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第三章 上級編開始
第518話 OLサツキの上級編、フレイのダンジョン地下十二階の時間潰し
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ユラにもたれかかったサツキを、ユラは驚いた顔をして見た後、サツキの身体に腕を回してきゅっと抱き締めた。
正直ダンジョン内は暑く、ユラと触れている部分からどんどん汗が噴き出てくる。でも離れたくはなかった。この世界で、サツキが心から安心出来る唯一の場所が、ここだから。
「なあサツキ」
「うん」
「さっきはどこに行こうとしたんだよ」
子供をあやすかの様に、この年下の僧侶はサツキを優しく扱う。勘違いしてしまいそうになる程、甘く。
「……怒らないでね」
「ああ」
「一瞬、帰りたいって思っちゃった。その所為でユラは怒ったんだよね?」
ユラはすぐ上でサツキを見つめている。落ちてくるユラの髪の毛で暗くて、表情はよく見えなかった。
「……あんなに存在が薄くなったのは初めてだったんだ」
そうだったのか。確かに帰りたいとまで思ったのは、今回が初めてだった。ユラは怒ったというよりも、驚いてしまったのかもしれない。途端、申し訳なく思った。
「ごめんね」
だが、ユラはそんなサツキですら責めない。
「碇がしっかりしてねえからだろ。お前の所為じゃねえ」
どうしてこれが優しくないと言えるのか。春祭り以降、ユラはずっと優しいのに。
「碇……それって何なんだろうね?」
「リュシカがはっきり言ってくれりゃあよかったんだけどな。やっぱりリュシカんとこに行かないとだな」
「うん」
そう返事をしてから、急に怖くなった。もし碇をもう見つけられないと言われたら? もし元の世界に戻る方向に全てが動き出してしまったら? きっとサツキにそれを止める術はない。
そうしたら、もうこうして触れることすら出来なくなる。
「ユラ……」
「うん?」
ユラのこめかみを、汗が伝う。その優しい眼差しに、サツキは言葉を失ってしまった。今、何を言おうとしたのか。おこがましくて図々しくて、でも。
「何だよ、言えよ」
口調はきついけど、表情は優しい。
「やっぱり、いい」
「言えよ、頼むから」
そうっとユラの目を見ると、ずっとサツキを見ている。泣きそうになった。
「泣くなよ……どんなことでも怒らねえから、言って」
そしてまた、泣いてなどないのに泣いたと言うのだ。胸が一杯になった。もう、溢れる言葉を止めることが出来なかった。
「ユラ、助けて……」
本物の涙が、ボロボロ溢れてきた。
「怖いよ、ずっとここにいたい、なのにどうして戻ろうとするのか分かんないよ……!」
ユラは、目を大きく開いてサツキを見ている。でも何も言わない。
言ってしまえ。言っても言わなくてもどちらにしろ元の世界に戻ろうとするならば、だったら言ってしまえばいい。
そして、やっと言いたかった言葉が出てきた。
「ユラ、キスして」
ユラが唾を呑み込む音がすぐ近くで聞こえた。
「ここにいてって、キスして」
ユラの目に熱が籠ったと思うのは、自意識過剰だろうか。
「……絶対、帰さねえよ」
ユラはそう囁くと、サツキの唇に指で触れた後、サツキの唇に唇を重ねた。
正直ダンジョン内は暑く、ユラと触れている部分からどんどん汗が噴き出てくる。でも離れたくはなかった。この世界で、サツキが心から安心出来る唯一の場所が、ここだから。
「なあサツキ」
「うん」
「さっきはどこに行こうとしたんだよ」
子供をあやすかの様に、この年下の僧侶はサツキを優しく扱う。勘違いしてしまいそうになる程、甘く。
「……怒らないでね」
「ああ」
「一瞬、帰りたいって思っちゃった。その所為でユラは怒ったんだよね?」
ユラはすぐ上でサツキを見つめている。落ちてくるユラの髪の毛で暗くて、表情はよく見えなかった。
「……あんなに存在が薄くなったのは初めてだったんだ」
そうだったのか。確かに帰りたいとまで思ったのは、今回が初めてだった。ユラは怒ったというよりも、驚いてしまったのかもしれない。途端、申し訳なく思った。
「ごめんね」
だが、ユラはそんなサツキですら責めない。
「碇がしっかりしてねえからだろ。お前の所為じゃねえ」
どうしてこれが優しくないと言えるのか。春祭り以降、ユラはずっと優しいのに。
「碇……それって何なんだろうね?」
「リュシカがはっきり言ってくれりゃあよかったんだけどな。やっぱりリュシカんとこに行かないとだな」
「うん」
そう返事をしてから、急に怖くなった。もし碇をもう見つけられないと言われたら? もし元の世界に戻る方向に全てが動き出してしまったら? きっとサツキにそれを止める術はない。
そうしたら、もうこうして触れることすら出来なくなる。
「ユラ……」
「うん?」
ユラのこめかみを、汗が伝う。その優しい眼差しに、サツキは言葉を失ってしまった。今、何を言おうとしたのか。おこがましくて図々しくて、でも。
「何だよ、言えよ」
口調はきついけど、表情は優しい。
「やっぱり、いい」
「言えよ、頼むから」
そうっとユラの目を見ると、ずっとサツキを見ている。泣きそうになった。
「泣くなよ……どんなことでも怒らねえから、言って」
そしてまた、泣いてなどないのに泣いたと言うのだ。胸が一杯になった。もう、溢れる言葉を止めることが出来なかった。
「ユラ、助けて……」
本物の涙が、ボロボロ溢れてきた。
「怖いよ、ずっとここにいたい、なのにどうして戻ろうとするのか分かんないよ……!」
ユラは、目を大きく開いてサツキを見ている。でも何も言わない。
言ってしまえ。言っても言わなくてもどちらにしろ元の世界に戻ろうとするならば、だったら言ってしまえばいい。
そして、やっと言いたかった言葉が出てきた。
「ユラ、キスして」
ユラが唾を呑み込む音がすぐ近くで聞こえた。
「ここにいてって、キスして」
ユラの目に熱が籠ったと思うのは、自意識過剰だろうか。
「……絶対、帰さねえよ」
ユラはそう囁くと、サツキの唇に指で触れた後、サツキの唇に唇を重ねた。
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