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第三章 上級編開始
第473話 魔術師リアムの上級編の魔法陣完成へ
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何とか祐介を説得し解放してもらうと、リアムは流れ落ちた血を洗い流すと同時に、冷え切った身体を再度シャワーのお湯で温め直した。今頃は、祐介も自分の家に戻り着替えている筈だ。リアムが必ずそうしろと言ったから、するだろう。
しかし参った。祐介がここまで執着するとは思ってもみなかったのだ。勿論リアムは祐介が好きだ。あの柔和なところも、時折少し偉ぶるところも、叱られてしゅんとした後にちゃんと反省するところも、かと思うとリアムの家来かの様に何でも代わりにやってみせようとするところも、リアムが楽しむと祐介も楽しそうな顔をするところも、全部。
祐介はあの笑顔で全部誤魔化せると思っているのかもしれないが、祐介よりも二十年近く長く生きてきたリアムにとって、人の笑顔が本物かどうかの区別はつく。始めの頃の祐介の笑顔は、殆どが嘘の笑顔だった。頑張って作っているのがバレバレだったが、互いに信頼関係など築いていない段階であれば至極当然のことであろう。
それが変わったのは、あの説教の時からか。柔和な読めない男が、ノーブラで白いTシャツで彷徨くなとリアムを叱ったあの時から、祐介は感情を表に出すようになっていったと同時に、段々と祐介からの接触も増えていった。そこから、互いに少しずつ感情をさらけ出し合い、今では喧嘩まで出来る様になったのだから不思議なものだ。
リアムがいつか帰る可能性があることを、あの男は全く考えなかったのか。来ることが出来たのだ、帰る可能性もあると考えるのが普通であろうに。
だが、恐らく考えなかったのだ。これは予測だが、リアムの気配が濃かった為ではないかと思われる。こちらの世界にリアムを固定する方法がどういったものかについては今後更なる考察が必要であろうが、暫くの間は祐介は一切リアムに先程の様な態度をしてみせなかったことを考えると、リアムはしっかりとここにいたのだろう。
最近になって、リアムが元の世界のことを考えることが増えた為、それで祐介がそれに気付き慌て出したに違いない。
リアムも、出来ればずっと祐介といたい。あの男が今後どういった選択をし、どう一人前に育っていくのかを横で見守っていきたいと思う。だが、それには祐介がずっとリアムをこの世界に縛り付けておく必要がある。
何を判断するにも、もう少し情報が欲しかった。
リアムが考えながら夜着を着、頭にタオルを巻いて風呂場から出ると、祐介が床に座って魔法陣を描いているところだった。服が変わっているので、急いで着替えて戻ってきたのだろう。
リアムが後ろから覗き込むと、何とも綺麗に描かれた魔法陣が二つ床に広げられていた。
「祐介、お前はまさか、それを道具なしに描いたというのか?」
「道具っていうか、定規は半径を測るのに使ったけど、同じ長さの所に印を打って、それで線でつなげたからかなり正確な円になってると思うよ」
「うん?」
意味がさっぱり分からなかった。すると、祐介がくすっと笑った。
「サツキちゃんこういうの苦手そうだもんね。あの歪な円を見たら分かったけど、絵とか描いても酷そう」
今日の祐介は、随分と意地悪な祐介であった。
しかし参った。祐介がここまで執着するとは思ってもみなかったのだ。勿論リアムは祐介が好きだ。あの柔和なところも、時折少し偉ぶるところも、叱られてしゅんとした後にちゃんと反省するところも、かと思うとリアムの家来かの様に何でも代わりにやってみせようとするところも、リアムが楽しむと祐介も楽しそうな顔をするところも、全部。
祐介はあの笑顔で全部誤魔化せると思っているのかもしれないが、祐介よりも二十年近く長く生きてきたリアムにとって、人の笑顔が本物かどうかの区別はつく。始めの頃の祐介の笑顔は、殆どが嘘の笑顔だった。頑張って作っているのがバレバレだったが、互いに信頼関係など築いていない段階であれば至極当然のことであろう。
それが変わったのは、あの説教の時からか。柔和な読めない男が、ノーブラで白いTシャツで彷徨くなとリアムを叱ったあの時から、祐介は感情を表に出すようになっていったと同時に、段々と祐介からの接触も増えていった。そこから、互いに少しずつ感情をさらけ出し合い、今では喧嘩まで出来る様になったのだから不思議なものだ。
リアムがいつか帰る可能性があることを、あの男は全く考えなかったのか。来ることが出来たのだ、帰る可能性もあると考えるのが普通であろうに。
だが、恐らく考えなかったのだ。これは予測だが、リアムの気配が濃かった為ではないかと思われる。こちらの世界にリアムを固定する方法がどういったものかについては今後更なる考察が必要であろうが、暫くの間は祐介は一切リアムに先程の様な態度をしてみせなかったことを考えると、リアムはしっかりとここにいたのだろう。
最近になって、リアムが元の世界のことを考えることが増えた為、それで祐介がそれに気付き慌て出したに違いない。
リアムも、出来ればずっと祐介といたい。あの男が今後どういった選択をし、どう一人前に育っていくのかを横で見守っていきたいと思う。だが、それには祐介がずっとリアムをこの世界に縛り付けておく必要がある。
何を判断するにも、もう少し情報が欲しかった。
リアムが考えながら夜着を着、頭にタオルを巻いて風呂場から出ると、祐介が床に座って魔法陣を描いているところだった。服が変わっているので、急いで着替えて戻ってきたのだろう。
リアムが後ろから覗き込むと、何とも綺麗に描かれた魔法陣が二つ床に広げられていた。
「祐介、お前はまさか、それを道具なしに描いたというのか?」
「道具っていうか、定規は半径を測るのに使ったけど、同じ長さの所に印を打って、それで線でつなげたからかなり正確な円になってると思うよ」
「うん?」
意味がさっぱり分からなかった。すると、祐介がくすっと笑った。
「サツキちゃんこういうの苦手そうだもんね。あの歪な円を見たら分かったけど、絵とか描いても酷そう」
今日の祐介は、随分と意地悪な祐介であった。
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