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第三章 上級編開始
第553話 魔術師リアムの上級編・早川ユメ攻略四日目のいざ尋常に勝負
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早川ユメは、人目を引く美人だ。
よくよく見ると幼い顔立ちを、見事な化粧で大人っぽく見せている。背はリアムより高いと思っていたが、こちらもよく見ると物凄い高いヒールの靴を着用していたので、実はリアムとどっこいどっこいなのかもしれない。
ピンク色の上質な革製の鞄をバン! とカウンターの一角に置くと、様子を窺っている祐介に一瞥をくれた。
「山岸くん、内容は聞いてるわよね?」
祐介は無言で頷く。すると、早川ユメがコロコロと笑った。そして言った。
「野原さんが野原さんなら山岸くんも山岸くんよね。こんな滅茶苦茶な提案を受ける程の情報を、私が持ってると思ってんの?」
笑顔はただ可愛らしいものだったが、言葉には棘が沢山生えている。だが、それが彼女の心の真っ直ぐさを表している様にリアムには思えた。
「じゃあ、何から飲む?」
挑む様にリアムを見た早川ユメの顔には、期待が窺えた気がした。彼女は、リアムに何かを期待しているのか。それともただ単に勝負の前の高揚か。
それもいずれはっきりとしよう。リアムは上着を脱ぎ、祐介の胸に押し当てた。祐介は何も言わず、それを丁寧にたたみ直しカウンターの上に置く。出来た男だ。
「とりあえずビールからいこうか」
「……たぷたぷ作戦できたか」
「た、たぷたぷ?」
リアムが思わず聞き返すと、早川ユメが嫌そうに頷いてみせた。
「さては私が水分を沢山取れないのを聞いたわね」
「そんなものは知らん」
「あらそう?」
早川ユメはあっさりと引き下がった。言ってみたかっただけなのかもしれない。まあとどのつまりは、ビールで腹が膨れてしまうということなのだろう。
「あんまりキツイお酒ばっかり飲むと、急性アルコール中毒になるし、ビールでいいんじゃない? 僕、やだからね。二人を病院に連れて行くの」
祐介が言った。
「成程、山岸くんの入れ知恵か」
「僕は何も言ってません」
「私がただ単にビールを飲みたかっただけだ」
「ビール好きだよね」
「飲めない癖に好きなの? 変わってるわねえ。まあいいわ。ショウちゃん、ビール二つね!」
「僕も飲みます!」
祐介が勢いよく挙手をした。リアムが意外そうな顔をしたからだろう、祐介が言い訳を始めた。
「いいでしょ、僕は弱くないし。それに普段はサツキちゃんに合わせて飲むのを我慢してるんだしさ」
「祐介、我慢をしていたのか? 言ってくれればよかったものを」
「言ったら真っ先に自分が飲むでしょうが」
「……」
そんな他愛もない話をしていると、表面が凍ったジョッキに並々と注がれたビールが出てきた。
「ユメちゃん、程々にね」
ショウちゃんと言われた髭面の店員が、人の良さそうな少しごつい顔を心配そうに歪めつつ、言った。ただの店員と客、ではない様だ。
ジョッキを受け取ると、リアムはそれを掲げた。
「いざ尋常に勝負だ」
「臨むところよ」
ニヤリと早川ユメが笑い、二人は不敵な笑みを浮かべながら、ジョッキをカチンと合わせた。
よくよく見ると幼い顔立ちを、見事な化粧で大人っぽく見せている。背はリアムより高いと思っていたが、こちらもよく見ると物凄い高いヒールの靴を着用していたので、実はリアムとどっこいどっこいなのかもしれない。
ピンク色の上質な革製の鞄をバン! とカウンターの一角に置くと、様子を窺っている祐介に一瞥をくれた。
「山岸くん、内容は聞いてるわよね?」
祐介は無言で頷く。すると、早川ユメがコロコロと笑った。そして言った。
「野原さんが野原さんなら山岸くんも山岸くんよね。こんな滅茶苦茶な提案を受ける程の情報を、私が持ってると思ってんの?」
笑顔はただ可愛らしいものだったが、言葉には棘が沢山生えている。だが、それが彼女の心の真っ直ぐさを表している様にリアムには思えた。
「じゃあ、何から飲む?」
挑む様にリアムを見た早川ユメの顔には、期待が窺えた気がした。彼女は、リアムに何かを期待しているのか。それともただ単に勝負の前の高揚か。
それもいずれはっきりとしよう。リアムは上着を脱ぎ、祐介の胸に押し当てた。祐介は何も言わず、それを丁寧にたたみ直しカウンターの上に置く。出来た男だ。
「とりあえずビールからいこうか」
「……たぷたぷ作戦できたか」
「た、たぷたぷ?」
リアムが思わず聞き返すと、早川ユメが嫌そうに頷いてみせた。
「さては私が水分を沢山取れないのを聞いたわね」
「そんなものは知らん」
「あらそう?」
早川ユメはあっさりと引き下がった。言ってみたかっただけなのかもしれない。まあとどのつまりは、ビールで腹が膨れてしまうということなのだろう。
「あんまりキツイお酒ばっかり飲むと、急性アルコール中毒になるし、ビールでいいんじゃない? 僕、やだからね。二人を病院に連れて行くの」
祐介が言った。
「成程、山岸くんの入れ知恵か」
「僕は何も言ってません」
「私がただ単にビールを飲みたかっただけだ」
「ビール好きだよね」
「飲めない癖に好きなの? 変わってるわねえ。まあいいわ。ショウちゃん、ビール二つね!」
「僕も飲みます!」
祐介が勢いよく挙手をした。リアムが意外そうな顔をしたからだろう、祐介が言い訳を始めた。
「いいでしょ、僕は弱くないし。それに普段はサツキちゃんに合わせて飲むのを我慢してるんだしさ」
「祐介、我慢をしていたのか? 言ってくれればよかったものを」
「言ったら真っ先に自分が飲むでしょうが」
「……」
そんな他愛もない話をしていると、表面が凍ったジョッキに並々と注がれたビールが出てきた。
「ユメちゃん、程々にね」
ショウちゃんと言われた髭面の店員が、人の良さそうな少しごつい顔を心配そうに歪めつつ、言った。ただの店員と客、ではない様だ。
ジョッキを受け取ると、リアムはそれを掲げた。
「いざ尋常に勝負だ」
「臨むところよ」
ニヤリと早川ユメが笑い、二人は不敵な笑みを浮かべながら、ジョッキをカチンと合わせた。
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