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第三章 上級編開始

第524話 OLサツキの上級編、フレイのダンジョン地下十三階

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 更に暑そうな階下への出発準備がようやく整ったので、一行は地下十三階の階段を降りて行った。体感温度はどんどん上がっている気がするが、まだ何とか耐えられそうな暑さではあったので、ユラはブリーザラー冷却魔法はまだ使用しないという判断をした。

 この階で出会ったのは、フレイムボアとメルトスライムという通常のスライムを更にでろでろに溶かした、溶岩みたいな色をしているスライムだった。見ただけで汗が吹き出てくる。

「剣で切れるモンスターなら私に任せて! じゃんじゃんいくわよ!」

 切れば切る程お宝を落として行くので、ウルスラは最高にご機嫌だ。お陰で先程の微妙な雰囲気が消し飛んだので、サツキは内心ウルスラに感謝していた。

「ウルスラ! 俺も頑張るよ!」

 アールは元々引き摺らないタイプなのは分かっていたが、今回も同様だった。にっこにこで剣を振るっている。

 これを見ていたら、先程自分がショックを受けた内容なんて瑣末なことなんじゃないかと思えてくるから不思議だ。

 そして後衛で隣を進むユラも、非常にご機嫌だった。時折鼻歌なんぞ歌っている。この世界の歌は何だか少しエスニカルで不思議な旋律だ。

 バリアーラを唱える以外はついて行くだけ、しかもサツキに至っては魔力温存と言われているので何もしていない。つまり、暇だった。

 そんな時はお喋りに限る。この世界にきてやっと人と緊張せずに会話出来る様になったサツキにとって、ユラ達との会話は単純に楽しかった。

「ユラ、お宝が一杯手に入りそうでよかったね」
「ん? ああ、まあな」

 あれ、反応が思っていたものと違った。お宝が嬉しくてご機嫌だったんじゃなかったのだろうか。

「急に何でそんなこと言ったんだ?」

 ユラは珍しくニコニコし続けている。やはり機嫌は最高にいい。

「だってご機嫌じゃない。お金になるからかなって思ったんだけど、違った?」

 するとユラは、ああ、と納得した様に更に笑った。

「そりゃまあ金はあればある程生活は楽になるから嬉しいけど、今俺が最高に機嫌がいいのは別の理由だぜ」
「別の理由?」

 何だろうか。サツキは首を傾げた。

「俺さ、今夜はいい夢見られる自信があるんだ」
「え? ごめん前後が分からないよ」

 ユラが前衛の二人の注意がこちらに向けられていないことを確認すると、サツキに近付いて小声で言った。

「サツキから初めて求められたから」

 サツキはブッと吹いた。鼻、鼻に逆流してきた。

「大丈夫か?」

 咳き込み始めてしまったサツキの背中を、ユラが優しくさする。

「そんなに驚くことか?」
「いやいやいや、ご機嫌の理由がそれって!」
「機嫌もよくなるだろ。考えてもみろ。これまで何回したか覚えてるか?」
「お、覚えてない」

 とりあえず、滅茶苦茶しまくっているのだけは確かだ。

「だろ? 俺ももう数えられない。だけどその中で、お前から進んでしてくれって言ったのは何回だ?」
「さ、さっきの一回です……」
「だろ!? 分かるか俺のこの喜びが!」
「ユラ、声大きいから……」

 改めて思い返すと、随分大胆な発言をしたものだ。

「本当は、やったー! って叫びたい位なんだから、これ位許してくれよ」

 訳の分からない理屈を展開したユラの笑顔は本当に嬉しそうで、ユラの本意は分からないけど、あんなことでも言ってよかったんだな、と思えたサツキだった。
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