上 下
598 / 731
第三章 上級編開始

第596話 OLサツキの上級編、フレイのダンジョン地下三十二階のバトルの続き

しおりを挟む
 親蜘蛛は立ち上がった瞬間、口から燃え盛る蜘蛛の糸を無数の針の様に噴射させた。それらは全てバリアーラの障壁で防がれたが、今の攻撃の所為でバリアーラの効果が解けてしまった。

「一回で破壊かよ! 畜生! バリアーラ!!」

 ユラが再度唱えると、親蜘蛛が上空へと跳躍した。あっという間に天井まで登って行ってしまった。

「ユラ、また唱えればいい!?」
「アンファンフロスト一回じゃ効かねえってのが分かったから、ラム! お前サツキの後にすぐ唱えられるか!?」
「頑張る!!」

 ラムがいい返事をすると、ユラは今度は前衛の二人に聞く。

「ウルスラ! アール! ラムの攻撃の後、とどめを刺してくれ!!」
「了解!」
「任せてくれよ!」

 二人が力強く請け負った。

「サツキ! なるべく集中して溜めろ! 多分その方が効果がでかい!!」
「分かった!」

 サツキは天井の親蜘蛛に集中する。視界がどんどん蜘蛛だけに狭まってきた。唱えるなら今だ! そう思った瞬間。

 ドン!! と再び蜘蛛の糸の攻撃がパーティーを襲った。サツキは慌てて呪文を唱えようとした。

「アンファンフロ……!!」
「皆避けろ!!」

 アールとサツキ側に回り込んだ親蜘蛛が、薄まったバリアーラの隙間から入り込んできた数本の蜘蛛の糸でアールとサツキを持ち上げた! 物凄い勢いで、宙に一直線に飛ぶ。

「うおおおおおっ!!」
「いやああああっ!!」

 アールとサツキは叫び声を上げると、空中に再び張り巡らせられた蜘蛛の糸に絡め取られてしまった。天井ギリギリの所で停止する。この蜘蛛の糸がなければ、天井に激突していただろう。サツキはゾッとした。

「サツキ!! アール!!」

 地上から、小さく見えるユラとウルスラの姿が見えた。

「大丈夫!! 怪我はないよ!」

 安心させる為にそう言ったはいいが、この先はどうしよう。思わず横に同じ様に張り付けられているアールに聞く。焦りと緊張と恐怖で、サツキの声が震えた。

「とととととりあえずやっつける!?」
「駄目だ! このまま落ちたらやばいぞ!」

 サツキより遥かにアールは冷静だったが、それでも端正な顔には焦りが窺えた。サツキの唱える呪文で親蜘蛛をやっつけた場合、恐らく周囲へ及ぼす影響で、今サツキとアールを縛り付けている蜘蛛の糸も切れてしまう。つまり、倒した途端地面に真っ逆さまでジ・エンドということだ。

「何か落ちても平気な呪文とかないの!?」
「分かんねえ! 聞いたこともねえ!!」

 サツキ達が慌てていると、天井を這っていた親蜘蛛がシューシュー言いながらどんどんサツキへと近付いてくる。やばい、やばいやばいやばい!!

「こいつ!! サツキの方に行くんじゃねえ! 狙うならこっちだ!!」

 アールが勇ましく親蜘蛛に向かって怒鳴ると、親蜘蛛が方向をアールの方に変えた。

「駄目だよアール!」
「俺は剣がある! サツキは何とか下に降りられる方法を考えてくれ!」

 とんでもない無茶振りが来た。

「蜘蛛の糸にぶら下がって降りるとか!?」
「だったら俺が身体に巻き付いているのを先に切って実験するか!?」
「人体実験しないでえええ!!」

 そうこう言っている内にも、アールの目の前に親蜘蛛が寄って来て、そして牙だらけの口をカパッと開けた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

性欲排泄欲処理系メイド 〜三大欲求、全部満たします〜

mm
ファンタジー
私はメイドのさおり。今日からある男性のメイドをすることになったんだけど…業務内容は「全般のお世話」。トイレもお風呂も、性欲も!? ※スカトロ表現多数あり ※作者が描きたいことを書いてるだけなので同じような内容が続くことがあります

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

[恥辱]りみの強制おむつ生活

rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。 保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。

処理中です...