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第三章 上級編開始
第515話 魔術師リアムの上級編・早川ユメ攻略二日目の午後開始へ
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明日の昼食も一緒に食べないかと誘ったが、明日も明後日も社長に客先との会食があり、空いていないという。
「皆、私が働いてないみたいに思ってるようだけど、ちゃんと働いてんのよ」
早川ユメはそう言うと、エレベーターを先に降りるリアムに小さく手を振った。
「メールするから待機してなさいよ」
「分かった」
リアムが執務エリアへと戻ると中は閑散としていたが、祐介と木佐ちゃんだけはいた。祐介がリアムを見た瞬間、立ち上がる。
「サツキちゃん!」
それを見て、木佐ちゃんはやれやれといった風に笑った。この二人は何か話していたのだろうかと思い、普段食事を一緒に取っている相手がいなかったので、残った者同士食事をしたのだろうと推測した。
「大丈夫だった!?」
「勿論だ。なかなか面白い人だぞ、あの人は」
「そういうことじゃなくて、ああもうっ」
祐介が駆け寄ってきてリアムに手を伸ばそうとして、そこに木佐ちゃんがいることを思い出したのだろう。ぐ、と拳を握り締めると、寸止めした。
すると、くすっと笑った木佐ちゃんが、歯ブラシが入ったポーチを手に持ち、すっと立ち上がった。
「私、ちょっと歯磨きしに行ってくるから」
「あ……」
祐介が、きまりが悪そうに木佐ちゃんを見ると、木佐ちゃんが大人の余裕の笑みを見せて言った。
「早くしないと他の人が戻ってきちゃうわよ」
「!!」
木佐ちゃんが受付のすりガラスの奥に消えた瞬間、祐介がガバッとリアムを胸に抱き寄せた。
「祐介? どうした」
会社では接触してはならない、と言っていたのは祐介である。言った本人が自らそれを破ってどうするのだ。
「祐介?」
「不安で……!」
祐介の苦しそうな小声が聞こえてきた。それ程に羽田が彷徨いていないか心配だったのだろうか。酒を身体に入れていない昼間であれば、さすがにあの時の様なことはしないだろうに。だが万が一の為に潮崎を見張りに付けてもらったので、それでも不安になるのはさすがに行き過ぎではないか。そうリアムが危ぶんでいると。
「傍にいない時に消えちゃいそうになったらどうしようって、もうそればっかりが頭に浮かんで離れなくて……!」
リアムはハッとした。なんと祐介が心配していたのは、羽田の件ではなかったらしい。リアムはてっきりそちらだとばかり思っていたが、確かに羽田の件でなければいくら潮崎を見張りにつけようが不安は拭えないだろう。
「僕が引き戻さないといけないのに」
「……ん?」
祐介は今、何と言ったか?
「祐介、今のはどういう意味だ?」
すると、ようやく祐介が顔を上げた。まだ興奮が顔に残ってはいるが、大分落ち着きを取り戻した様だ。
「今の? 僕が引き戻すって話?」
リアムは頷いた。祐介には、祐介がこちらの世界にリアムを繋ぎ止めている一つの要因であろうという推測はまだ話していない。従って、これは祐介が祐介個人で導き出した考えなのだろうが。
「何故そう思うのだ?」
すると、祐介はあっけらかんとして言った。
「だって、僕が呼びかけると君はちゃんと戻ってくるでしょ」
「戻ってくる……」
確かに温泉で元の世界のことを考えた時には、存在が薄くなっている様に感じる様なことを祐介は語っていた。
「だから、それって僕の役割なのかなって」
祐介はそう言うと、にっこりと笑った。
「皆、私が働いてないみたいに思ってるようだけど、ちゃんと働いてんのよ」
早川ユメはそう言うと、エレベーターを先に降りるリアムに小さく手を振った。
「メールするから待機してなさいよ」
「分かった」
リアムが執務エリアへと戻ると中は閑散としていたが、祐介と木佐ちゃんだけはいた。祐介がリアムを見た瞬間、立ち上がる。
「サツキちゃん!」
それを見て、木佐ちゃんはやれやれといった風に笑った。この二人は何か話していたのだろうかと思い、普段食事を一緒に取っている相手がいなかったので、残った者同士食事をしたのだろうと推測した。
「大丈夫だった!?」
「勿論だ。なかなか面白い人だぞ、あの人は」
「そういうことじゃなくて、ああもうっ」
祐介が駆け寄ってきてリアムに手を伸ばそうとして、そこに木佐ちゃんがいることを思い出したのだろう。ぐ、と拳を握り締めると、寸止めした。
すると、くすっと笑った木佐ちゃんが、歯ブラシが入ったポーチを手に持ち、すっと立ち上がった。
「私、ちょっと歯磨きしに行ってくるから」
「あ……」
祐介が、きまりが悪そうに木佐ちゃんを見ると、木佐ちゃんが大人の余裕の笑みを見せて言った。
「早くしないと他の人が戻ってきちゃうわよ」
「!!」
木佐ちゃんが受付のすりガラスの奥に消えた瞬間、祐介がガバッとリアムを胸に抱き寄せた。
「祐介? どうした」
会社では接触してはならない、と言っていたのは祐介である。言った本人が自らそれを破ってどうするのだ。
「祐介?」
「不安で……!」
祐介の苦しそうな小声が聞こえてきた。それ程に羽田が彷徨いていないか心配だったのだろうか。酒を身体に入れていない昼間であれば、さすがにあの時の様なことはしないだろうに。だが万が一の為に潮崎を見張りに付けてもらったので、それでも不安になるのはさすがに行き過ぎではないか。そうリアムが危ぶんでいると。
「傍にいない時に消えちゃいそうになったらどうしようって、もうそればっかりが頭に浮かんで離れなくて……!」
リアムはハッとした。なんと祐介が心配していたのは、羽田の件ではなかったらしい。リアムはてっきりそちらだとばかり思っていたが、確かに羽田の件でなければいくら潮崎を見張りにつけようが不安は拭えないだろう。
「僕が引き戻さないといけないのに」
「……ん?」
祐介は今、何と言ったか?
「祐介、今のはどういう意味だ?」
すると、ようやく祐介が顔を上げた。まだ興奮が顔に残ってはいるが、大分落ち着きを取り戻した様だ。
「今の? 僕が引き戻すって話?」
リアムは頷いた。祐介には、祐介がこちらの世界にリアムを繋ぎ止めている一つの要因であろうという推測はまだ話していない。従って、これは祐介が祐介個人で導き出した考えなのだろうが。
「何故そう思うのだ?」
すると、祐介はあっけらかんとして言った。
「だって、僕が呼びかけると君はちゃんと戻ってくるでしょ」
「戻ってくる……」
確かに温泉で元の世界のことを考えた時には、存在が薄くなっている様に感じる様なことを祐介は語っていた。
「だから、それって僕の役割なのかなって」
祐介はそう言うと、にっこりと笑った。
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