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第三章 上級編開始
第472話 OLサツキの上級編、フレイのダンジョン地下十階・暗闇からの脱出
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ユラの唇は、今はサツキの口の横辺りにあるのが分かった。暖かくて、気が狂いそうになる。
「虚しいってなんだよ。何で虚しくなるんだよ」
「言いたくないから言わない」
「サツキ、怒ったのならごめん。謝るから行くなよ」
「いや、なんかブラインドの中暑いし、どちらにしろそろそろ上がるから」
「何か冷たいな。やっぱり怒ってないか? 俺だってさすがに見えないとよく分かんねえし」
「何が?」
「……何でもねえ」
また隠し事だ。これもあれだろう、サツキに自信が付いたら話すと言っていたものに違いない。つまり、ユラの判断は、サツキはまだまだだということだ。
「戻って、お酒飲んで、寝る」
「……それに付き合っていいか?」
「お酒だけね」
「それでもいいから」
ユラの少し甘える様な声色に、サツキはつい先程までユラに冷たく当たっていたことを少し後悔し始めていた。
考えてみれば、今正にアールの気持ちがウルスラに向きかけていることに、このユラが気付かない筈はない。それ位、アールの態度はあからさまだ。
それでもそれについて何も言わずにいるのは、ユラなりに気持ちの整理をつけようとしているからなのではないか。
それでもどうしても伴う寂しさを、サツキによって埋めようとしているのでは。だからこんなにも離れたがらないのではないか。
そう思った途端、ユラの自分勝手さを許してあげたいと思う自分にまた幻滅する。
「……上がろうよ」
「じゃあ、迷子にならない様に抱き上げて行くから、首にしがみついておけ」
「え? いやいいよ自分で行けるから」
そもそも先程転んだのはユラの方だ。すると、ユラが小さく笑った。
「さっき怖がってた癖によく言うぜ」
「あれは、その、方向が分からなくなってたから」
「ブラインドから出たらすぐに降ろして、お前を見ない様にするから」
「でも」
「いいから」
ユラはそう言うと、サツキのもも裏に手を伸ばし、ジャバッと立ち上がった。
「掴まれって」
掴まらないと、確かに重そうではある。サツキが恐る恐る首に手を回すと、ユラがサツキの目のうえ辺りに頬をぐりぐり擦り寄せてきた。これは一体どういう意味だろうか。
ジャブジャブと、ユラが歩いて行く。もうあちこち密着し過ぎていてもう何が何だかなパニック状態のサツキだったが、幸い見えない。心を無にするの、無よ、サツキ!
ユラが懐かしそうに言った。
「春祭りの時もこうやって俺んちに連れて帰ったのが、もう懐かしいよ」
「あの時は、ご迷惑お掛けしました……」
「裸だしさ」
「いや本当それはもう勘弁して」
「俺、こう見えても結構紳士だろ?」
ユラが何かを言い出した。
「えーと」
「裸を見ても手は出してないじゃねえか」
「いやまあそれはそうだけども」
「俺もよく我慢してると思う」
自分を褒め出した。さすがはユラだ。
「だからさ……おっと」
何の前触れもなく、ブラインドの黒煙から出た。
「あれ、方向が真逆だったな」
「ちょっちょっとユラ、もう降ろしてっ」
サツキの裸もユラの裸も、互いに丸見えになってしまっている。すると、ユラが提案した。
「今降ろして歩いて行ったら、俺は見るぜ」
「うう」
「だから、見られない位身体を密着させとけ。俺もまあなるべく見ないようにはしてやるから」
「ひいいっ」
サツキが慌ててユラに更にしがみつくと、ははっと笑ったユラが、ちゅ、と小さくキスをした。
「虚しいってなんだよ。何で虚しくなるんだよ」
「言いたくないから言わない」
「サツキ、怒ったのならごめん。謝るから行くなよ」
「いや、なんかブラインドの中暑いし、どちらにしろそろそろ上がるから」
「何か冷たいな。やっぱり怒ってないか? 俺だってさすがに見えないとよく分かんねえし」
「何が?」
「……何でもねえ」
また隠し事だ。これもあれだろう、サツキに自信が付いたら話すと言っていたものに違いない。つまり、ユラの判断は、サツキはまだまだだということだ。
「戻って、お酒飲んで、寝る」
「……それに付き合っていいか?」
「お酒だけね」
「それでもいいから」
ユラの少し甘える様な声色に、サツキはつい先程までユラに冷たく当たっていたことを少し後悔し始めていた。
考えてみれば、今正にアールの気持ちがウルスラに向きかけていることに、このユラが気付かない筈はない。それ位、アールの態度はあからさまだ。
それでもそれについて何も言わずにいるのは、ユラなりに気持ちの整理をつけようとしているからなのではないか。
それでもどうしても伴う寂しさを、サツキによって埋めようとしているのでは。だからこんなにも離れたがらないのではないか。
そう思った途端、ユラの自分勝手さを許してあげたいと思う自分にまた幻滅する。
「……上がろうよ」
「じゃあ、迷子にならない様に抱き上げて行くから、首にしがみついておけ」
「え? いやいいよ自分で行けるから」
そもそも先程転んだのはユラの方だ。すると、ユラが小さく笑った。
「さっき怖がってた癖によく言うぜ」
「あれは、その、方向が分からなくなってたから」
「ブラインドから出たらすぐに降ろして、お前を見ない様にするから」
「でも」
「いいから」
ユラはそう言うと、サツキのもも裏に手を伸ばし、ジャバッと立ち上がった。
「掴まれって」
掴まらないと、確かに重そうではある。サツキが恐る恐る首に手を回すと、ユラがサツキの目のうえ辺りに頬をぐりぐり擦り寄せてきた。これは一体どういう意味だろうか。
ジャブジャブと、ユラが歩いて行く。もうあちこち密着し過ぎていてもう何が何だかなパニック状態のサツキだったが、幸い見えない。心を無にするの、無よ、サツキ!
ユラが懐かしそうに言った。
「春祭りの時もこうやって俺んちに連れて帰ったのが、もう懐かしいよ」
「あの時は、ご迷惑お掛けしました……」
「裸だしさ」
「いや本当それはもう勘弁して」
「俺、こう見えても結構紳士だろ?」
ユラが何かを言い出した。
「えーと」
「裸を見ても手は出してないじゃねえか」
「いやまあそれはそうだけども」
「俺もよく我慢してると思う」
自分を褒め出した。さすがはユラだ。
「だからさ……おっと」
何の前触れもなく、ブラインドの黒煙から出た。
「あれ、方向が真逆だったな」
「ちょっちょっとユラ、もう降ろしてっ」
サツキの裸もユラの裸も、互いに丸見えになってしまっている。すると、ユラが提案した。
「今降ろして歩いて行ったら、俺は見るぜ」
「うう」
「だから、見られない位身体を密着させとけ。俺もまあなるべく見ないようにはしてやるから」
「ひいいっ」
サツキが慌ててユラに更にしがみつくと、ははっと笑ったユラが、ちゅ、と小さくキスをした。
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