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第三章 上級編開始
第499話 魔術師リアムの上級編・早川ユメ攻略二日目開始
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夕食の後は、各々風呂に入り支度を終えた後、いつもの如く祐介がリアムの髪の毛を乾かしてくれた。そしてこれまたいつもの如く、祐介が髪の匂いを存分に嗅いだ後、祐介が広げる腕の中に包み込まれる様にしてベッドに横になった。祐介の服は洗いたてのさっぱりしたいい匂いがして、それが祐介の体温と合わさり、心の底から安堵を覚えた。
その夜は、祐介の方が先に寝てしまった。だからリアムは祐介の寝顔を見ることにした。気持ちよさそうにリアムに抱きつきながら寝るその姿は、日頃の祐介よりも幼く見える。
好きだと言ったら、こいつはどんな顔をするのだろう。
祐介がリアムをこの世界に引き留めていると伝えたら、喜ぶだろうか、それとも慄くだろうか。
リアムは祐介にこのまま甘えていていいのだろうか。
祐介のこの執着は、出来た絆だけに寄るものなのか、それともそこには多少なりとも愛情があるのだろうか。
祐介は何故リアムの名を呼ばないのか。リアムはここにいるのに、まるで自分がサツキの偽物としか見られていない気がしてならない。リアムとして見て欲しいと告げたら、祐介はリアムを受け入れるだろうか。それとも突き放すのだろうか。
全て、知りたい様で知りたくないことばかりだ。
「……おやすみ」
リアムは寝ている祐介に向かいそう呟くと、ゆっくりと目を閉じた。
◇
翌朝は、祐介に起こされた。床に座り、リアムを横からにこにこと眺めている。
「サツキちゃんが目覚ましで起きないなんて珍しいね」
まだぼうっとしているリアムの頬に付く横髪を、指でそっと払った。
「昨夜、なかなか寝付けなくてな」
「そうだったの? 僕、いびきかいてなかった?」
祐介はやや不安そうにそう尋ねる。どうやら自分が原因でリアムが寝付けなかったのではないかと心配しているらしい。可愛い奴だ。だが祐介はいびきはかかない。涎は垂らすが。
「大丈夫だと思うぞ」
すると、祐介がまだ寝転がったままのリアムの腹の上に頭を置き、上目遣いでリアムを見つめた。その祐介の行動に、リアムの心臓が一瞬大きく飛び跳ねた。何だ何だ、この甘えっぷりは。そうか、甘えるとはこういうことなのだ。こういった甘える行動を今までしてこなかったから、だからリアムは女性にもてなかったのかもしれない。男たるもの強くあれと思うのも、時と場合によるのだろう。もっと早い段階で知りたかった。
「僕の所為で寝れなかった?」
「そうではない。祐介の所為ではないから」
「本当? 嫌だなってことがあったらちゃんと言ってよ」
ある。一つある。正確には嫌なことではなく、して欲しいことだ。でもそれは言えない。今言ってしまってもし全てが崩れてしまったら、羽田はおろか、早川ユメにすら立ち向かう勇気がなくなりそうだった。
だから今は言えない。
「分かった」
「ちゃんとだよ?」
「……ああ」
祐介はリアムの腹の上からどかない。リアムも起き上がらない。ずっとこうしていられたらいいのにと、リアムは思っている。もし祐介も同じ気持ちだったらいいのに、と思った。
でもそれは思ったとしてもサツキにだろうことも分かっていた。
だから、それも口に出すことは止めた。
その夜は、祐介の方が先に寝てしまった。だからリアムは祐介の寝顔を見ることにした。気持ちよさそうにリアムに抱きつきながら寝るその姿は、日頃の祐介よりも幼く見える。
好きだと言ったら、こいつはどんな顔をするのだろう。
祐介がリアムをこの世界に引き留めていると伝えたら、喜ぶだろうか、それとも慄くだろうか。
リアムは祐介にこのまま甘えていていいのだろうか。
祐介のこの執着は、出来た絆だけに寄るものなのか、それともそこには多少なりとも愛情があるのだろうか。
祐介は何故リアムの名を呼ばないのか。リアムはここにいるのに、まるで自分がサツキの偽物としか見られていない気がしてならない。リアムとして見て欲しいと告げたら、祐介はリアムを受け入れるだろうか。それとも突き放すのだろうか。
全て、知りたい様で知りたくないことばかりだ。
「……おやすみ」
リアムは寝ている祐介に向かいそう呟くと、ゆっくりと目を閉じた。
◇
翌朝は、祐介に起こされた。床に座り、リアムを横からにこにこと眺めている。
「サツキちゃんが目覚ましで起きないなんて珍しいね」
まだぼうっとしているリアムの頬に付く横髪を、指でそっと払った。
「昨夜、なかなか寝付けなくてな」
「そうだったの? 僕、いびきかいてなかった?」
祐介はやや不安そうにそう尋ねる。どうやら自分が原因でリアムが寝付けなかったのではないかと心配しているらしい。可愛い奴だ。だが祐介はいびきはかかない。涎は垂らすが。
「大丈夫だと思うぞ」
すると、祐介がまだ寝転がったままのリアムの腹の上に頭を置き、上目遣いでリアムを見つめた。その祐介の行動に、リアムの心臓が一瞬大きく飛び跳ねた。何だ何だ、この甘えっぷりは。そうか、甘えるとはこういうことなのだ。こういった甘える行動を今までしてこなかったから、だからリアムは女性にもてなかったのかもしれない。男たるもの強くあれと思うのも、時と場合によるのだろう。もっと早い段階で知りたかった。
「僕の所為で寝れなかった?」
「そうではない。祐介の所為ではないから」
「本当? 嫌だなってことがあったらちゃんと言ってよ」
ある。一つある。正確には嫌なことではなく、して欲しいことだ。でもそれは言えない。今言ってしまってもし全てが崩れてしまったら、羽田はおろか、早川ユメにすら立ち向かう勇気がなくなりそうだった。
だから今は言えない。
「分かった」
「ちゃんとだよ?」
「……ああ」
祐介はリアムの腹の上からどかない。リアムも起き上がらない。ずっとこうしていられたらいいのにと、リアムは思っている。もし祐介も同じ気持ちだったらいいのに、と思った。
でもそれは思ったとしてもサツキにだろうことも分かっていた。
だから、それも口に出すことは止めた。
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