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第三章 上級編開始
第545話 魔術師リアムの上級編・早川ユメ攻略四日目の出勤前
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帰すつもりはない。祐介ははっきりとそう言うと、にっこりと笑ってリアムの手を引っ張った。
「さ、行こうか」
リアムは今、混乱していた。思っていたよりも祐介がリアムの状況について深く考えていたことに驚いたし、サツキに遠慮して生きることはサツキを馬鹿にすることだと言われたことに、少なからず衝撃を受けていたのだ。
だが、確かにそうだ。サツキに悪かろうという理由を付けて、何一つ真剣に向き合わずただ逃げ回った生を過ごした場合、その姿勢はサツキに対し誇れるものだろうか。
サツキの身体にいるのは、今はリアムだ。一所懸命目の前のことに向き合わない理由をサツキの所為にしてしまったら、それはただの怠慢であり逃げなのではないか。
「祐介」
「うん?」
祐介が、玄関の外を警戒しながら表へと出る。
「確かに私は、サツキに対し誠実ではなかったかもしれぬ」
祐介は、何も言わずリアムを見下ろしているだけだ。
「お前がはっきりと言ってくれなければ、私はサツキの命そのものを無駄にするところだった」
「僕の言いたかったこと、分かってくれたんだね……!」
祐介が、笑顔になった。リアムは、今度は明確な意思を持って祐介を見上げつつ頷いてみせた。
「私は、サツキの身体を持った私で一所懸命生きる義務があるのだ!」
ぐっと拳を握り締め、胸の前に持ってきた。祐介の口の端が、ひく、と引き攣った気がするのは気の所為であろうか。
「いや、まあそうだと思うけど、義務って」
「祐介!」
「はい」
「私は決めたぞ!」
「何を」
「私は、この世界で幸せを掴むのだ!」
「幸せ……」
祐介が、手をぎゅっと握ってきた。
「とすれば、何はともあれまずは羽田の件を片付ける必要があろう!」
何をするにしても、この件が引っかかっており自由に行動を取ることを阻害している。
「そこから?」
祐介が呆れた様な笑顔を見せたが、リアムは大きくはっきりと頷いた。
羽田の件があって祐介が傍にいるのか、羽田の件がなくとも祐介が傍にいるのか、恐らくは祐介本人も分かっていないのだ。だから執着する。だからリアムも迷う。この件がきれいさっぱり片付いて、それでも祐介がまだリアムに執着するならば、今度はこの世界に引き止めようとする為かそれ以外、……つまり、リアムに対し好意を持っているかどうかの判断が出来るようになるのではないか。
そして好意を持っておらずただこの世界に引き止めようとしているのであれば、それは友人関係としても問題ないのかの検証に移れることになる。仮に、そうもし仮に祐介がリアムに対し好意を持っているならば、今度はそれがサツキに対してなのか、それともリアムに対してなのか、それの検証を行なうことが出来る。
こんがらがった事象も、一つ一つ紐解いていけば、きっとすっきりするに違いない。リアムは方向性を改めて定めた。
リアムの祐介への好意は、最後の検証の際に改めて考えればよい。
「とすれば、今日の早川ユメとの飲み比べにも気合いが入ろうというものだ!」
満面の笑みで祐介を見上げると、祐介が眩しそうにリアムを見下ろしていた。
「きっちりとお供させてもらいますよ」
「うむ、祐介だけが頼りだ! しかと頼むぞ」
「仰せの通りに」
二人は目を合わせると、クスクスと笑い出したのだった。
「さ、行こうか」
リアムは今、混乱していた。思っていたよりも祐介がリアムの状況について深く考えていたことに驚いたし、サツキに遠慮して生きることはサツキを馬鹿にすることだと言われたことに、少なからず衝撃を受けていたのだ。
だが、確かにそうだ。サツキに悪かろうという理由を付けて、何一つ真剣に向き合わずただ逃げ回った生を過ごした場合、その姿勢はサツキに対し誇れるものだろうか。
サツキの身体にいるのは、今はリアムだ。一所懸命目の前のことに向き合わない理由をサツキの所為にしてしまったら、それはただの怠慢であり逃げなのではないか。
「祐介」
「うん?」
祐介が、玄関の外を警戒しながら表へと出る。
「確かに私は、サツキに対し誠実ではなかったかもしれぬ」
祐介は、何も言わずリアムを見下ろしているだけだ。
「お前がはっきりと言ってくれなければ、私はサツキの命そのものを無駄にするところだった」
「僕の言いたかったこと、分かってくれたんだね……!」
祐介が、笑顔になった。リアムは、今度は明確な意思を持って祐介を見上げつつ頷いてみせた。
「私は、サツキの身体を持った私で一所懸命生きる義務があるのだ!」
ぐっと拳を握り締め、胸の前に持ってきた。祐介の口の端が、ひく、と引き攣った気がするのは気の所為であろうか。
「いや、まあそうだと思うけど、義務って」
「祐介!」
「はい」
「私は決めたぞ!」
「何を」
「私は、この世界で幸せを掴むのだ!」
「幸せ……」
祐介が、手をぎゅっと握ってきた。
「とすれば、何はともあれまずは羽田の件を片付ける必要があろう!」
何をするにしても、この件が引っかかっており自由に行動を取ることを阻害している。
「そこから?」
祐介が呆れた様な笑顔を見せたが、リアムは大きくはっきりと頷いた。
羽田の件があって祐介が傍にいるのか、羽田の件がなくとも祐介が傍にいるのか、恐らくは祐介本人も分かっていないのだ。だから執着する。だからリアムも迷う。この件がきれいさっぱり片付いて、それでも祐介がまだリアムに執着するならば、今度はこの世界に引き止めようとする為かそれ以外、……つまり、リアムに対し好意を持っているかどうかの判断が出来るようになるのではないか。
そして好意を持っておらずただこの世界に引き止めようとしているのであれば、それは友人関係としても問題ないのかの検証に移れることになる。仮に、そうもし仮に祐介がリアムに対し好意を持っているならば、今度はそれがサツキに対してなのか、それともリアムに対してなのか、それの検証を行なうことが出来る。
こんがらがった事象も、一つ一つ紐解いていけば、きっとすっきりするに違いない。リアムは方向性を改めて定めた。
リアムの祐介への好意は、最後の検証の際に改めて考えればよい。
「とすれば、今日の早川ユメとの飲み比べにも気合いが入ろうというものだ!」
満面の笑みで祐介を見上げると、祐介が眩しそうにリアムを見下ろしていた。
「きっちりとお供させてもらいますよ」
「うむ、祐介だけが頼りだ! しかと頼むぞ」
「仰せの通りに」
二人は目を合わせると、クスクスと笑い出したのだった。
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