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第三章 上級編開始
第581話 魔術師リアムの上級編・早川ユメ攻略四日目のユメの過去
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蒸発。その意味は、リアムにも分かった。いなくなった、そういうことだ。
ショウちゃんは、ボロボロと泣いている早川ユメに綺麗なおしぼりを渡しつつ、続ける。
「ユメちゃんの話では、ユメちゃんが高校二年生、弟のマサくんが小学校四年生の時だって言ってたかな」
早川ユメは、こちらを見ずに俯いてしまった。
「元々片親で、お母さんは凄い自由な人だったみたいで。しょっちゅう家を何日も開けて帰って来ないこともあったらしいんだ。だからユメちゃんはバイトして自分の学費と弟の食事とかも皆面倒見てたんだけど、お母さんはある日男と出て行ってそれっきり帰って来なかったんだって」
ショウちゃんは、心配そうにチラチラと早川ユメを見てはこちらも確認する様に見る。もしかしたら、リアム達が彼女の過去を受け止めないと考えているのではなかろうか。同じく親に半ば捨てられた形のリアムが、軽蔑などする筈もないのに。そのリアムを受け入れている祐介だって同様だ。
「続けてくれ。ちゃんと聞いている」
リアムはショウちゃんの目を真っ直ぐ見て伝えた。ショウちゃんの目が、優しく笑った。
「ユメちゃんは高校だけは頑張って卒業して、その後すぐに就職したんだ。家はユメちゃん曰くボロい代わりに家賃が安い所を親名義で借りてたままだったって。お母さんはそれまでもしょっちゅう家賃を滞納するから、ユメちゃんがいつも取り立てに来る大家さんに現金で支払ってたから、そのまま住む所には困らなかったそうだよ」
「住居のあるなしは大いに違うからな。住む所があってよかった」
リアムは深く頷いた。
「で、始めはまあお給料は少なくても順調だったらしいんだけどね、弟のマサくんが中学でイジメに遭って、そのまま引きこもりになっちゃったんだ。でも家に籠もって過ごしている内に、元が明るい子だっただけに段々元気を取り戻してね、それで大検、あ、今って高認っていうんだってね、を受けるって前向きになって、費用を自分で貯めるんだって言って一大発起してバイトを始めたんだよ」
大検も高認もついでに言うなら引きこもりもよく意味が分からなかったが、これは後で祐介に聞こう。今は話の腰を折ってはならないこと位、リアムとて理解していた。
「人と関わるのがまだ怖いから、深夜のコンビニにしたらしいんだけど、そこで偶然出会っちゃったのが、自分を中学の時に虐めていた奴らの内主犯格の奴だったんだって」
早川ユメは、目をおしぼりで覆いながら小さく震えていた。恐らく、涙が止まらないのだろう。可哀想に。
「マサくんは暫くはもうユメちゃんに迷惑掛けたくないからって頑張ってたらしいんだけど、未成年者で銀行口座を作れなかったマサくんは現金でお給料貰ってて、その給料日の帰りに、頑張って働いたお給料を、待ち伏せしてたそいつに奪われたんだ」
「何と悪どいことを……!」
ショウちゃんがこくりと頷く。
「それで、折角立ち直りかけていたマサくんの心がポッキリ折れちゃって、ある日ユメちゃんが仕事が終わって家に帰ると、大量の睡眠薬を飲んで意識不明になったマサくんを発見したんだ」
リアムは、思わず息を呑んだ。
ショウちゃんは、ボロボロと泣いている早川ユメに綺麗なおしぼりを渡しつつ、続ける。
「ユメちゃんの話では、ユメちゃんが高校二年生、弟のマサくんが小学校四年生の時だって言ってたかな」
早川ユメは、こちらを見ずに俯いてしまった。
「元々片親で、お母さんは凄い自由な人だったみたいで。しょっちゅう家を何日も開けて帰って来ないこともあったらしいんだ。だからユメちゃんはバイトして自分の学費と弟の食事とかも皆面倒見てたんだけど、お母さんはある日男と出て行ってそれっきり帰って来なかったんだって」
ショウちゃんは、心配そうにチラチラと早川ユメを見てはこちらも確認する様に見る。もしかしたら、リアム達が彼女の過去を受け止めないと考えているのではなかろうか。同じく親に半ば捨てられた形のリアムが、軽蔑などする筈もないのに。そのリアムを受け入れている祐介だって同様だ。
「続けてくれ。ちゃんと聞いている」
リアムはショウちゃんの目を真っ直ぐ見て伝えた。ショウちゃんの目が、優しく笑った。
「ユメちゃんは高校だけは頑張って卒業して、その後すぐに就職したんだ。家はユメちゃん曰くボロい代わりに家賃が安い所を親名義で借りてたままだったって。お母さんはそれまでもしょっちゅう家賃を滞納するから、ユメちゃんがいつも取り立てに来る大家さんに現金で支払ってたから、そのまま住む所には困らなかったそうだよ」
「住居のあるなしは大いに違うからな。住む所があってよかった」
リアムは深く頷いた。
「で、始めはまあお給料は少なくても順調だったらしいんだけどね、弟のマサくんが中学でイジメに遭って、そのまま引きこもりになっちゃったんだ。でも家に籠もって過ごしている内に、元が明るい子だっただけに段々元気を取り戻してね、それで大検、あ、今って高認っていうんだってね、を受けるって前向きになって、費用を自分で貯めるんだって言って一大発起してバイトを始めたんだよ」
大検も高認もついでに言うなら引きこもりもよく意味が分からなかったが、これは後で祐介に聞こう。今は話の腰を折ってはならないこと位、リアムとて理解していた。
「人と関わるのがまだ怖いから、深夜のコンビニにしたらしいんだけど、そこで偶然出会っちゃったのが、自分を中学の時に虐めていた奴らの内主犯格の奴だったんだって」
早川ユメは、目をおしぼりで覆いながら小さく震えていた。恐らく、涙が止まらないのだろう。可哀想に。
「マサくんは暫くはもうユメちゃんに迷惑掛けたくないからって頑張ってたらしいんだけど、未成年者で銀行口座を作れなかったマサくんは現金でお給料貰ってて、その給料日の帰りに、頑張って働いたお給料を、待ち伏せしてたそいつに奪われたんだ」
「何と悪どいことを……!」
ショウちゃんがこくりと頷く。
「それで、折角立ち直りかけていたマサくんの心がポッキリ折れちゃって、ある日ユメちゃんが仕事が終わって家に帰ると、大量の睡眠薬を飲んで意識不明になったマサくんを発見したんだ」
リアムは、思わず息を呑んだ。
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(最終更新日:2022/04/09)
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