、あの体内の溶岩を弱める。でも破ると流れ出てきそうだから――
「アイスナ!!」
いつもの様につららではなく、あの中を凍らせるイメージでアイスナの呪文を唱えると、一瞬ドラゴンの体内が白く光ったが、だがそれだけだった。そしてその所為かどうか、溶岩の動きが再開してしまった。
グオオオオオッ!! ととんでもない声量の雄叫びをドラゴンがあげた。ビリビリ、と身体全体に振動が伝わる。すると、ドラゴンはギロリ、とサツキを見た。炎の宝石の様な橙色の瞳には、明らかに怒りが宿っていた。
フレイムドラゴンは、前衛のウルスラもアールも無視し、サツキに向かって口を開けると、大きく息を吸い込んだ。
ウルスラが急いでアールを自分の所に引っ張り寄せると、ドラゴンとサツキの間に障害物はなくなった。
「この!」
アールが移動しながらドラゴンに斬りつけたが、切り口からでろりと溶岩が流れ出ただけで、ドラゴンはアールには一瞥もくれなかった。それで分かった。ドラゴンがサツキに対し怒っているのは、攻撃をしかけた所為も勿論あるだろうが、サツキが挑戦者だと認定されたからだ。見られていなくても一緒だった。関係なかったのだ。
「今の内に準備しましょう!」
ウルスラがそう言うと、ユラはバリアーラとアグレッサを唱えた。濃い緑色のヴェールに、赤の粒子が交じる。
「やっぱりサツキがいると全然違うな」
ユラがぼそりと言った。サツキは思わずユラを振り向いた。よく見たら、裾にも襟元にも血の痕がこびり付いているじゃないか。どれだけ苦労してここまで辿り着いたんだろう。サツキはさっさと気を失って、アールに起こしてもらうまではただ呑気に寝ていただけだ。モンスターに会うこともなく、ただ暗闇を歩いてきただけ。
ユラとウルスラをこんな目に遭わせたのは、サツキが咄嗟にメルトを唱えてしまったからだ。後に残される二人の気持ちなど考えもしなかったサツキの所為で、二人はこんなにボロボロになっても戦ってここまで来てくれた。
後悔の念が、サツキを襲った。
もっともっとちゃんと積極的に勉強していたら、もしかしたらアールを助ける別の方法が見つかっていたかもしれない。ユラのことを先生と頼り、自ら積極的に努力しなかったサツキの怠慢だ。
こんなことじゃ、いつまで経ってもユラの隣に立つ資格なんてない。好きだの何だの言っている場合じゃない。こんな情けないままじゃ、恥ずかしくて皆ともいられない。
「ごめん、ユラ。ごめんね」
サツキは小さく言った。ユラが、え? という顔でこちらを見る。
「今何か言ったか?」
「ううん。ユラ、私も全力で行くから」
「あんまり無茶すんなよ」
自分は満身創痍な癖に、こういうことを言うのはいかにもユラらしいが、でもただ喜んでその優しさの上に胡座をかいている訳にはいかなかった。
サツキはリアムだ。リアムはこのパーティーの主戦力だ。サツキがノロノロとした所為で、皆に迷惑を掛けたくはない。
「私からいく!」
サツキはそう宣言すると、スウ、と息を吸って、全神経を目の前のドラゴンに集中した。このドラゴンのレベルは分からないが、この体内の溶岩がこのダンジョンに熱を与えていたに違いない。この階の気温も、かなり暑い。サウナの中で戦っている様なものだ。これではいくら皆が強くても、長くは保たないから。
まずは、あの体内の溶岩を弱める。でも破ると流れ出てきそうだから――
「アイスナ!!」
いつもの様につららではなく、あの中を凍らせるイメージでアイスナの呪文を唱えると、一瞬ドラゴンの体内が白く光ったが、だがそれだけだった。そしてその所為かどうか、溶岩の動きが再開してしまった。
グオオオオオッ!! ととんでもない声量の雄叫びをドラゴンがあげた。ビリビリ、と身体全体に振動が伝わる。すると、ドラゴンはギロリ、とサツキを見た。炎の宝石の様な橙色の瞳には、明らかに怒りが宿っていた。
フレイムドラゴンは、前衛のウルスラもアールも無視し、サツキに向かって口を開けると、大きく息を吸い込んだ。
ウルスラが急いでアールを自分の所に引っ張り寄せると、ドラゴンとサツキの間に障害物はなくなった。
「この!」
アールが移動しながらドラゴンに斬りつけたが、切り口からでろりと溶岩が流れ出ただけで、ドラゴンはアールには一瞥もくれなかった。それで分かった。ドラゴンがサツキに対し怒っているのは、攻撃をしかけた所為も勿論あるだろうが、サツキが挑戦者だと認定されたからだ。見られていなくても一緒だった。関係なかったのだ。
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