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第四章 アルティメット編開始
第611話 魔術師リアムのアルティメット編・正体をばらした日の夜も終盤
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ぼうっとしているから変なことを考えるに違いない。リアムはそう思うと、急いで風呂に入ることにした。久々に風呂釜に湯を張って浸かりたいとは思ったが、あんな祐介を放ってはおけなかったので、シャワーで済ますことにした。
少しぬるめに設定し、一気に洗う。祐介が施す化粧はなかなかに濃く、かなりしっかりと洗わないと落ちない為、リアムは二度洗うことにしている。髪の毛も長いと暑いのだが、勝手に切ってもいいのだろうかとついサツキに遠慮してしまう。全ての方がついたら、思い切って切ってみようか。そうだ、祐介に聞いてみるのもいいかもしれぬ。そう思い、全ての方がついた時にはリアムはもう祐介の隣にいないかもしれないのだと思い、……手が止まった。
暫く頭からシャワーのお湯を浴びている内に、祐介が待っているかもしれないと慌てて頭も洗い始める。リアムの中はこんなに祐介で溢れているのに、あやつは祐介が一番ではないと思っている節があった。
「いかん、これは片付いてからと決めた筈だ」
リアムはあえて声に出して言った。とにかく今は早川ユメの弟を何とかしてやりたい。愛人などそもそもやりたくもなかったのだ。半ば強制的に始まってしまい、後戻り出来なくなった。であれば、続ける必要がなくなればいい。
そうしたら、次はいよいよ本陣、羽田だ。これまでの話を統合すると、羽田はどうも久住社長の妻、麗子に横恋慕しているらしい。一体何があって急に愛人を充てがおうという気になったのか。
麗子とやらに直接尋ねてみようか。
リアムはまだ麗子に会ったことはないが、羽田も麗子がいるなら暴れないのではないか。だが、久住社長は麗子に浮気のことがバレることを極端に恐れていた。夫婦間のことは分からないが、あれだけ近くで浮気され続けていたら、普通は気付かないだろうか? 特に久住社長が好きで好きで追いかけた女が、全く何も思わないとも思えぬ。
「ううむ……色恋は分からん」
そもそもがリアムの得意分野ではないのだ。早川ユメなら、羽田も久住社長もよく知っている。明日聞いてみるのがいいだろうと思い、リアムは仕上げにかかった。
急ぎ風呂から出ると、半袖のパジャマを着て頭にタオルを巻き、今日は適当にぱっぱと化粧水を付けた。隣の家で祐介が待っている。そう思うと気が急いてしまった。
リアムのこの気持ちを態度で示したら、祐介はどう反応するだろうか。そう、好きだと言う前に、祐介を拒絶などしていないと態度で示してみるのだ。そこで祐介の反応を見たら、いきなり全否定されて傷つくこともなくなるのではないか。
それは非常にいい考えに思えた。でもでは具体的に何をするのか? と考えても何も思いつかない。思いつかないまま、魔法陣に手を伸ばした。呪文を唱えると魔法陣から出た青い光がリアムを包み、一瞬で祐介の家のベッドの上に出た。
「うわ!」
「わ!」
すぐ目の前に祐介が立っていて、リアムはつんのめって転びそうになった。すると、祐介がリアムの両脇をさっと抱えてくれた。だからリアムは、その勢いのまま祐介の首に抱きついた。
「え? ど、どうしたの?」
祐介の頭は相変わらず拭き足りなくて濡れていて、リアムの頬が濡れてしまった。でも構わない。リアムは更にぎゅっとしがみついた。
「私も、寂しかったのだ」
「え?」
「だから抱き締めるがいい」
「うわ……上から……」
祐介はそう言いながらも、リアムをぎゅっと抱き締め返したのだった。
少しぬるめに設定し、一気に洗う。祐介が施す化粧はなかなかに濃く、かなりしっかりと洗わないと落ちない為、リアムは二度洗うことにしている。髪の毛も長いと暑いのだが、勝手に切ってもいいのだろうかとついサツキに遠慮してしまう。全ての方がついたら、思い切って切ってみようか。そうだ、祐介に聞いてみるのもいいかもしれぬ。そう思い、全ての方がついた時にはリアムはもう祐介の隣にいないかもしれないのだと思い、……手が止まった。
暫く頭からシャワーのお湯を浴びている内に、祐介が待っているかもしれないと慌てて頭も洗い始める。リアムの中はこんなに祐介で溢れているのに、あやつは祐介が一番ではないと思っている節があった。
「いかん、これは片付いてからと決めた筈だ」
リアムはあえて声に出して言った。とにかく今は早川ユメの弟を何とかしてやりたい。愛人などそもそもやりたくもなかったのだ。半ば強制的に始まってしまい、後戻り出来なくなった。であれば、続ける必要がなくなればいい。
そうしたら、次はいよいよ本陣、羽田だ。これまでの話を統合すると、羽田はどうも久住社長の妻、麗子に横恋慕しているらしい。一体何があって急に愛人を充てがおうという気になったのか。
麗子とやらに直接尋ねてみようか。
リアムはまだ麗子に会ったことはないが、羽田も麗子がいるなら暴れないのではないか。だが、久住社長は麗子に浮気のことがバレることを極端に恐れていた。夫婦間のことは分からないが、あれだけ近くで浮気され続けていたら、普通は気付かないだろうか? 特に久住社長が好きで好きで追いかけた女が、全く何も思わないとも思えぬ。
「ううむ……色恋は分からん」
そもそもがリアムの得意分野ではないのだ。早川ユメなら、羽田も久住社長もよく知っている。明日聞いてみるのがいいだろうと思い、リアムは仕上げにかかった。
急ぎ風呂から出ると、半袖のパジャマを着て頭にタオルを巻き、今日は適当にぱっぱと化粧水を付けた。隣の家で祐介が待っている。そう思うと気が急いてしまった。
リアムのこの気持ちを態度で示したら、祐介はどう反応するだろうか。そう、好きだと言う前に、祐介を拒絶などしていないと態度で示してみるのだ。そこで祐介の反応を見たら、いきなり全否定されて傷つくこともなくなるのではないか。
それは非常にいい考えに思えた。でもでは具体的に何をするのか? と考えても何も思いつかない。思いつかないまま、魔法陣に手を伸ばした。呪文を唱えると魔法陣から出た青い光がリアムを包み、一瞬で祐介の家のベッドの上に出た。
「うわ!」
「わ!」
すぐ目の前に祐介が立っていて、リアムはつんのめって転びそうになった。すると、祐介がリアムの両脇をさっと抱えてくれた。だからリアムは、その勢いのまま祐介の首に抱きついた。
「え? ど、どうしたの?」
祐介の頭は相変わらず拭き足りなくて濡れていて、リアムの頬が濡れてしまった。でも構わない。リアムは更にぎゅっとしがみついた。
「私も、寂しかったのだ」
「え?」
「だから抱き締めるがいい」
「うわ……上から……」
祐介はそう言いながらも、リアムをぎゅっと抱き締め返したのだった。
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