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第三章 上級編開始
第509話 魔術師リアムの上級編・早川ユメ攻略二日目の昼飯へ出発
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そろそろ昼休みの鐘が鳴る頃だ。
リアムが今日早川ユメと昼食を取ることは、もうこの階の人間に共有されているそうだ。どうやらプロジェクトリーダーの橋本は佐川を実行委員として採用した様で、全員への連絡は佐川が行っているらしい。
「……早川さんがここに来るんだったよね?」
佐川がこそっと話しかけてきたのでリアムが頷くと、佐川は親指を突き立ててニカッと笑い座席へ戻って行った。
先程の木佐ちゃんの話が気になった訳ではないが、そんなにチラチラよく見てるのだろうかとふと気になり、そおっと祐介を見てみると。
明らかにリアムを見ていたであろう祐介と、目が合った。目が合った瞬間に祐介は笑顔になったが、これはどう見ても目が笑っていない。どうした祐介よ。
「近い」
ひと言、小さな声でそう言った。
リアムの脳裏に、先程の木佐ちゃんの言葉が浮かんだ。嫉妬だ。だがいやまさかそんなことはなかろう。あり得ない。リアムは心の中で否定をした。そもそも祐介とリアムは恋人のふりをしているだけだし、とするとこれも嫉妬のふりであろうか。
「大きな声で話すことでもなかろう」
「隙があり過ぎる」
「それは少し私を舐め過ぎではないか?」
「だってそうでしょ」
「そんなことはない!」
「いーやそんなことはある!」
段々と声が大きくなる二人の視線の間に、書類が滑り込んできた。リアムも祐介も、ハッとしてその書類の持ち主を見る。
冷めた顔をした木佐ちゃんだった。そして言った。
「ここは職場。痴話喧嘩をする場所じゃない」
「……すみません」
「す、すまない木佐ちゃん殿」
木佐ちゃんが呆れた様に笑ったその時、丁度昼休みを知らせる鐘が鳴った。リアムは急ぎ鞄を持ち立ち上がると、祐介の視線が自分を追うのが分かった。祐介はただ心配なのだ、それは痛い程分かった。
足を組みながら、木佐ちゃんが立ち上がりかけた祐介を見上げた。木佐ちゃんは、どうやら少し苛ついている様だ。
「あんたはここに残る」
祐介の頬がひく、と引き攣った。木佐ちゃんがにこ、とリアムに笑いかけると、受付に目線を送った。
そこには、眉を顰めながらこちらを見ている早川ユメがいた。
「いってらっしゃい」
「……うむ」
リアムも笑顔になり会釈をすると、早川ユメの元へと駆け寄った。
「なになに、三階ってこんな殺伐とした雰囲気な訳? こわっ」
「すまぬ、今回は私の所為だ。さて何を食べようか?」
リアムと早川ユメは、言葉を交わしながらエレベーターへと乗り込んだ。さりげなく潮崎も一緒に。
一方、木佐ちゃんに引き止められてしまった祐介は、蛇に睨まれた蛙の様に動けずにいた。
「まだ立っちゃ駄目」
木佐ちゃんに言われ、思い切り不機嫌な表情になったが、それでも席についた。
「僕もお昼に行きたいんですけど」
「あら奇遇ね、私もなのよ。今日は丁度一人でね」
木佐ちゃんがしれっと言う。
「もう少し後で一緒に行きましょうか」
「……それは監視ですか」
「あのねえ……」
はあ、と木佐ちゃんが溜息をついて手で額を覆う。
「加減を誤ると逃すわよ」
その言葉に、祐介は唇を噛み締め、そしてポツリと言った。
「僕もそう思っているところです」
「なら耐えなさいよ」
「それ、どうしたら出来るんですか」
木佐ちゃんが、驚いた様な表情で祐介を見返す。
「……まるで初恋みたいな言い方ね」
今度は祐介が驚いた表情になる番だった。
「初恋……これが?」
驚く祐介を、木佐ちゃんも驚いた表情で見つめ返したのだった。
リアムが今日早川ユメと昼食を取ることは、もうこの階の人間に共有されているそうだ。どうやらプロジェクトリーダーの橋本は佐川を実行委員として採用した様で、全員への連絡は佐川が行っているらしい。
「……早川さんがここに来るんだったよね?」
佐川がこそっと話しかけてきたのでリアムが頷くと、佐川は親指を突き立ててニカッと笑い座席へ戻って行った。
先程の木佐ちゃんの話が気になった訳ではないが、そんなにチラチラよく見てるのだろうかとふと気になり、そおっと祐介を見てみると。
明らかにリアムを見ていたであろう祐介と、目が合った。目が合った瞬間に祐介は笑顔になったが、これはどう見ても目が笑っていない。どうした祐介よ。
「近い」
ひと言、小さな声でそう言った。
リアムの脳裏に、先程の木佐ちゃんの言葉が浮かんだ。嫉妬だ。だがいやまさかそんなことはなかろう。あり得ない。リアムは心の中で否定をした。そもそも祐介とリアムは恋人のふりをしているだけだし、とするとこれも嫉妬のふりであろうか。
「大きな声で話すことでもなかろう」
「隙があり過ぎる」
「それは少し私を舐め過ぎではないか?」
「だってそうでしょ」
「そんなことはない!」
「いーやそんなことはある!」
段々と声が大きくなる二人の視線の間に、書類が滑り込んできた。リアムも祐介も、ハッとしてその書類の持ち主を見る。
冷めた顔をした木佐ちゃんだった。そして言った。
「ここは職場。痴話喧嘩をする場所じゃない」
「……すみません」
「す、すまない木佐ちゃん殿」
木佐ちゃんが呆れた様に笑ったその時、丁度昼休みを知らせる鐘が鳴った。リアムは急ぎ鞄を持ち立ち上がると、祐介の視線が自分を追うのが分かった。祐介はただ心配なのだ、それは痛い程分かった。
足を組みながら、木佐ちゃんが立ち上がりかけた祐介を見上げた。木佐ちゃんは、どうやら少し苛ついている様だ。
「あんたはここに残る」
祐介の頬がひく、と引き攣った。木佐ちゃんがにこ、とリアムに笑いかけると、受付に目線を送った。
そこには、眉を顰めながらこちらを見ている早川ユメがいた。
「いってらっしゃい」
「……うむ」
リアムも笑顔になり会釈をすると、早川ユメの元へと駆け寄った。
「なになに、三階ってこんな殺伐とした雰囲気な訳? こわっ」
「すまぬ、今回は私の所為だ。さて何を食べようか?」
リアムと早川ユメは、言葉を交わしながらエレベーターへと乗り込んだ。さりげなく潮崎も一緒に。
一方、木佐ちゃんに引き止められてしまった祐介は、蛇に睨まれた蛙の様に動けずにいた。
「まだ立っちゃ駄目」
木佐ちゃんに言われ、思い切り不機嫌な表情になったが、それでも席についた。
「僕もお昼に行きたいんですけど」
「あら奇遇ね、私もなのよ。今日は丁度一人でね」
木佐ちゃんがしれっと言う。
「もう少し後で一緒に行きましょうか」
「……それは監視ですか」
「あのねえ……」
はあ、と木佐ちゃんが溜息をついて手で額を覆う。
「加減を誤ると逃すわよ」
その言葉に、祐介は唇を噛み締め、そしてポツリと言った。
「僕もそう思っているところです」
「なら耐えなさいよ」
「それ、どうしたら出来るんですか」
木佐ちゃんが、驚いた様な表情で祐介を見返す。
「……まるで初恋みたいな言い方ね」
今度は祐介が驚いた表情になる番だった。
「初恋……これが?」
驚く祐介を、木佐ちゃんも驚いた表情で見つめ返したのだった。
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