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第四章 アルティメット編開始
第614話 OLサツキのアルティメット編・フレイのダンジョンの隠された通路の穴
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それからもサツキ、アールと須藤さんは大分重くなった足を引き摺りつつ歩いて行くと、ようやく大穴の前に辿り着いた。穴の先は暗く、それが上に向かっているのか真っ直ぐに向かっているのかそれとも下っているのかすら分からない。だが、空気が動いていることは分かった。この先は、どこかにちゃんと繋がっている。
念の為大穴から少し距離を置いた壁際に寄り掛かる様にして地面に座ったサツキとアールは、すでにクタクタでもう会話もなくなっていた。お互い考えるのは、上に残してきた愛する人のことだ。
「アール、バリアーラを唱えるからもう少し寄って」
「ん? ああ、そっか。寝てる間に襲われたりしたら溜まったもんじゃないもんな!」
ははっと笑うアールの顔には、力がなかった。
「アール、大丈夫? どこか具合でも悪いの?」
すると、須藤さんがぴょこぴょことアールの元にすり寄った。須藤さんから発光されていたライトの魔法は、もう殆ど薄れていて今は常夜灯程度の明るさしかなくなっていた。でも今はこれ位の方が寝られそうだ。サツキが唱えたライトは、段々と氷が溶けてきている所為だろう、こちらも徐々に光を失いつつあった。真っ暗になると危険だ。サツキは杖の先端にライトの呪文で明かりを灯した。今夜はこれを点けっぱなしで過ごすしかない。
アールは須藤さんの頭をよしよしと撫でると、ふ、と苦笑した。
「違うんだ。俺、前にリアムと離れて合流した時には『よかった』しか思わなかったんだけどさ、考えてみたら、リアムもダンジョンの通路じゃない所から出てきてたって思い出したんだ」
「え? そうだったの?」
アールが小さく頷く。
「気付いたのはウルスラだったんだけど、最下層の階よりも少しだけ上の穴からひょっこり出て来たんだって。俺はその時はドラゴンと戦ってたから見てなかったんだけど、そこから出て来た瞬間、ドラゴンが俺達じゃなくリアムを狙ったんだ。で、真っ黒になっちゃったリアムが下に落ちてきて、ユラが急いで死者蘇生の術を施したんだよ」
「そうだったんだ……」
サツキは、今アールが語った内容について一つの可能性があることに気が付いていた。その穴から出て来たリアムを狙った。つまりは、そこが次のボスになるかもしれないモンスターが侵入してくるポイントなのではないか、と。
リアムは、ドラゴンに挑戦者だと見做され、だから真っ先に焼かれてしまったのではないか。
アールは続ける。
「俺はサツキと須藤さんといるからまだこうして正気を保っていられてるけど、リアムはずっと一人だった。あの時は、もっと最下層まで距離があったし、合流するまで何日もかかっちゃったんだよな。リアムは明かりを灯すことは出来ても、食べ物もなく話し相手もなく、それでも一人でちゃんとボスの所まで辿り着いた。それって凄いなって、俺、今始めて思ったんだ」
「……リアムは強い人だったんだね」
サツキがそう言うと、アールは嬉しそうに言った。
「そう。すっげー強かった。格好よかった」
そんな人の身体に、今サツキはいるのだ。それがとても誇らしかった。
そして、彼はサツキ達に生き延びるヒントを残してくれた。
「アール」
「ん?」
「あそこを通り抜けたら、そのままボス戦になると思う。だからしっかり休んで回復しておこう」
「え……? よく分かんないけど、分かった」
二人は互いに頷くと、その場で横になったのだった。
念の為大穴から少し距離を置いた壁際に寄り掛かる様にして地面に座ったサツキとアールは、すでにクタクタでもう会話もなくなっていた。お互い考えるのは、上に残してきた愛する人のことだ。
「アール、バリアーラを唱えるからもう少し寄って」
「ん? ああ、そっか。寝てる間に襲われたりしたら溜まったもんじゃないもんな!」
ははっと笑うアールの顔には、力がなかった。
「アール、大丈夫? どこか具合でも悪いの?」
すると、須藤さんがぴょこぴょことアールの元にすり寄った。須藤さんから発光されていたライトの魔法は、もう殆ど薄れていて今は常夜灯程度の明るさしかなくなっていた。でも今はこれ位の方が寝られそうだ。サツキが唱えたライトは、段々と氷が溶けてきている所為だろう、こちらも徐々に光を失いつつあった。真っ暗になると危険だ。サツキは杖の先端にライトの呪文で明かりを灯した。今夜はこれを点けっぱなしで過ごすしかない。
アールは須藤さんの頭をよしよしと撫でると、ふ、と苦笑した。
「違うんだ。俺、前にリアムと離れて合流した時には『よかった』しか思わなかったんだけどさ、考えてみたら、リアムもダンジョンの通路じゃない所から出てきてたって思い出したんだ」
「え? そうだったの?」
アールが小さく頷く。
「気付いたのはウルスラだったんだけど、最下層の階よりも少しだけ上の穴からひょっこり出て来たんだって。俺はその時はドラゴンと戦ってたから見てなかったんだけど、そこから出て来た瞬間、ドラゴンが俺達じゃなくリアムを狙ったんだ。で、真っ黒になっちゃったリアムが下に落ちてきて、ユラが急いで死者蘇生の術を施したんだよ」
「そうだったんだ……」
サツキは、今アールが語った内容について一つの可能性があることに気が付いていた。その穴から出て来たリアムを狙った。つまりは、そこが次のボスになるかもしれないモンスターが侵入してくるポイントなのではないか、と。
リアムは、ドラゴンに挑戦者だと見做され、だから真っ先に焼かれてしまったのではないか。
アールは続ける。
「俺はサツキと須藤さんといるからまだこうして正気を保っていられてるけど、リアムはずっと一人だった。あの時は、もっと最下層まで距離があったし、合流するまで何日もかかっちゃったんだよな。リアムは明かりを灯すことは出来ても、食べ物もなく話し相手もなく、それでも一人でちゃんとボスの所まで辿り着いた。それって凄いなって、俺、今始めて思ったんだ」
「……リアムは強い人だったんだね」
サツキがそう言うと、アールは嬉しそうに言った。
「そう。すっげー強かった。格好よかった」
そんな人の身体に、今サツキはいるのだ。それがとても誇らしかった。
そして、彼はサツキ達に生き延びるヒントを残してくれた。
「アール」
「ん?」
「あそこを通り抜けたら、そのままボス戦になると思う。だからしっかり休んで回復しておこう」
「え……? よく分かんないけど、分かった」
二人は互いに頷くと、その場で横になったのだった。
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