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第三章 上級編開始
第546話 OLサツキの上級編、フレイのダンジョン地下二十階の夜は更ける
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ログハウスに戻ると、涼んでいたラムと須藤さんが出迎えてくれた。
ウルスラとアールはどこに行ったのだろう。外にもいなかったし、ログハウス内にもいないし、ベッドはまだユラが出していない。
「ねえ、ウルスラとアールは?」
サツキがラムと須藤さんに尋ねると、二人は手を繋いで歩く真似をした。
「お散歩?」
二人はこくこくと頷いた。ユラがタオルを椅子の背もたれにかけつつコメントする。
「今日も結構飲んでたから、酔い覚ましかもな。あ、そういや、ベッドを出し忘れてた」
「出して並べておこうか」
「おう、そうしたらサツキのマッサージもやってやるよ」
「それは本当に嬉しい」
元の世界では、時折身体が限界になると、女性店員を指定してマッサージしてもらうこともあるにはあった。だが決して安くはないし、指定すると希望した時間が合わなかったりと、なかなか予約を取ることも難しく、ここ暫くは行けていなかった。
男性店員でも普段は問題ないが、一度だけ嫌な目に遭わされたことがあった。そこは普通触らないよね? という所をちょいちょい押されたのだ。勿論サツキにそんなことを抗議出来る気概など当時はなく、それ以来、もう男性店員にやってもらうのはやめた。
自意識過剰なのかもしれないけど、暫くしてその店からその店員がいなくなったので、他にも同じことをしていたのかもしれないと思ったものだ。
ユラにだったら、触られても嫌じゃないのに。
恥ずかしさはあるが、嫌ではない。あのゾッとする様なおぞましさは、ユラに触れられても感じたことはない。初めてアールに手を握られた時は恐怖を覚えた記憶があるので、多分これはユラ限定に違いない。
とすると、やはり恋は偉大だ。あんなに男性が怖かったサツキが、まるで引力で引き寄せられる様にユラに引かれ惹かれていく。こんなこと、絶対自分の身には起こり得ないと信じて疑わなかったのに、ユラに助けられてから、サツキの全てが変わった。
この世界にサツキの心を強烈に引き止めているのは、ユラへの想いだ。それこそ、リュシカが言っていた様な碇の様に、揺れるサツキの存在を繋ぎ止めてくれている。
「ユラが私の碇だったらいいのに」
ポツリと口から突いて出た言葉に、ベッドを並べていたユラが「え?」と反応した。しまった。これはさすがに重すぎる。ユラだってきっと迷惑――
「……俺も」
サツキはユラを振り返った。ユラが、頬を紅潮させてサツキを見ている。今、ユラは何と言った?
「俺も、そう思う」
ユラが言いながら、身体をこちらに向けた。一歩、こちらへ踏み出してくる。サツキは動かなかった。今のユラの台詞の真意が分からなくて、脳みそがフリーズしていたのだ。
「サツキ」
ユラの手がサツキの頬に伸びてきて、今正に触れようとしていたその時。
「ただいま!! 火龍草の花の種、発見したわよ!」
バン! と勢いよくログハウスの扉を開けて、ウルスラとアールが入ってきた。ユラが小さくチッと舌打ちしたのが聞こえた。
「火龍草、あったの?」
「あの案内図にね、一部工事中の所があったから、もしかしてと思って行ってみたらドンピシャ! 洞穴になってて、その中に群生してたのよ!」
サツキがウルスラに駆け寄ると、ウルスラは嬉しそうに瓶の中身を見せてくれた。龍の頭部の様なフォルムの紅く光る花と、別の小瓶には真っ赤な色の種があった。
「これで依頼はあと一つね!」
ウルスラが、花の様に笑った。
ウルスラとアールはどこに行ったのだろう。外にもいなかったし、ログハウス内にもいないし、ベッドはまだユラが出していない。
「ねえ、ウルスラとアールは?」
サツキがラムと須藤さんに尋ねると、二人は手を繋いで歩く真似をした。
「お散歩?」
二人はこくこくと頷いた。ユラがタオルを椅子の背もたれにかけつつコメントする。
「今日も結構飲んでたから、酔い覚ましかもな。あ、そういや、ベッドを出し忘れてた」
「出して並べておこうか」
「おう、そうしたらサツキのマッサージもやってやるよ」
「それは本当に嬉しい」
元の世界では、時折身体が限界になると、女性店員を指定してマッサージしてもらうこともあるにはあった。だが決して安くはないし、指定すると希望した時間が合わなかったりと、なかなか予約を取ることも難しく、ここ暫くは行けていなかった。
男性店員でも普段は問題ないが、一度だけ嫌な目に遭わされたことがあった。そこは普通触らないよね? という所をちょいちょい押されたのだ。勿論サツキにそんなことを抗議出来る気概など当時はなく、それ以来、もう男性店員にやってもらうのはやめた。
自意識過剰なのかもしれないけど、暫くしてその店からその店員がいなくなったので、他にも同じことをしていたのかもしれないと思ったものだ。
ユラにだったら、触られても嫌じゃないのに。
恥ずかしさはあるが、嫌ではない。あのゾッとする様なおぞましさは、ユラに触れられても感じたことはない。初めてアールに手を握られた時は恐怖を覚えた記憶があるので、多分これはユラ限定に違いない。
とすると、やはり恋は偉大だ。あんなに男性が怖かったサツキが、まるで引力で引き寄せられる様にユラに引かれ惹かれていく。こんなこと、絶対自分の身には起こり得ないと信じて疑わなかったのに、ユラに助けられてから、サツキの全てが変わった。
この世界にサツキの心を強烈に引き止めているのは、ユラへの想いだ。それこそ、リュシカが言っていた様な碇の様に、揺れるサツキの存在を繋ぎ止めてくれている。
「ユラが私の碇だったらいいのに」
ポツリと口から突いて出た言葉に、ベッドを並べていたユラが「え?」と反応した。しまった。これはさすがに重すぎる。ユラだってきっと迷惑――
「……俺も」
サツキはユラを振り返った。ユラが、頬を紅潮させてサツキを見ている。今、ユラは何と言った?
「俺も、そう思う」
ユラが言いながら、身体をこちらに向けた。一歩、こちらへ踏み出してくる。サツキは動かなかった。今のユラの台詞の真意が分からなくて、脳みそがフリーズしていたのだ。
「サツキ」
ユラの手がサツキの頬に伸びてきて、今正に触れようとしていたその時。
「ただいま!! 火龍草の花の種、発見したわよ!」
バン! と勢いよくログハウスの扉を開けて、ウルスラとアールが入ってきた。ユラが小さくチッと舌打ちしたのが聞こえた。
「火龍草、あったの?」
「あの案内図にね、一部工事中の所があったから、もしかしてと思って行ってみたらドンピシャ! 洞穴になってて、その中に群生してたのよ!」
サツキがウルスラに駆け寄ると、ウルスラは嬉しそうに瓶の中身を見せてくれた。龍の頭部の様なフォルムの紅く光る花と、別の小瓶には真っ赤な色の種があった。
「これで依頼はあと一つね!」
ウルスラが、花の様に笑った。
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