561 / 731
第三章 上級編開始
第559話 魔術師リアムの上級編・早川ユメ攻略四日目の勝負、昔の祐介
しおりを挟む
ジントニックなる飲み物は甘いは甘かったが、それなりにアルコールの風味が強く、想像していたよりは飲みやすい酒であった。
くいーっとグラスの中身を飲み干すと、リアムは舌で唇を舐めた。その様子を半分すわった目で見ていた早川ユメが、リアムの脇腹を肘で突いた。
「やっらしー顔してるわねー」
「お前は何を言っているのだ」
「ねえねえ、山岸くんとはいつから付き合ってんのよ」
早川ユメは人の話を聞いていないが、顔はすでに酔っ払いの顔だ。仕方ないのかもしれない。
リアムは祐介を盗み見ると、ショウちゃんと二人で何やら楽しそうに会話をしていた。祐介があのように楽しそうに他者と会話をしているところなど殆ど見たことがなかったリアムは、何だかほっこりした。考えてみれば、ほぼずっとリアムと過ごしてきたのだから当然だった。祐介はリアムにかかりきりで、自分のことなど常に二の次だったのだから。
「まあ、まだ最近だ」
「やっぱりね。私の予想だと、あの連休あたりが怪しいんじゃないかと睨んでるんだけど」
連休。確かその期間に『付き合っていることにする』と祐介に言われた筈なので、リアムは素直に頷いた。
「ほらやっぱり! で、どっちから言ったのよ!」
早川ユメは非常に陽気である。日頃の氷の様な冷たさは一体どこへいったのか。だがまあこちらの方が話し易くはある。
どちらか、と言われると正直返答に困ってしまうが、この設定を最初に盛り込んだのは間違いなく祐介である。すなわち、言ったのは祐介からということになる。
「祐介だ」
「まじで……」
早川ユメが驚いた表情を浮かべた。リアムは早川ユメに顔を近付けると、小声で尋ねる。
「それはどういう意味だ?」
「いやね、あんたに話すのはどうかと思うんだけど、あんた案外気にしなそうだから喋っちゃう!」
うふふ、と早川ユメがジントニックを飲み干すと、ひそひそ声で話を続けた。
「去年あたりだったかしら? 会社の前で山岸くんを待ち伏せしてた女がいたのよ。結構かわいい子で、彼女かな? なーんて思ってこっそり覗き見してたら、山岸くんその子を殆ど無視して行っちゃったのよ。で、その子が泣いちゃってるからちょっと慰めついでに聞きだしたらさ」
早川ユメよ、お前は隠密か。一体何をやっているのだ。
早川ユメは続けた。
「合コンで会ったらしいんだけど、何度か会ってやることはやったし付き合ってると思ってたのに途中から連絡が取れなくなって、自然消滅したくないからって待ち伏せしたらしいのよね」
「ほうほう」
祐介よ、やることはやるのだな。リアムは意外な思いで祐介をチラ見した。合コンなるものが何かは分からなかったが、何らかの出会いの場であることは想像がついた。
「そうしたら、始めは誰? ていう顔されて、付き合ってたじゃない! て言ったら、は? て言われてどっか行っちゃったってもう号泣しちゃってさ、合コンの時もあいつは誰にも真剣にならないから止めとけって言われてたのはこういうことだったのね、わー! て泣いて泣いて大変だったわよ」
「なかなかに酷い男だな」
「あんたの男のことよ」
早川ユメの冷静なつっこみが入った。酔っている癖に、さすがは我が好敵手だ。
しかし一つ気になる内容があった。あいつは誰にも真剣にならないだと? あの祐介が?
「それからあいつの本性を暴いてやろうと思って何度かすり寄ってみたけど、全然尻尾出さないからちえーっと思ってたら、いきなりあんたと付き合い出したじゃない? 青天の霹靂ってやつよ」
早川ユメは、そう言うとグラスをどん! とカウンターに置いた。
くいーっとグラスの中身を飲み干すと、リアムは舌で唇を舐めた。その様子を半分すわった目で見ていた早川ユメが、リアムの脇腹を肘で突いた。
「やっらしー顔してるわねー」
「お前は何を言っているのだ」
「ねえねえ、山岸くんとはいつから付き合ってんのよ」
早川ユメは人の話を聞いていないが、顔はすでに酔っ払いの顔だ。仕方ないのかもしれない。
リアムは祐介を盗み見ると、ショウちゃんと二人で何やら楽しそうに会話をしていた。祐介があのように楽しそうに他者と会話をしているところなど殆ど見たことがなかったリアムは、何だかほっこりした。考えてみれば、ほぼずっとリアムと過ごしてきたのだから当然だった。祐介はリアムにかかりきりで、自分のことなど常に二の次だったのだから。
「まあ、まだ最近だ」
「やっぱりね。私の予想だと、あの連休あたりが怪しいんじゃないかと睨んでるんだけど」
連休。確かその期間に『付き合っていることにする』と祐介に言われた筈なので、リアムは素直に頷いた。
「ほらやっぱり! で、どっちから言ったのよ!」
早川ユメは非常に陽気である。日頃の氷の様な冷たさは一体どこへいったのか。だがまあこちらの方が話し易くはある。
どちらか、と言われると正直返答に困ってしまうが、この設定を最初に盛り込んだのは間違いなく祐介である。すなわち、言ったのは祐介からということになる。
「祐介だ」
「まじで……」
早川ユメが驚いた表情を浮かべた。リアムは早川ユメに顔を近付けると、小声で尋ねる。
「それはどういう意味だ?」
「いやね、あんたに話すのはどうかと思うんだけど、あんた案外気にしなそうだから喋っちゃう!」
うふふ、と早川ユメがジントニックを飲み干すと、ひそひそ声で話を続けた。
「去年あたりだったかしら? 会社の前で山岸くんを待ち伏せしてた女がいたのよ。結構かわいい子で、彼女かな? なーんて思ってこっそり覗き見してたら、山岸くんその子を殆ど無視して行っちゃったのよ。で、その子が泣いちゃってるからちょっと慰めついでに聞きだしたらさ」
早川ユメよ、お前は隠密か。一体何をやっているのだ。
早川ユメは続けた。
「合コンで会ったらしいんだけど、何度か会ってやることはやったし付き合ってると思ってたのに途中から連絡が取れなくなって、自然消滅したくないからって待ち伏せしたらしいのよね」
「ほうほう」
祐介よ、やることはやるのだな。リアムは意外な思いで祐介をチラ見した。合コンなるものが何かは分からなかったが、何らかの出会いの場であることは想像がついた。
「そうしたら、始めは誰? ていう顔されて、付き合ってたじゃない! て言ったら、は? て言われてどっか行っちゃったってもう号泣しちゃってさ、合コンの時もあいつは誰にも真剣にならないから止めとけって言われてたのはこういうことだったのね、わー! て泣いて泣いて大変だったわよ」
「なかなかに酷い男だな」
「あんたの男のことよ」
早川ユメの冷静なつっこみが入った。酔っている癖に、さすがは我が好敵手だ。
しかし一つ気になる内容があった。あいつは誰にも真剣にならないだと? あの祐介が?
「それからあいつの本性を暴いてやろうと思って何度かすり寄ってみたけど、全然尻尾出さないからちえーっと思ってたら、いきなりあんたと付き合い出したじゃない? 青天の霹靂ってやつよ」
早川ユメは、そう言うとグラスをどん! とカウンターに置いた。
0
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
性欲排泄欲処理系メイド 〜三大欲求、全部満たします〜
mm
ファンタジー
私はメイドのさおり。今日からある男性のメイドをすることになったんだけど…業務内容は「全般のお世話」。トイレもお風呂も、性欲も!?
※スカトロ表現多数あり
※作者が描きたいことを書いてるだけなので同じような内容が続くことがあります
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
[恥辱]りみの強制おむつ生活
rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。
保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる