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第三章 上級編開始
第512話 OLサツキの上級編、フレイのダンジョン地下十二階での着替え
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地下十三階へと続く階段の手前に安全地帯があったので、そこでひと息つくウルスラとアールに、ユラがこれから行なうことを説明した。
「じゃあ、私も水着だけになって水着をしっかりと見せた方がいいわね」
と、ウルスラが請け負った。すると、アールの顔が輝いた。上半身裸なので、何だか色気も凄い。
「俺、それ見たい」
そして、悲しくなる程に自分の欲求に忠実だ。こんなにストレートに言われたら、ウルスラは嫌がるんじゃないか。そう思ってハラハラして見ていたところ、ウルスラは照れて少し怒った様な顔をしつつ、言った。
「ま、まあ見るだけならいいわよっちょっとだけだけどね!」
「本当か!? 嬉しいよ!」
水着姿を見せてもらえると言われて、ここまで開けっ広げに本人の前で喜べるのも珍しい。でも確かに、ここまで真っ直ぐに好きだと表現されたら、相手が嫌な人間でなければそれは嬉しいだろう。しかもこの二人はキスまでした仲だ。
つまり、ウルスラはこのアールの熱意に絆されてきているんじゃないか。
サツキは法衣を広げているユラを盗み見た。何でもない様な顔をしているが、本心では何を思っているんだろう。好きな人の自分以外の人への猛烈アプローチを目の前でまざまざと見せられて、辛くない筈がない。
アールに全くアプローチしないユラの気持ちを思うと、サツキの胸の奥がズキンと痛んだ。
ユラは、この恋が成就しなかったらどうするのだろうか。このまま同じパーティーで、好きな人が他の人と幸せに過ごすのを見続けていくのだろうか。
それはまるで、拷問の様にサツキには思えた。
「じゃあサツキ、水着だけになるから、しっかり見てね!」
「う、うん」
いくら同性といえど、水着を見る為に至近距離でほぼ裸を観察する機会など、そうはない。特に親しい友達などおらず、モブ中のモブだったサツキにとって、ウルスラは大人になってからは初めてちゃんと友人と呼べる存在だが、互いにまだ未知の部分も多い。
でも、今朝は裸の付き合いだってした。だから大丈夫、大丈夫よサツキ! サツキは自分を励ました。何が大丈夫なのかは、分かっていない。
すると、アールが言った。
「サツキ、本体はリアムだからって興奮するなよ!」
その言葉で、若干パニックになりかけていた頭がスーッと冷めていくのが分かった。
そうだ、勘違いしていた。あまりにもユラもウルスラもサツキをサツキとして扱ってくれるから、つい忘れていた。
サツキはリアムだ。リアムの魔力のお陰で今こうして元の自分の姿でいることが出来るが、所詮は中途半端でどっちかずな存在に過ぎない。このパーティー内で交差する好意の中に、サツキが入る隙などそもそもないのに、自分がそこにさも入り込んだ様な錯覚を覚えてしまった。
「そうだね、気を付ける」
「ははっ」
帰りたい。初めて思った。
すると、法衣を手に持ち待っていたユラの顔面が、蒼白になった。法衣を床に放り投げ、サツキの元にツカツカと寄ってくると、肩を掴みサツキを揺さぶった。
「サツキ!!」
「……なに」
顔の表面に偽物の笑顔を貼りつけて、サツキはユラを見上げた。
「痛いよ、離して」
目を合わせていられなくて目を逸らすと、ユラはサツキを肩に担ぎ上げてしまった。
「え? ちょっとユラ」
「お前は黙ってろ!」
そしてそのままアールの前に立った。
「言っていいことと悪いこと位分かんねえのか?」
「え? ごめん何?」
ユラがブチっと切れる音がした気がした。
「じゃあ、私も水着だけになって水着をしっかりと見せた方がいいわね」
と、ウルスラが請け負った。すると、アールの顔が輝いた。上半身裸なので、何だか色気も凄い。
「俺、それ見たい」
そして、悲しくなる程に自分の欲求に忠実だ。こんなにストレートに言われたら、ウルスラは嫌がるんじゃないか。そう思ってハラハラして見ていたところ、ウルスラは照れて少し怒った様な顔をしつつ、言った。
「ま、まあ見るだけならいいわよっちょっとだけだけどね!」
「本当か!? 嬉しいよ!」
水着姿を見せてもらえると言われて、ここまで開けっ広げに本人の前で喜べるのも珍しい。でも確かに、ここまで真っ直ぐに好きだと表現されたら、相手が嫌な人間でなければそれは嬉しいだろう。しかもこの二人はキスまでした仲だ。
つまり、ウルスラはこのアールの熱意に絆されてきているんじゃないか。
サツキは法衣を広げているユラを盗み見た。何でもない様な顔をしているが、本心では何を思っているんだろう。好きな人の自分以外の人への猛烈アプローチを目の前でまざまざと見せられて、辛くない筈がない。
アールに全くアプローチしないユラの気持ちを思うと、サツキの胸の奥がズキンと痛んだ。
ユラは、この恋が成就しなかったらどうするのだろうか。このまま同じパーティーで、好きな人が他の人と幸せに過ごすのを見続けていくのだろうか。
それはまるで、拷問の様にサツキには思えた。
「じゃあサツキ、水着だけになるから、しっかり見てね!」
「う、うん」
いくら同性といえど、水着を見る為に至近距離でほぼ裸を観察する機会など、そうはない。特に親しい友達などおらず、モブ中のモブだったサツキにとって、ウルスラは大人になってからは初めてちゃんと友人と呼べる存在だが、互いにまだ未知の部分も多い。
でも、今朝は裸の付き合いだってした。だから大丈夫、大丈夫よサツキ! サツキは自分を励ました。何が大丈夫なのかは、分かっていない。
すると、アールが言った。
「サツキ、本体はリアムだからって興奮するなよ!」
その言葉で、若干パニックになりかけていた頭がスーッと冷めていくのが分かった。
そうだ、勘違いしていた。あまりにもユラもウルスラもサツキをサツキとして扱ってくれるから、つい忘れていた。
サツキはリアムだ。リアムの魔力のお陰で今こうして元の自分の姿でいることが出来るが、所詮は中途半端でどっちかずな存在に過ぎない。このパーティー内で交差する好意の中に、サツキが入る隙などそもそもないのに、自分がそこにさも入り込んだ様な錯覚を覚えてしまった。
「そうだね、気を付ける」
「ははっ」
帰りたい。初めて思った。
すると、法衣を手に持ち待っていたユラの顔面が、蒼白になった。法衣を床に放り投げ、サツキの元にツカツカと寄ってくると、肩を掴みサツキを揺さぶった。
「サツキ!!」
「……なに」
顔の表面に偽物の笑顔を貼りつけて、サツキはユラを見上げた。
「痛いよ、離して」
目を合わせていられなくて目を逸らすと、ユラはサツキを肩に担ぎ上げてしまった。
「え? ちょっとユラ」
「お前は黙ってろ!」
そしてそのままアールの前に立った。
「言っていいことと悪いこと位分かんねえのか?」
「え? ごめん何?」
ユラがブチっと切れる音がした気がした。
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