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第四章 アルティメット編開始

第632話 OLサツキのアルティメット編・フレイのダンジョンの隠された通路の出口の先

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 ここから先は、いつ何時敵が襲ってくるか分からない。その為、サツキは出来るだけ集中した後、バリアーラの呪文を唱えた。緑色の淡い光のヴェールが三人を覆うが、やはりユラの唱えるものよりも大幅に効果が薄いのが色味で分かった。

「ユラみたいにはいかないね」

 サツキがあははと笑うと、アールも笑顔になって首を横に振った。

「サツキとユラのペアは相当強いと思うぞ。どちらが欠けても成り立たない。お互いの足りない部分をたった二人で補填し合えるなんて、俺は最高に羨ましいと思ってる」

 アールが急に褒め出した。どうしたんだろう、突然。

「俺なんかまだウルスラの足元にも及ばないっていうかさ、勝ってるのは腕力だけな感じだし。だけどユラとサツキはその点、見事にぴったり凹凸を埋め合ってるって感じだよな」
「え……そ、そう?」

 ユラが自分に好意はないんだろうと分かっていても、ユラの役に立っているんだと思うと嬉しくなる。それ程に、自分はユラのことが好きらしい。だから、好きだということだけは、やはり言おうかな。どうせ振られるなら、言ってしまえばいい。以前だったら絶対に思わなかったことを、サツキは思った。これも皆、仲間のお陰に違いない。

 仲間、でふと思った。

「ねえ、ユラ達、こんな暑さの中最下層に向かってるのかな?」

 気温は益々上がっていっている。あの二人は氷の魔法も使えなければ、ブリーザラーも使えない。ラムがいるにはいるが、果たしてラムの力だけで辿り着けるものなのか。

「……確かに、途中で進めなくなっている可能性もあるよな」
「暑いもんね……」

 夜は温泉階に転移魔法陣で戻って休憩出来たとしても、この暑さでは身体が保たないのではないか。

「下手すると、俺とサツキだけで戦うことになるかも?」

 はは、とアールがちっとも楽しくなさそうに笑った。

「でもそうしたら、やるしかないよ」

 今は魔力はたっぷりあるから最悪フルールを唱えることも出来るが、だからといってこのメンバーだけで外に出てしまっては、ユラ達と合流が出来なくなる。仲間は置いてはいけない。ユラもウルスラも、最下層で合流出来ると信じてくれている筈だから。

 赤い明かりが、辺りに揺らめき始めた。近い。

「アール、私が先に行く」

 小声でサツキはアールを制した。敵を発見し次第、フリーズだ。サツキは杖を構えると、少しずつ、なるべく音を立てない様に明かりの方へと近付いた。

 そっと目だけ覗かせてみる。リアムの時と同じ状況なのだろう、この通路は広間の中腹辺りに位置するらしく、炎の熱が揺らめいている壁が目に写った。それが、動いている。もう少し進まないと、見えない。

 サツキは出来るだけ静かに、もう一歩前に出た。

 炎に揺れる、赤い鱗に覆われた恐竜の翼の様なものが見えた。かなり大きい。まだ顔が見えない。こちらを向いていない内にフリーズだから、顔を確認しないと。

 サツキが更にもう一歩前に出ると、ようやく眼下にいる物の正体が分かった。

 そして、モンスターの奥から、懐かしい声が聞こえた。

「って、何でドラゴンがここにいるのよおおおおおお!!」

 ドラゴンが息を吸い込んだ。炎を吐いて燃やす気だ! サツキは隠れるのを止め、ドラゴンに向かって杖をピタリと向け、叫んだ。

「フリーズ!!」

 ドラゴンの動きが、止まった。
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