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第三章 上級編開始
第551話 魔術師リアムの上級編・早川ユメ攻略四日目の勤務終了
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金曜日の終業を告げる鐘が鳴った。
佐川がスマホを手に持ちつつ、リアムと祐介の元にやって来た。リアムが祐介の表情を伺うと、特に嫌そうな顔はしていないので内心ほっとしていた。
「橋本さんから連絡。展示場の受付のおばちゃんも誘って、飲みに行くことになったって。だから心置きなく話してきて、だそうです」
「承知した」
「あんまりあの人に飲ませない様に言っておいてもらえるかな? また明け方に玄関のドアを蹴られたりしたくないし」
祐介がそう冷静に要望を伝えると、佐川がヒク、と頬を引き攣らせた。
「あの人、まじでそんなことしたの?」
祐介はこっくりと頷いた。
「この前の土曜日の朝は、僕が外に出た瞬間殴られたし。その話、聞いてない?」
「さらっとは聞いたけど……なんかやっぱり色々おかしくなってるよな、あの人」
「うん。なんかあったら、僕の方に連絡してよ」
「分かった。しっかり守ってやれよ山岸」
佐川は軽い気持ちで言ったのだろう。だがその瞬間、祐介の雰囲気がピリッと緊張したものに変わってしまった。
「――そんなこと言われなくても当然でしょ。僕の彼女だし」
佐川は、自分の失言に気が付いたのだろう。慌てて笑顔を作ると、手をさっと上げ、「だよな!」とだけ言って立ち去ってしまった。
「さ、サツキちゃん、とりあえず何かお腹に入れようか」
そう言ってにっこりと笑う祐介の目は、どう見ても笑っていなかった。そうか、祐介の笑顔に圧を感じる時は、目が笑っていない時なのだ。ようやくリアムはそのことに気が付いた。
こういう時は、祐介を甘やかすに限る。
「ああ、腹に溜まるものの方がいいな」
大分祐介の機嫌の上下に慣れてきたリアムは、祐介ににっこりと笑いかけつつ席を立つ。すると、祐介はそれだけで本物の笑顔に変わった。要はリアムの関心が佐川にないことを示せばいいのだ。それがどういった理由による嫉妬から来るのかまでははっきりしないが、それは羽田の件が片付いてからの話と決めたから、今は深く考えるのはやめることにした。
エレベーターに乗り込み地上へと出ると、夕方とはいえ日はまだ高く、暑い。
二人は近くのコンビニに入ると、おにぎりと、酒を飲む前に飲む物を購入し、コンビニ内の軽食コーナーでさっと食べた。祐介はおにぎりを二個も掻っ込んでいる。身体が大きい分、食べる量もやはり多い。
「よし、ではそろそろ行くか!」
リアムが気合いを入れて立ち上がると、祐介が腕を差し出した。掴めということらしい。リアムはその空間に手を起き、力強く掴んだ。
隣に祐介がいる、このことが何よりも心強く感じた。
祐介に案内されて、例の立ち飲み屋へと辿り着く。中はそれなりに広く、所々背の高い丸椅子が置いてある。完全に立ち飲みという訳でもないらしい。
「いらっしゃい!」
髭を生やした三十路位の男性店員が、声を掛けてきた。
「待ち合わせをしているんだが」
すると、男が思ったよりも可愛らしい笑顔を見せて笑った。
「あー、ユメちゃんね。聞いてる聞いてる」
「早川さんは、常連なのか?」
「はは、うち安いからね!」
そうだったのだ。慣れ親しんだ店でなら、酔うのも怖くはないのだろう。リアム達がそんな話をしていると。
「あら早いじゃない」
早川ユメが、やってきた。
佐川がスマホを手に持ちつつ、リアムと祐介の元にやって来た。リアムが祐介の表情を伺うと、特に嫌そうな顔はしていないので内心ほっとしていた。
「橋本さんから連絡。展示場の受付のおばちゃんも誘って、飲みに行くことになったって。だから心置きなく話してきて、だそうです」
「承知した」
「あんまりあの人に飲ませない様に言っておいてもらえるかな? また明け方に玄関のドアを蹴られたりしたくないし」
祐介がそう冷静に要望を伝えると、佐川がヒク、と頬を引き攣らせた。
「あの人、まじでそんなことしたの?」
祐介はこっくりと頷いた。
「この前の土曜日の朝は、僕が外に出た瞬間殴られたし。その話、聞いてない?」
「さらっとは聞いたけど……なんかやっぱり色々おかしくなってるよな、あの人」
「うん。なんかあったら、僕の方に連絡してよ」
「分かった。しっかり守ってやれよ山岸」
佐川は軽い気持ちで言ったのだろう。だがその瞬間、祐介の雰囲気がピリッと緊張したものに変わってしまった。
「――そんなこと言われなくても当然でしょ。僕の彼女だし」
佐川は、自分の失言に気が付いたのだろう。慌てて笑顔を作ると、手をさっと上げ、「だよな!」とだけ言って立ち去ってしまった。
「さ、サツキちゃん、とりあえず何かお腹に入れようか」
そう言ってにっこりと笑う祐介の目は、どう見ても笑っていなかった。そうか、祐介の笑顔に圧を感じる時は、目が笑っていない時なのだ。ようやくリアムはそのことに気が付いた。
こういう時は、祐介を甘やかすに限る。
「ああ、腹に溜まるものの方がいいな」
大分祐介の機嫌の上下に慣れてきたリアムは、祐介ににっこりと笑いかけつつ席を立つ。すると、祐介はそれだけで本物の笑顔に変わった。要はリアムの関心が佐川にないことを示せばいいのだ。それがどういった理由による嫉妬から来るのかまでははっきりしないが、それは羽田の件が片付いてからの話と決めたから、今は深く考えるのはやめることにした。
エレベーターに乗り込み地上へと出ると、夕方とはいえ日はまだ高く、暑い。
二人は近くのコンビニに入ると、おにぎりと、酒を飲む前に飲む物を購入し、コンビニ内の軽食コーナーでさっと食べた。祐介はおにぎりを二個も掻っ込んでいる。身体が大きい分、食べる量もやはり多い。
「よし、ではそろそろ行くか!」
リアムが気合いを入れて立ち上がると、祐介が腕を差し出した。掴めということらしい。リアムはその空間に手を起き、力強く掴んだ。
隣に祐介がいる、このことが何よりも心強く感じた。
祐介に案内されて、例の立ち飲み屋へと辿り着く。中はそれなりに広く、所々背の高い丸椅子が置いてある。完全に立ち飲みという訳でもないらしい。
「いらっしゃい!」
髭を生やした三十路位の男性店員が、声を掛けてきた。
「待ち合わせをしているんだが」
すると、男が思ったよりも可愛らしい笑顔を見せて笑った。
「あー、ユメちゃんね。聞いてる聞いてる」
「早川さんは、常連なのか?」
「はは、うち安いからね!」
そうだったのだ。慣れ親しんだ店でなら、酔うのも怖くはないのだろう。リアム達がそんな話をしていると。
「あら早いじゃない」
早川ユメが、やってきた。
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