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第三章 上級編開始
第529話 魔術師リアムの上級編・早川ユメ攻略三日目開始
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昨夜は、おやすみのキスをしていいかという祐介の質問に答えたくなくて寝たふりをしたリアムだったが、あっさりと寝てしまったらしい。パチ、と目を覚ますと、外はもう明るくなりつつあった。時計を見ると、五時半。少し早起きしてしまった様だ。寝るのが早かったからかもしれない。
今の自分の状況を確認すべく、起き上がろうとした。すると、腰に緩く巻かれていた祐介の腕にぐっと引き戻された。祐介は起きているのだろうか。首を捻り、頭の上にある筈の祐介の顔を見上げると、祐介と目が合った。眠そうだが、目は開いてこちらを見ている。
「起きていたのか?」
「うん」
リアムはもぞもぞと祐介の頭の方に移動して祐介の顔を至近距離で見てみると、何だか疲れた顔をしているではないか。
「祐介? ちゃんと寝たのか?」
「……寝たり起きたりしてた」
全く寝てないという訳ではないらしい。だがどうしたというのか。リアムは祐介の胸の上に腕を乗せると、身体を持ち上げて祐介の顔を上から覗き込んでみた。目が赤くなっている様に見える。まさか泣いていた訳ではあるまいが、様子がおかしい。
「少しでも寝た方がいいぞ」
まだあと一時間は寝る時間はある。すると、祐介からはそれとは全く関係のない言葉が返ってきた。
「ねえ、怒ってる?」
「怒ってなどいないぞ。私はよく寝て非常にすっきりしているからな」
実によく寝たのは確かであるので、素直にそう伝えた。
「昨日のは、眠かっただけ?」
「昨日の、どれだ」
恐らくおやすみのキス云々の話だとは思ったが、無視してその後即寝してしまったので、祐介に寝たふりはばれていない筈である。
「……そっか、勘違いしちゃったよ」
祐介はそう言うと、ようやく小さな笑みを浮かべた。まさか、リアムを怒らせたと思い、それで寝れなくなってしまったというのか。この非常によく寝る祐介が。
少し冷たくし過ぎたらしい。祐介がリアムをサツキとして見てようがいまいが、祐介にはそもそも関係ないのかもしれない。リアムがそこに拘っていることも、恐らく気付いてはいないのだろう。とすれば、祐介にしてみればいきなりリアムの返事が返ってこなくなり、一体どうしたことかと思ったに違いない。悪いことをした。
「とにかくもう少し寝ろ」
「どこにも行かないでよ」
子供が甘える様に、祐介が言う。そんな様子が可愛らしくて、リアムは思わず笑ってしまった。
「大丈夫、どこにもいかない。祐介が起きるまでちゃんとここにいるから」
「ねえ」
「うん?」
「おやすみのキスしてよ」
「はは、分かった分かった」
本当に子供である。リアムは身体を起こし、祐介のおでこにちゅ、と軽いキスをしてやった。そのまま祐介の髪を撫で、開いた瞼を閉じさせようと手のひらで覆う。
「おやすみ祐介」
「うん」
暫くそうしていると、やがて祐介の少し開いた口からスーッと気持ちの良さそうな寝息がし始めた。リアムがそっと目の上の手を外すと、瞼はちゃんと閉じられたままになっている。寝たのだ。
リアムは祐介の頭の上辺りに顔をくっつけると、祐介の頭を抱える様にして横になり、祐介の頭を撫で続けたのだった。
今の自分の状況を確認すべく、起き上がろうとした。すると、腰に緩く巻かれていた祐介の腕にぐっと引き戻された。祐介は起きているのだろうか。首を捻り、頭の上にある筈の祐介の顔を見上げると、祐介と目が合った。眠そうだが、目は開いてこちらを見ている。
「起きていたのか?」
「うん」
リアムはもぞもぞと祐介の頭の方に移動して祐介の顔を至近距離で見てみると、何だか疲れた顔をしているではないか。
「祐介? ちゃんと寝たのか?」
「……寝たり起きたりしてた」
全く寝てないという訳ではないらしい。だがどうしたというのか。リアムは祐介の胸の上に腕を乗せると、身体を持ち上げて祐介の顔を上から覗き込んでみた。目が赤くなっている様に見える。まさか泣いていた訳ではあるまいが、様子がおかしい。
「少しでも寝た方がいいぞ」
まだあと一時間は寝る時間はある。すると、祐介からはそれとは全く関係のない言葉が返ってきた。
「ねえ、怒ってる?」
「怒ってなどいないぞ。私はよく寝て非常にすっきりしているからな」
実によく寝たのは確かであるので、素直にそう伝えた。
「昨日のは、眠かっただけ?」
「昨日の、どれだ」
恐らくおやすみのキス云々の話だとは思ったが、無視してその後即寝してしまったので、祐介に寝たふりはばれていない筈である。
「……そっか、勘違いしちゃったよ」
祐介はそう言うと、ようやく小さな笑みを浮かべた。まさか、リアムを怒らせたと思い、それで寝れなくなってしまったというのか。この非常によく寝る祐介が。
少し冷たくし過ぎたらしい。祐介がリアムをサツキとして見てようがいまいが、祐介にはそもそも関係ないのかもしれない。リアムがそこに拘っていることも、恐らく気付いてはいないのだろう。とすれば、祐介にしてみればいきなりリアムの返事が返ってこなくなり、一体どうしたことかと思ったに違いない。悪いことをした。
「とにかくもう少し寝ろ」
「どこにも行かないでよ」
子供が甘える様に、祐介が言う。そんな様子が可愛らしくて、リアムは思わず笑ってしまった。
「大丈夫、どこにもいかない。祐介が起きるまでちゃんとここにいるから」
「ねえ」
「うん?」
「おやすみのキスしてよ」
「はは、分かった分かった」
本当に子供である。リアムは身体を起こし、祐介のおでこにちゅ、と軽いキスをしてやった。そのまま祐介の髪を撫で、開いた瞼を閉じさせようと手のひらで覆う。
「おやすみ祐介」
「うん」
暫くそうしていると、やがて祐介の少し開いた口からスーッと気持ちの良さそうな寝息がし始めた。リアムがそっと目の上の手を外すと、瞼はちゃんと閉じられたままになっている。寝たのだ。
リアムは祐介の頭の上辺りに顔をくっつけると、祐介の頭を抱える様にして横になり、祐介の頭を撫で続けたのだった。
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