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第四章 アルティメット編開始

第608話 OLサツキのアルティメット編・フレイのダンジョンの暗闇の先へ

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 サツキとアールと須藤さんは、暗闇の中暫く真っ直ぐに進んでいたが、右も左も前も後ろも相変わらず壁もなく、どうやらここは広い空洞なのではないか、と思い始めていた。暑いは暑いが、これまで程の暑さはない。だから多分、少しずれた場所にあるのではないか。

「どうしよう、全然壁にも穴にもどこにもぶち当たらない……」

 段々、明るかったアールの表情が暗くなってきてしまった。これまで何度かアールが落ち込む場面は見てきたが、この人は落ち込むとそこそこ面倒臭い。

「まだ三十分位しか歩いてないよ」
「これまでの階とは比べ物にならない広さだよな……?」

 確かにそうかもしれない。足場は悪いが、かといって歩みがそこまで遅い訳でもない。

「もう少し真っ直ぐ行ってみて、そしたら今度は横に歩いてみようか?」
「でも、さっきの場所に戻れなかったら」

 段々不安になってきたらしい。サツキの手を握る手の力も、こころなしか緩んできた様な気がする。ここでサツキが一緒に不安になるのは簡単だったが、そうしたらきっと出られない。そんな気がしたから、サツキはユラに与えてもらった勇気を目一杯奮い立たせた。

「さっきの場所に戻っても意味はないでしょ。だから進んで正解だよアール。大丈夫だから」

 サツキが誰かを励ますなど、少し前のサツキだったらあり得ない出来事だ。でも、今はユラもウルスラもいないから、その役目はサツキの役目に違いない。もう皆には沢山与えてもらったから、だから勇気を出せるだけ出して、そしてユラの元に帰るのだ。

 アールはまだ不安そうで、少し怖い可能性を言い始めた。

「きっとウルスラ達、必死で探してるよな? あいつらと合流する前に、あいつらが俺達に気が付かないでボス戦になったら拙いよな……」

 それは拙い。非常に拙い。ユラが回復出来るとはいえ、攻撃出来るのがウルスラの物理攻撃と、ラムの何回唱えられるか分からない魔法だけでは、この熱を持つダンジョンを支配するボスを倒すことは絶対厳しい。

「アールの言う通りだね。のんびりしていられないね」

 多分、二人共今頃必死で下に向かっている。蜘蛛はもう殆どいないかもしれないが、他のモンスターはいるだろう。多分ウルスラ一人で戦っている。最下層に着く頃には、ウルスラもユラもボロボロになってしまっているのではないか。

 絶対合流しないと、このままじゃ拙い。

 サツキは立ち止まった。

「サツキ?」

 アールが不安そうに尋ねる。

「問題は、先が見えないことだよね」
「あ、ああ、まあそうだな。先が見えてれば大分違うとは思うけど」

 サツキは考えた。出来れば初級魔法がいい。出来るだけ遠くを照らす。その為には何か固形物が欲しい。先程、アールがやってみせた様に、それに光を与えれば。

「よし! ちょっと待ってて」
「え? どうするんだ?」
「やってみる。ちょっと下がってて」
「分かった」

 アールは須藤さんと並んで、サツキから少し距離を取った。それを確認し、サツキは神経を集中する。

 そして、唱えた。

「アイス!」

 無数の氷の塊が、杖の先の空間で浮かんだ。そのまま、そこにいて。サツキは祈った。

「ライト!」

 氷が、一斉に光り出す。

「凄え! 滅茶苦茶明るい!」

 アールが感動している。確かに、アールのライトとは明るさが明らかに違っていた。
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