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第三章 上級編開始
第600話 OLサツキの上級編、フレイのダンジョン地下三十二階、パーティー分裂
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渾身のメルトは、サツキの身体の中の魔力を空っぽにしてしまった。
落ちていきながら、ぼんやりとした視界にユラが映った。必死に何かを言っている様だが、聞こえない。
サツキは意識を手放した。
◇
ユラは、目の前の光景を信じられない思いで見ていた。この光景を見るのは二度目だ。だが、一度目は違う人が唱えていた。
サツキが唱えたメルトで歪んで溶けた地面に、まずはアールが沈んでいく。アールの意識ははっきりとしており、落ちてくるサツキを受け止めようと必死で手を伸ばしていた。
ユラはひたすらサツキの名を呼んだ。呼ぶことしか出来なかった。
「サツキ!! サツキー!!」
サツキと目が合った。でもその目は虚だった。
「馬鹿っ! お前、魔力を使い果たしたのか!?」
天井にいた親蜘蛛は塵となって消え失せていた。サツキが自力で退治したのだ。
サツキがズボッと地面に落ち、ずぶずふと沈んでいく。アールは必死に泳いでサツキの元に向かおうとしている。
「アール! 掴んでくれ!! サツキの奴、気を失ってるんだ!」
沈んでいくアール。もう目しか見えないが、それがしっかりとユラを捉えた。
「アール! アール、アール!!」
ウルスラが、気が狂ったかの様に叫んだ。ウルスラが好意を持った人間が目の前で沈んでいくのを見るのは、これで二回目だ。
アールの手がサツキに届くかどうかのところで、アールの姿が完全に沈んでしまった。サツキもどんどん沈んでいく。
「サツキ!!」
ユラは、サツキがいる場所に飛び込もうと駆け出す。
「ぐえっ!!」
そのユラの法衣を後ろから思い切り掴んで後ろに放り投げたのは、先程まで半狂乱で叫んでいたウルスラだった。ドサ! と地面に投げ出されたユラが、ウルスラに怒鳴る。
「何すんだよ! 追いかけなきゃ、あいつらじゃ回復が出来ないじゃねえか!!」
「落ち着きなさい!!」
ピシャリとウルスラが言った。サツキも消えた地面を指差す。
「見て! もう崩れかけてる! 今から飛び込んだら、あんた死ぬわよ!!」
「でも、俺が行かなくちゃ!!」
「適任がいる!!」
ウルスラはそう言うと、ラムに抱えられていた須藤さんを抱き上げた。
「スライムなら、多少の落下じゃ潰れない! だから、だから須藤さん!」
ウルスラは今にも涙が溢れそうな目をしながら、須藤さんを真っ直ぐに見た。
「お願い、お願いだから私の大切な人達を死なせないで……!」
須藤さんは、ウルスラのその言葉にこっくりと深く頷いて見せた。
「お願い……!」
ウルスラは須藤さんの頬にキスをすると、助走を付けて、もう大穴になり始めているメルトの跡に向かって須藤さんを思い切り投げた。
須藤さんは、穴に消える瞬間、親指をぐっと突き立てた。
「うう……っああああ!!」
とうとうウルスラが泣き崩れた。ユラはそんなウルスラの前に立つと、手を差し出した。ウルスラが涙でぐしゃぐしゃの顔を上げる。
「立てよウルスラ」
「ユラ……」
ウルスラが、ユラの手を取った。ユラの奥歯が、ギリ、と鳴った。
「急ぐぞ。俺は諦めねえからな。絶対に追いついてやる」
ユラが、強い眼差しをして言った。
落ちていきながら、ぼんやりとした視界にユラが映った。必死に何かを言っている様だが、聞こえない。
サツキは意識を手放した。
◇
ユラは、目の前の光景を信じられない思いで見ていた。この光景を見るのは二度目だ。だが、一度目は違う人が唱えていた。
サツキが唱えたメルトで歪んで溶けた地面に、まずはアールが沈んでいく。アールの意識ははっきりとしており、落ちてくるサツキを受け止めようと必死で手を伸ばしていた。
ユラはひたすらサツキの名を呼んだ。呼ぶことしか出来なかった。
「サツキ!! サツキー!!」
サツキと目が合った。でもその目は虚だった。
「馬鹿っ! お前、魔力を使い果たしたのか!?」
天井にいた親蜘蛛は塵となって消え失せていた。サツキが自力で退治したのだ。
サツキがズボッと地面に落ち、ずぶずふと沈んでいく。アールは必死に泳いでサツキの元に向かおうとしている。
「アール! 掴んでくれ!! サツキの奴、気を失ってるんだ!」
沈んでいくアール。もう目しか見えないが、それがしっかりとユラを捉えた。
「アール! アール、アール!!」
ウルスラが、気が狂ったかの様に叫んだ。ウルスラが好意を持った人間が目の前で沈んでいくのを見るのは、これで二回目だ。
アールの手がサツキに届くかどうかのところで、アールの姿が完全に沈んでしまった。サツキもどんどん沈んでいく。
「サツキ!!」
ユラは、サツキがいる場所に飛び込もうと駆け出す。
「ぐえっ!!」
そのユラの法衣を後ろから思い切り掴んで後ろに放り投げたのは、先程まで半狂乱で叫んでいたウルスラだった。ドサ! と地面に投げ出されたユラが、ウルスラに怒鳴る。
「何すんだよ! 追いかけなきゃ、あいつらじゃ回復が出来ないじゃねえか!!」
「落ち着きなさい!!」
ピシャリとウルスラが言った。サツキも消えた地面を指差す。
「見て! もう崩れかけてる! 今から飛び込んだら、あんた死ぬわよ!!」
「でも、俺が行かなくちゃ!!」
「適任がいる!!」
ウルスラはそう言うと、ラムに抱えられていた須藤さんを抱き上げた。
「スライムなら、多少の落下じゃ潰れない! だから、だから須藤さん!」
ウルスラは今にも涙が溢れそうな目をしながら、須藤さんを真っ直ぐに見た。
「お願い、お願いだから私の大切な人達を死なせないで……!」
須藤さんは、ウルスラのその言葉にこっくりと深く頷いて見せた。
「お願い……!」
ウルスラは須藤さんの頬にキスをすると、助走を付けて、もう大穴になり始めているメルトの跡に向かって須藤さんを思い切り投げた。
須藤さんは、穴に消える瞬間、親指をぐっと突き立てた。
「うう……っああああ!!」
とうとうウルスラが泣き崩れた。ユラはそんなウルスラの前に立つと、手を差し出した。ウルスラが涙でぐしゃぐしゃの顔を上げる。
「立てよウルスラ」
「ユラ……」
ウルスラが、ユラの手を取った。ユラの奥歯が、ギリ、と鳴った。
「急ぐぞ。俺は諦めねえからな。絶対に追いついてやる」
ユラが、強い眼差しをして言った。
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