610 / 731
第四章 アルティメット編開始
第608話 OLサツキのアルティメット編・フレイのダンジョンの暗闇の先へ
しおりを挟む
サツキとアールと須藤さんは、暗闇の中暫く真っ直ぐに進んでいたが、右も左も前も後ろも相変わらず壁もなく、どうやらここは広い空洞なのではないか、と思い始めていた。暑いは暑いが、これまで程の暑さはない。だから多分、少しずれた場所にあるのではないか。
「どうしよう、全然壁にも穴にもどこにもぶち当たらない……」
段々、明るかったアールの表情が暗くなってきてしまった。これまで何度かアールが落ち込む場面は見てきたが、この人は落ち込むとそこそこ面倒臭い。
「まだ三十分位しか歩いてないよ」
「これまでの階とは比べ物にならない広さだよな……?」
確かにそうかもしれない。足場は悪いが、かといって歩みがそこまで遅い訳でもない。
「もう少し真っ直ぐ行ってみて、そしたら今度は横に歩いてみようか?」
「でも、さっきの場所に戻れなかったら」
段々不安になってきたらしい。サツキの手を握る手の力も、こころなしか緩んできた様な気がする。ここでサツキが一緒に不安になるのは簡単だったが、そうしたらきっと出られない。そんな気がしたから、サツキはユラに与えてもらった勇気を目一杯奮い立たせた。
「さっきの場所に戻っても意味はないでしょ。だから進んで正解だよアール。大丈夫だから」
サツキが誰かを励ますなど、少し前のサツキだったらあり得ない出来事だ。でも、今はユラもウルスラもいないから、その役目はサツキの役目に違いない。もう皆には沢山与えてもらったから、だから勇気を出せるだけ出して、そしてユラの元に帰るのだ。
アールはまだ不安そうで、少し怖い可能性を言い始めた。
「きっとウルスラ達、必死で探してるよな? あいつらと合流する前に、あいつらが俺達に気が付かないでボス戦になったら拙いよな……」
それは拙い。非常に拙い。ユラが回復出来るとはいえ、攻撃出来るのがウルスラの物理攻撃と、ラムの何回唱えられるか分からない魔法だけでは、この熱を持つダンジョンを支配するボスを倒すことは絶対厳しい。
「アールの言う通りだね。のんびりしていられないね」
多分、二人共今頃必死で下に向かっている。蜘蛛はもう殆どいないかもしれないが、他のモンスターはいるだろう。多分ウルスラ一人で戦っている。最下層に着く頃には、ウルスラもユラもボロボロになってしまっているのではないか。
絶対合流しないと、このままじゃ拙い。
サツキは立ち止まった。
「サツキ?」
アールが不安そうに尋ねる。
「問題は、先が見えないことだよね」
「あ、ああ、まあそうだな。先が見えてれば大分違うとは思うけど」
サツキは考えた。出来れば初級魔法がいい。出来るだけ遠くを照らす。その為には何か固形物が欲しい。先程、アールがやってみせた様に、それに光を与えれば。
「よし! ちょっと待ってて」
「え? どうするんだ?」
「やってみる。ちょっと下がってて」
「分かった」
アールは須藤さんと並んで、サツキから少し距離を取った。それを確認し、サツキは神経を集中する。
そして、唱えた。
「アイス!」
無数の氷の塊が、杖の先の空間で浮かんだ。そのまま、そこにいて。サツキは祈った。
「ライト!」
氷が、一斉に光り出す。
「凄え! 滅茶苦茶明るい!」
アールが感動している。確かに、アールのライトとは明るさが明らかに違っていた。
「どうしよう、全然壁にも穴にもどこにもぶち当たらない……」
段々、明るかったアールの表情が暗くなってきてしまった。これまで何度かアールが落ち込む場面は見てきたが、この人は落ち込むとそこそこ面倒臭い。
「まだ三十分位しか歩いてないよ」
「これまでの階とは比べ物にならない広さだよな……?」
確かにそうかもしれない。足場は悪いが、かといって歩みがそこまで遅い訳でもない。
「もう少し真っ直ぐ行ってみて、そしたら今度は横に歩いてみようか?」
「でも、さっきの場所に戻れなかったら」
段々不安になってきたらしい。サツキの手を握る手の力も、こころなしか緩んできた様な気がする。ここでサツキが一緒に不安になるのは簡単だったが、そうしたらきっと出られない。そんな気がしたから、サツキはユラに与えてもらった勇気を目一杯奮い立たせた。
「さっきの場所に戻っても意味はないでしょ。だから進んで正解だよアール。大丈夫だから」
サツキが誰かを励ますなど、少し前のサツキだったらあり得ない出来事だ。でも、今はユラもウルスラもいないから、その役目はサツキの役目に違いない。もう皆には沢山与えてもらったから、だから勇気を出せるだけ出して、そしてユラの元に帰るのだ。
アールはまだ不安そうで、少し怖い可能性を言い始めた。
「きっとウルスラ達、必死で探してるよな? あいつらと合流する前に、あいつらが俺達に気が付かないでボス戦になったら拙いよな……」
それは拙い。非常に拙い。ユラが回復出来るとはいえ、攻撃出来るのがウルスラの物理攻撃と、ラムの何回唱えられるか分からない魔法だけでは、この熱を持つダンジョンを支配するボスを倒すことは絶対厳しい。
「アールの言う通りだね。のんびりしていられないね」
多分、二人共今頃必死で下に向かっている。蜘蛛はもう殆どいないかもしれないが、他のモンスターはいるだろう。多分ウルスラ一人で戦っている。最下層に着く頃には、ウルスラもユラもボロボロになってしまっているのではないか。
絶対合流しないと、このままじゃ拙い。
サツキは立ち止まった。
「サツキ?」
アールが不安そうに尋ねる。
「問題は、先が見えないことだよね」
「あ、ああ、まあそうだな。先が見えてれば大分違うとは思うけど」
サツキは考えた。出来れば初級魔法がいい。出来るだけ遠くを照らす。その為には何か固形物が欲しい。先程、アールがやってみせた様に、それに光を与えれば。
「よし! ちょっと待ってて」
「え? どうするんだ?」
「やってみる。ちょっと下がってて」
「分かった」
アールは須藤さんと並んで、サツキから少し距離を取った。それを確認し、サツキは神経を集中する。
そして、唱えた。
「アイス!」
無数の氷の塊が、杖の先の空間で浮かんだ。そのまま、そこにいて。サツキは祈った。
「ライト!」
氷が、一斉に光り出す。
「凄え! 滅茶苦茶明るい!」
アールが感動している。確かに、アールのライトとは明るさが明らかに違っていた。
0
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
性欲排泄欲処理系メイド 〜三大欲求、全部満たします〜
mm
ファンタジー
私はメイドのさおり。今日からある男性のメイドをすることになったんだけど…業務内容は「全般のお世話」。トイレもお風呂も、性欲も!?
※スカトロ表現多数あり
※作者が描きたいことを書いてるだけなので同じような内容が続くことがあります
[恥辱]りみの強制おむつ生活
rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。
保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる