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第四章 アルティメット編開始

第628話 OLサツキのアルティメット編・フレイのダンジョンの隠された通路の中の悲しみ

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 黙り込んでしまったサツキをアールは心配そうにチラチラと見ていたが、頑なに答えないサツキに、アールは今は無理だと判断したらしい。前に向き直ると、先に進み始めた。

 入った時は広かった穴も、奥に行くにつれて段々全体的に狭くなっていっている。サツキ達がここに落ちてくる原因となった例の大蜘蛛なら、ぎりぎり通れない程度だ。もしかして、こうやって通路の大きさにより、強く大きいレベルの合っていないモンスターが入り込まないよう選別しているのではないか、とサツキは思った。

 というか、恐らく大きなモンスターが通れないから、だからこのダンジョンは中級止まりに違いない。一番始めに行ったルーンのダンジョンにももし通路があったら、多分この穴よりももっと小さいのではないか、とはサツキの推測だ。初級ダンジョンだったのに強いボスが入り込んでしまったのは、それが通路を通れるギリギリの大きさの蜥蜴だったからか、それとも今回の大蜘蛛の様に突然変異でダンジョン内で大きくなったかのどちらかでは。

 何故こんなことを真剣に考えているかというと、ユラがサツキの碇だった、だからサツキにやたらと構うのは好意からじゃなくただ碇としての役割だったからだ、という考えをとりあえずは頭から追い出す為だ。

 サツキの得意な、問題を横に置いておく、という方法である。

 どちらにしろ、今はパーティーの仲間としてまずは脱出する必要がある。ウルスラは今頃、必死になってアールを探しているだろう。早く合流して、笑顔がよく似合うあの人の顔に笑顔を取り戻してあげたい。

 だから、今は考えないことにする。無事にダンジョンを出たら、ユラはサツキに話があると言っていた。その時まで、この問題は保留にしておけばいい。

 じゃないと、足が止まる。切なくて胸が張り裂けそうになって、ユラを見たらきっとその胸に飛び込んでしまいたくなるから、だからサツキの感情には蓋をする。

 だって、今までずっとそうして生きてきた。嫌なことにも、へらへらと笑って乗り越えてきた実績がサツキにはある。だから、だからこれだって、きっとその内なんとか乗り越えられる。

 そしてまずはリュシカを尋ねるのだ。リアムには悪いが、銀行にはドラゴンを倒した時のお金に加え、これまで彼が溜めていたお金が山の様にあった。だから、リュシカのところを訪れる資金は十分にある。そして聞く。リアムにもユラにも誰にも迷惑を掛けずに生きていける方法を。サツキがユラの近くにいなくとも、この世界に残れる可能性があるかを。

 それを確認したら、今度は異世界に繋がるという魔法陣を探すのだ。そこでリアムの意思を確認して、リアムがあちらに残りたいというなら、サツキはリュシカに確認した方法を実行すればいい。そして後は、ユラに迷惑を掛けずにこちらに残る方法を模索すればいい。

 そして、リアムも帰りたいというならば、サツキも帰ればいい。

 大丈夫、失恋で死ぬことはない、とサツキは自分を慰める。これが正真正銘初めての恋で初めての失恋になるから、だから今は辛く感じるだけだ。だってきっと、世の中の人は殆ど皆これと同じ様なことを経験しているに違いないから。

 サツキの身体に付いているユラの痕が、またズキリと痛んだ。
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