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第三章 上級編開始
第543話 魔術師リアムの上級編・早川ユメ攻略四日目の化粧
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リアムが自宅に戻り化粧以外の支度を済ませていると、魔法陣が青く光って祐介がやってきた。
「これ楽しいね」
ぼん、とベッドに着地した祐介は、かちっとしたスーツ姿の働く男に変身しており、大変見目がよい。
「じゃあ座って下さい」
「宜しく頼む」
「段々楽しくなってきたよ、僕」
祐介はそう言いながら、手早くリアムに化粧を施していく。実に器用な男である。
そして、リアムの顔を見つめる祐介の瞳に段々熱が篭ってきていた。祐介の好みの顔に近付いてきているということだろう。
「今夜はさ、僕は側で見守ってていいんだよね?」
「特に何も聞いていないな。今日辺りメールが来ると思うのだが」
「遠目からしか見守れなくなると、絶対危険だよ」
「何がだ」
「絶対変な虫が寄ってくる」
祐介の口がへの字になったのを見て、リアムは笑ってしまった。
「確かに今のサツキは美人ではあるな」
すると、祐介が不貞腐れ顔になってしまった。
「どうして君は自分とサツキちゃんをそう分けようとするのさ」
「え?」
「今の君は、サツキちゃんの身体に君の心があってこその君でしょうが」
祐介の発言は、リアムにとって衝撃的だった。
「私は……私とサツキとは別物だと」
「だって君は今は元々の君の姿じゃないし、サツキちゃんの身体だって中身はサツキちゃんじゃないでしょ」
「いや、それはそうなのだが、でも」
「今の君が君なんだと僕は思ってるよ」
祐介のその言葉は、リアムが思っていた以上に祐介がリアムの今の状態について考えていたことの証明だった。
確かに、リアムはリアムとサツキとをしっかりと分けて考えている。何故か。
いつかは元の世界に戻るものだと思っているからだ。この身体は借り物だと思っているからだ。
「でも……でも、サツキがもし戻ってきた時、それまでに私が好き勝手にやっていたら、サツキは……」
化粧を施し終えた祐介は、化粧道具を片付けながらリアムを少し呆れた顔で見て、言った。
「向こうは君の身体で好き勝手やってるかもよ。それにさ、一生戻らないかもしれないのに、一生そうやってサツキちゃんに遠慮して生きていくつもり?」
祐介は今度はリアムの髪の毛をまとめだした。
「それってさ、サツキちゃんを馬鹿にしてない?」
「……どういう意味だ」
祐介が、ふう、と息を吐いた。
「サツキちゃんからもらった身体を、遠慮して一生を無駄にするのかってことだよ。万が一また入れ替わったとして、一所懸命に君が生きてなかったって分かったら、サツキちゃんは君に失望すると思うけど」
リアムは、何も言い返せなかった。
「君が一所懸命生きてきたなら、その後頑張ろうって思えるかもしれないけど、つまんない人生を歩んできた後を後は宜しくって言いたいのかってことだよ」
祐介は器用に髪をまとめていった。
「……言い方、きつかったかな」
祐介が、ぼそっと尋ねた。リアムは呆然としつつも、返答した。
「いや……祐介の言う通りだ」
「たださ、一つ忘れないで欲しいのはさ」
祐介が全て整え終え、リアムの肩をポン、と叩いて立ち上がると、リアムの前に回り込んで手を貸して起こしてくれた。
「僕は君を返すつもりはないよ」
祐介の顔は、真剣そのものだった。
「これ楽しいね」
ぼん、とベッドに着地した祐介は、かちっとしたスーツ姿の働く男に変身しており、大変見目がよい。
「じゃあ座って下さい」
「宜しく頼む」
「段々楽しくなってきたよ、僕」
祐介はそう言いながら、手早くリアムに化粧を施していく。実に器用な男である。
そして、リアムの顔を見つめる祐介の瞳に段々熱が篭ってきていた。祐介の好みの顔に近付いてきているということだろう。
「今夜はさ、僕は側で見守ってていいんだよね?」
「特に何も聞いていないな。今日辺りメールが来ると思うのだが」
「遠目からしか見守れなくなると、絶対危険だよ」
「何がだ」
「絶対変な虫が寄ってくる」
祐介の口がへの字になったのを見て、リアムは笑ってしまった。
「確かに今のサツキは美人ではあるな」
すると、祐介が不貞腐れ顔になってしまった。
「どうして君は自分とサツキちゃんをそう分けようとするのさ」
「え?」
「今の君は、サツキちゃんの身体に君の心があってこその君でしょうが」
祐介の発言は、リアムにとって衝撃的だった。
「私は……私とサツキとは別物だと」
「だって君は今は元々の君の姿じゃないし、サツキちゃんの身体だって中身はサツキちゃんじゃないでしょ」
「いや、それはそうなのだが、でも」
「今の君が君なんだと僕は思ってるよ」
祐介のその言葉は、リアムが思っていた以上に祐介がリアムの今の状態について考えていたことの証明だった。
確かに、リアムはリアムとサツキとをしっかりと分けて考えている。何故か。
いつかは元の世界に戻るものだと思っているからだ。この身体は借り物だと思っているからだ。
「でも……でも、サツキがもし戻ってきた時、それまでに私が好き勝手にやっていたら、サツキは……」
化粧を施し終えた祐介は、化粧道具を片付けながらリアムを少し呆れた顔で見て、言った。
「向こうは君の身体で好き勝手やってるかもよ。それにさ、一生戻らないかもしれないのに、一生そうやってサツキちゃんに遠慮して生きていくつもり?」
祐介は今度はリアムの髪の毛をまとめだした。
「それってさ、サツキちゃんを馬鹿にしてない?」
「……どういう意味だ」
祐介が、ふう、と息を吐いた。
「サツキちゃんからもらった身体を、遠慮して一生を無駄にするのかってことだよ。万が一また入れ替わったとして、一所懸命に君が生きてなかったって分かったら、サツキちゃんは君に失望すると思うけど」
リアムは、何も言い返せなかった。
「君が一所懸命生きてきたなら、その後頑張ろうって思えるかもしれないけど、つまんない人生を歩んできた後を後は宜しくって言いたいのかってことだよ」
祐介は器用に髪をまとめていった。
「……言い方、きつかったかな」
祐介が、ぼそっと尋ねた。リアムは呆然としつつも、返答した。
「いや……祐介の言う通りだ」
「たださ、一つ忘れないで欲しいのはさ」
祐介が全て整え終え、リアムの肩をポン、と叩いて立ち上がると、リアムの前に回り込んで手を貸して起こしてくれた。
「僕は君を返すつもりはないよ」
祐介の顔は、真剣そのものだった。
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