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第三章 上級編開始
第549話 魔術師リアムの上級編・早川ユメ攻略四日目の午後
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午後に差し掛かると、祐介だけでなく、三階の者達が皆ソワソワし始めていた。
今日は朝から羽田は来ておらず、潮崎が連絡を取ったところ、展示場を彷徨いているらしい。仕事はしている様なので、潮崎は報告書をさっさと上げるようにとだけ告げていた。
「ねえ野原さん、今日早川さんと会うんだよね?」
例によって、ツンツン頭の佐川が親しげに話しかけてきた。橋本は今日は出社していたが、羽田が展示場にいると聞くと、ごつい身体を思ったよりも俊敏に動かして展示場へと急ぎ去って行った。プロジェクトリーダー自ら、羽田をあの場に留めるつもりだそうだ。夜もなるべく捕まえるとのことだったので、橋本には感謝しかない。
リアムは、そんな佐川につれなく言った。
「そうだ。大事な話し合いだから、邪魔するなよ」
「山岸が横にいるんでしょ? そんな野暮なことはしないよ」
佐川は苦笑いすると、そう言って自席へと戻って行った。一瞬祐介の方を見ていたので、祐介がまた何かしたのかもしれないが、恐ろしくて祐介の方を見ることが出来なかった。
祐介以外は、飲み比べをすることは知らない。リアムが勝負に負けた場合、魔術師としての正体を曝け出す必要が出て来た場合、他の社員がいると非常に拙いことになってしまうからだ。中身が男のリアムとずっと共にいる祐介も、おかしな目で見られる可能性だってある。
懐の深い祐介が、リアムの所為で居心地が悪くなってしまうのは避けたかった。
「いいなあ、早川さんと会えるなんて」
そう呑気に言っているのは、早川のことが好きな山口である。今日もでかい腹を揺らしており、正直男というよりも何かの動物に見えて仕方ない。リアムの世界では、あまり食料が豊富でなかった所為もあり、太った人間は裕福な家庭に育った者という印象である。そして奴らは得てして性格は傲慢で高飛車だ。ついそういう目で山口のことを見てしまうので、実際に山口と話すと全く思ったのと印象が違い違和感を覚えた。
「お前はさ、もてたきゃ痩せろよ」
可もなく不可もない顔をしている田端が、いつもの様に山口に冷たいひと言を放つ。
「早川さんがデブ専かもしれないでしょー?」
「んな訳あるかよ。社長見てみりゃ分かるだろ、身体鍛えてる奴じゃねえと駄目だと思うぞ。なあ野原さん。こいつの腹、どう思う?」
リアムが二人のやり取りを眺めていると、田端が突然話題を振ってきた。なので、リアムは素直に意見を述べることにした。
「過度な体重増加は短命を招く。将来を共にしようという相手を口説くならば、健康に問題ないことを証明するのは一つの手であろう」
「……だってよ」
「野原さんまでー!」
山口が泣き真似をしたが、可愛くはない。祐介なら実際に泣いても可愛いが。
「祐介はちゃんと鍛えているぞ。何なら鍛え方を祐介から教わったらどうだ」
リアムが山口の為を思ってそう助言すると、山口が机に突っ伏してしまった。
「努力するイケメンてどうなのよ」
「健康に気を使うのはいいことだと思うがな」
「女の人から見て、やっぱりその辺って大事?」
半泣きな声で山口が尋ねてきたので、リアムは女の人とは言えないが、はっきりと答えてやった。
「大事だ」
「オーノー!」
山口が、訳の分からない叫び声を上げて椅子に沈んで行った。
今日は朝から羽田は来ておらず、潮崎が連絡を取ったところ、展示場を彷徨いているらしい。仕事はしている様なので、潮崎は報告書をさっさと上げるようにとだけ告げていた。
「ねえ野原さん、今日早川さんと会うんだよね?」
例によって、ツンツン頭の佐川が親しげに話しかけてきた。橋本は今日は出社していたが、羽田が展示場にいると聞くと、ごつい身体を思ったよりも俊敏に動かして展示場へと急ぎ去って行った。プロジェクトリーダー自ら、羽田をあの場に留めるつもりだそうだ。夜もなるべく捕まえるとのことだったので、橋本には感謝しかない。
リアムは、そんな佐川につれなく言った。
「そうだ。大事な話し合いだから、邪魔するなよ」
「山岸が横にいるんでしょ? そんな野暮なことはしないよ」
佐川は苦笑いすると、そう言って自席へと戻って行った。一瞬祐介の方を見ていたので、祐介がまた何かしたのかもしれないが、恐ろしくて祐介の方を見ることが出来なかった。
祐介以外は、飲み比べをすることは知らない。リアムが勝負に負けた場合、魔術師としての正体を曝け出す必要が出て来た場合、他の社員がいると非常に拙いことになってしまうからだ。中身が男のリアムとずっと共にいる祐介も、おかしな目で見られる可能性だってある。
懐の深い祐介が、リアムの所為で居心地が悪くなってしまうのは避けたかった。
「いいなあ、早川さんと会えるなんて」
そう呑気に言っているのは、早川のことが好きな山口である。今日もでかい腹を揺らしており、正直男というよりも何かの動物に見えて仕方ない。リアムの世界では、あまり食料が豊富でなかった所為もあり、太った人間は裕福な家庭に育った者という印象である。そして奴らは得てして性格は傲慢で高飛車だ。ついそういう目で山口のことを見てしまうので、実際に山口と話すと全く思ったのと印象が違い違和感を覚えた。
「お前はさ、もてたきゃ痩せろよ」
可もなく不可もない顔をしている田端が、いつもの様に山口に冷たいひと言を放つ。
「早川さんがデブ専かもしれないでしょー?」
「んな訳あるかよ。社長見てみりゃ分かるだろ、身体鍛えてる奴じゃねえと駄目だと思うぞ。なあ野原さん。こいつの腹、どう思う?」
リアムが二人のやり取りを眺めていると、田端が突然話題を振ってきた。なので、リアムは素直に意見を述べることにした。
「過度な体重増加は短命を招く。将来を共にしようという相手を口説くならば、健康に問題ないことを証明するのは一つの手であろう」
「……だってよ」
「野原さんまでー!」
山口が泣き真似をしたが、可愛くはない。祐介なら実際に泣いても可愛いが。
「祐介はちゃんと鍛えているぞ。何なら鍛え方を祐介から教わったらどうだ」
リアムが山口の為を思ってそう助言すると、山口が机に突っ伏してしまった。
「努力するイケメンてどうなのよ」
「健康に気を使うのはいいことだと思うがな」
「女の人から見て、やっぱりその辺って大事?」
半泣きな声で山口が尋ねてきたので、リアムは女の人とは言えないが、はっきりと答えてやった。
「大事だ」
「オーノー!」
山口が、訳の分からない叫び声を上げて椅子に沈んで行った。
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