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第三章 上級編開始
第555話 魔術師リアムの上級編・早川ユメ攻略四日目の勝負一杯目
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リアムがくいーっと美味しくビールを一気に半分程飲むと、早川ユメが負けじとビールを口に含んだ。その様子を、カウンターの向こう側からショウちゃんなる店員が心配そうに見ていた。
リアムはショウちゃんに尋ねた。
「あの、ショウちゃん殿」
「へ? あ、俺ですか?」
ショウちゃんは素っ頓狂な声を発した。
「そうだ。早川さんとは知り合いか?」
リアムがそう尋ねると、ショウちゃんは優しそうに笑って頷いた。早川ユメを見る少し垂れた目は、慈愛に満ちている。
「ユメちゃん、話していいの?」
恐る恐る、といった風にショウちゃんが早川ユメに尋ねると、早川ユメは早くも赤くなり出した顔をぐりん! とショウちゃんに向け、次いでリアムを見て笑った。
「まあこいつにならいいわ」
「そこのイケメンさんには?」
ショウちゃんは、今度は祐介を見つつ言う。すると、早川ユメは手をヒラヒラさせながら笑った。
「だいじょーぶ! こいつは敵に回したら面倒くさいけど、野原さんにベタ惚れだから野原さんが駄目って言ったらしないと思う!」
「ベタ惚れ?」
リアムが早川ユメに聞き返すと、早川ユメがケラケラと笑った。
「やーだあんた分かってないのー!? 山岸くんかっわいそー! あはは!」
すでに酔いが回ってきたのか、早川ユメは陽気だ。祐介を振り返ったが、にっこりと笑顔で返されただけだった。
困った風に笑ったショウちゃんが、リアムに「いい?」と尋ねる。なのでリアムは、祐介に言った。
「他言は無用だ。いいな」
「仰せのままに」
祐介の笑顔の輝度が上がった。
「このイケメンを従える……やるね」
ショウちゃんは、何かに感心した様だ。そして、話し始めた。
「ユメちゃんとは、ユメちゃんがキャバ嬢やってた時に会ったんだよね」
キャバ嬢、とは一体何だろうか。リアムが眉間に皺を寄せると、祐介がこそっと耳打ちしてくれた。
「酒と接客で男性客を舞い上がらせる職業」
成程、理解した。リアムは深く頷いてみせた。
「で、俺はそのキャバクラでボーイをしてたんだよね」
ボーイ。何だろうか。とにかく同じ職場の仲間だった、そういうことだろう。
「ユメちゃん、この通りお酒に弱い癖に客に勧められるとガンガン飲むから、しょっちゅうゲロの片付けさせられてさーあははっ」
ゲロとは何だろう。祐介を振り返ると、祐介が「吐瀉物」と耳打ちしてくれた。祐介がいてくれて、本当によかった。このままでは会話もままならなかった。やはり祐介は頼りになる。
「ユメちゃんが急に店を辞めちゃって、俺もいい加減女の子達にまとわりつくいい年したおっさん達を見るのにも嫌気差してさ、この店の店長が空いてるって知り合いに言われたから、ここで仕事始めたんだ。そしたらある日、ユメちゃんが前を通りかかってさ」
ショウちゃんが、早川ユメを見て微笑んだ。
「ね、ユメちゃん」
「ショウちゃんはねー、私の愚痴担当なのよ」
早川ユメがショウちゃんを指差してそう言うと、ぐらん、と後ろに倒れかけた。リアムは慌ててそれを支えた。後ろをふりむくと、祐介が支えようと構えていたが、リアムはそれを目だけで制した。
リアムは早川ユメに向き直る。こんなに気心の知れた人間が近くにいるというのに、何故早川ユメは久住社長の愛人となったのか。
その答えまでは後わずかだ。リアムはジョッキの中身を飲み干した。
リアムはショウちゃんに尋ねた。
「あの、ショウちゃん殿」
「へ? あ、俺ですか?」
ショウちゃんは素っ頓狂な声を発した。
「そうだ。早川さんとは知り合いか?」
リアムがそう尋ねると、ショウちゃんは優しそうに笑って頷いた。早川ユメを見る少し垂れた目は、慈愛に満ちている。
「ユメちゃん、話していいの?」
恐る恐る、といった風にショウちゃんが早川ユメに尋ねると、早川ユメは早くも赤くなり出した顔をぐりん! とショウちゃんに向け、次いでリアムを見て笑った。
「まあこいつにならいいわ」
「そこのイケメンさんには?」
ショウちゃんは、今度は祐介を見つつ言う。すると、早川ユメは手をヒラヒラさせながら笑った。
「だいじょーぶ! こいつは敵に回したら面倒くさいけど、野原さんにベタ惚れだから野原さんが駄目って言ったらしないと思う!」
「ベタ惚れ?」
リアムが早川ユメに聞き返すと、早川ユメがケラケラと笑った。
「やーだあんた分かってないのー!? 山岸くんかっわいそー! あはは!」
すでに酔いが回ってきたのか、早川ユメは陽気だ。祐介を振り返ったが、にっこりと笑顔で返されただけだった。
困った風に笑ったショウちゃんが、リアムに「いい?」と尋ねる。なのでリアムは、祐介に言った。
「他言は無用だ。いいな」
「仰せのままに」
祐介の笑顔の輝度が上がった。
「このイケメンを従える……やるね」
ショウちゃんは、何かに感心した様だ。そして、話し始めた。
「ユメちゃんとは、ユメちゃんがキャバ嬢やってた時に会ったんだよね」
キャバ嬢、とは一体何だろうか。リアムが眉間に皺を寄せると、祐介がこそっと耳打ちしてくれた。
「酒と接客で男性客を舞い上がらせる職業」
成程、理解した。リアムは深く頷いてみせた。
「で、俺はそのキャバクラでボーイをしてたんだよね」
ボーイ。何だろうか。とにかく同じ職場の仲間だった、そういうことだろう。
「ユメちゃん、この通りお酒に弱い癖に客に勧められるとガンガン飲むから、しょっちゅうゲロの片付けさせられてさーあははっ」
ゲロとは何だろう。祐介を振り返ると、祐介が「吐瀉物」と耳打ちしてくれた。祐介がいてくれて、本当によかった。このままでは会話もままならなかった。やはり祐介は頼りになる。
「ユメちゃんが急に店を辞めちゃって、俺もいい加減女の子達にまとわりつくいい年したおっさん達を見るのにも嫌気差してさ、この店の店長が空いてるって知り合いに言われたから、ここで仕事始めたんだ。そしたらある日、ユメちゃんが前を通りかかってさ」
ショウちゃんが、早川ユメを見て微笑んだ。
「ね、ユメちゃん」
「ショウちゃんはねー、私の愚痴担当なのよ」
早川ユメがショウちゃんを指差してそう言うと、ぐらん、と後ろに倒れかけた。リアムは慌ててそれを支えた。後ろをふりむくと、祐介が支えようと構えていたが、リアムはそれを目だけで制した。
リアムは早川ユメに向き直る。こんなに気心の知れた人間が近くにいるというのに、何故早川ユメは久住社長の愛人となったのか。
その答えまでは後わずかだ。リアムはジョッキの中身を飲み干した。
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