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第三章 上級編開始

第504話 OLサツキの上級編、フレイのダンジョン地下十一階の追加能力

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 ウルスラとアールの華麗な攻撃で、ファイヤーウルフ二匹はあっさりと倒された。食事用に狩る場合は倒されたモンスターの身体は残るのに、今回はサア……! と灰の様に散っていってしまった。

「ユラ、何で今回は身体が残らなかったの?」
「ああ、あれはな、こちら側に食べる気がないと勝手に浄化されて次の生に備える、と言われてる」
「食べる気がないと? それどうやって分かるんだろう?」
「訓練所では謎とされてたけど、リュシカ曰く、そもそもの運命でより引きの強い方に引かれていく結果、とか難しいことを言ってたぜ。まあ俺は目に見えないものは信じないから、へえーって程度にしか思わなかったけどな」

 運命でより引きの強い方に引かれていく。リュシカが語っていた、未来へと続く選択肢のことだろうか。複数ある選択肢を自分で選び取ることによって未来に導かれる。だがこの言い方だと、予めある程度未来は決まっていたかの様だ。

「私も、ここに来る運命だったのかな?」

 すると、ユラがあっさりと言った。

「俺は運命なんて信じねえぞ」
「どうして?」
「俺は俺の未来は自分で手繰り寄せるからだ。運命に翻弄なんてされてたまるか」
「ユラ……」

 そうか、ユラは夢を追って裕福な実家を飛び出したのだ。それこそ全てをかなぐり捨て。

「ユラは凄いな」
「は?」
「自分で選んだでしょ、ちゃんと」

 ユラは返事はせず、静かにサツキを見つめている。サツキは今までずっと流されていた。せめて自分の身は守ろうとそれだけは頑なに努力したが、周りに翻弄され、この世界にだってなすがままに来て。

「私もそうなりたい」

 サツキは、今初めて未来に目を向けたかもしれなかった。

「これからは、自分で選び取って道を進んで行きたい」
「……おう」

 ユラの目が、微笑む様に柔らかくなった。

 これはユラが教えてくれたことだ。ユラが隣にいて、自信を持て、大丈夫だと言い続けてくれたからだ。

「ユラ、ありがとうね」
「俺?」
「うん。ユラのお陰」
「なんかよく分かんねえけど、どう致しまして」

 二人、にこにこと笑顔を交わしていると。

「おおおお!」

 ウルスラのはしゃぐ声がした。サツキ達が先程ファイヤーウルフがいた辺りにしゃがみ込んでいるウルスラの元に駆け足で近寄ると、ウルスラの手にあったのは一粒の小石。綺麗なオレンジ色に揺らめいている。

「炎の石じゃねえか」
「凄くない!? しかも二つよ!」

 ウルスラは大はしゃぎだ。高価な物なのだろうか。

「サツキの二つ名の効果は多少あるにしても、追加能力の効果……ではなさそう?」

 ユラが首を傾げると、ウルスラが立ち上がって膝の土埃をはたきつつ、尋ねる。

「サツキの追加能力?」
「ああ」

 ユラは先程の推測をウルスラ達にも話した。すると、それまでぽやっと話をただ聞いていたアールが、珍しくまともな意見を述べた。

「なあそれって、ウルスラの追加能力って可能性はないのか?」
「私の?」
「確かにウルスラの追加能力はまだ分かってないもんな。金にがめついウルスラならではの能力と考えれば」
「あんた殺されたいの?」

 ウルスラの殺気を感じたユラは、さっとサツキの背後に隠れた。

「でもこのままモンスターがアイテムを落としまくったら、かなりその確率が高いってことだな」
「じゃあ、私がじゃんじゃん前衛で倒せばアイテムゲットってことね!」
「とりあえずやってみるか!」
「頑張ってウルスラ!」
「頑張る!」

 ウルスラは、拳を握り締めて頷いた。
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