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第三章 上級編開始
第471話 魔術師リアムの上級編の魔法陣作成本番中、風呂終了
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段々と身体が冷えてきた。リアムに縋り付いていた祐介の身体の震えは、少しずつ治っていった。
リアムは今はもう分かっていた。祐介のこの恐怖に対する発作の様なものは、リアムが元の世界のことを強く思い出す時に起こる。祐介がリアムをこの世界に繋ぎ止めている要因の一つならば、リアムが元の世界のことを考えるとこちらでの存在が希薄になると考えるのが妥当だろう。
時折感じていたことだったが、やはりサツキとリアムはまだ繋がっていたのだ。だから事あるごとに戻ろうとする。恐らくこれはあちらも同様なのではないか。
考えねばならぬことはまだまだあったが、だがしかしこのままだとリアムも祐介も風邪を引く。リアムは、祐介に声を掛けた。
「祐介、身体が冷えてきてしまったので、そろそろ離してはくれぬか」
「……約束してよ」
「何をだ? お前も着替えねば風邪を引くぞ」
「もう次こそ考えないって約束してよ。だってまた考えたでしょ、元の世界のことを」
「魔法陣のことについて考えていただけだ」
「それは嘘だ」
祐介が顔を上げた。顔は涙でぐしゃぐしゃで、祐介にこんな顔をさせてしまったのは自分だ。咄嗟についた嘘だったが、あっさりと見破られてしまった。何故分かったのだろうか。
「さっき魔法陣を描いてる時はちゃんとそこにいたから、今君が言っていることは嘘だ」
「祐介……」
泣いてはいても、祐介は冷静だった。あの笑顔に人は騙されていそうだが、元はそこそこ計算高そうな男だ。多少混乱していても、話の筋がおかしいことにはすぐに気付いてしまうのだろう。
「どうして嘘をつくの」
「祐介、私は……」
「ここにいてって言ってるじゃないか、なのに何で」
「……祐介、逆に私が聞きたい」
「なに」
祐介は怒るだろうか、それとも何も感じないだろうか。リアムは疑問を口にした。
「私がいなくなって、祐介に何の問題があるのだ」
すると、祐介の顔色がサアッと青くなった。
「サツキが戻って来れば、お前もこの四六時中私の面倒を見る生活から解放されるだろうに」
「どうして!!」
祐介が、リアムの肩を揺さぶった。その顔には、傷ついていると書いてあった。
「どうして君はいつもそうやって達観したことを言うんだよ! 僕が迷惑だなんて一度でも言った!? ここにいてって言ってるだろ!!」
祐介が怒鳴った。どこからか、ドンドン! と壁を叩く音がした。うるさい、ということらしい。
どう言えば伝わるだろうか。やはり祐介との絆があるであろうことは、話さねばならないだろうか。だが、出来ればもうこれ以上祐介に負荷を掛けたくはない。何かいい言葉はないか。
そして、一つ見つけた。非常に狡い言葉だ。だが、真実でもあろうから、これなら。
「祐介、約束しよう」
「……今度こそ本当?」
祐介が、今にもまた泣き出しそうな顔でリアムの頰に触れた。
「約束する。祐介が私への興味を失うその日までは、共にいると」
「興味を失うことなんてない」
「未来のことは分からない、祐介。私だって、まさかドラゴンに焼かれてここに来るなど想像もしていなかったのだからな」
「……だけど」
「祐介」
リアムも、濡れた手で祐介の頬に触れてみた。涙と水が混じり合っていく。
「これは約束だ。違えることはない」
リアムがそう言うと、祐介はまた肩を震わせながら、リアムに縋り付くかの様に抱き締めたのだった。
リアムは今はもう分かっていた。祐介のこの恐怖に対する発作の様なものは、リアムが元の世界のことを強く思い出す時に起こる。祐介がリアムをこの世界に繋ぎ止めている要因の一つならば、リアムが元の世界のことを考えるとこちらでの存在が希薄になると考えるのが妥当だろう。
時折感じていたことだったが、やはりサツキとリアムはまだ繋がっていたのだ。だから事あるごとに戻ろうとする。恐らくこれはあちらも同様なのではないか。
考えねばならぬことはまだまだあったが、だがしかしこのままだとリアムも祐介も風邪を引く。リアムは、祐介に声を掛けた。
「祐介、身体が冷えてきてしまったので、そろそろ離してはくれぬか」
「……約束してよ」
「何をだ? お前も着替えねば風邪を引くぞ」
「もう次こそ考えないって約束してよ。だってまた考えたでしょ、元の世界のことを」
「魔法陣のことについて考えていただけだ」
「それは嘘だ」
祐介が顔を上げた。顔は涙でぐしゃぐしゃで、祐介にこんな顔をさせてしまったのは自分だ。咄嗟についた嘘だったが、あっさりと見破られてしまった。何故分かったのだろうか。
「さっき魔法陣を描いてる時はちゃんとそこにいたから、今君が言っていることは嘘だ」
「祐介……」
泣いてはいても、祐介は冷静だった。あの笑顔に人は騙されていそうだが、元はそこそこ計算高そうな男だ。多少混乱していても、話の筋がおかしいことにはすぐに気付いてしまうのだろう。
「どうして嘘をつくの」
「祐介、私は……」
「ここにいてって言ってるじゃないか、なのに何で」
「……祐介、逆に私が聞きたい」
「なに」
祐介は怒るだろうか、それとも何も感じないだろうか。リアムは疑問を口にした。
「私がいなくなって、祐介に何の問題があるのだ」
すると、祐介の顔色がサアッと青くなった。
「サツキが戻って来れば、お前もこの四六時中私の面倒を見る生活から解放されるだろうに」
「どうして!!」
祐介が、リアムの肩を揺さぶった。その顔には、傷ついていると書いてあった。
「どうして君はいつもそうやって達観したことを言うんだよ! 僕が迷惑だなんて一度でも言った!? ここにいてって言ってるだろ!!」
祐介が怒鳴った。どこからか、ドンドン! と壁を叩く音がした。うるさい、ということらしい。
どう言えば伝わるだろうか。やはり祐介との絆があるであろうことは、話さねばならないだろうか。だが、出来ればもうこれ以上祐介に負荷を掛けたくはない。何かいい言葉はないか。
そして、一つ見つけた。非常に狡い言葉だ。だが、真実でもあろうから、これなら。
「祐介、約束しよう」
「……今度こそ本当?」
祐介が、今にもまた泣き出しそうな顔でリアムの頰に触れた。
「約束する。祐介が私への興味を失うその日までは、共にいると」
「興味を失うことなんてない」
「未来のことは分からない、祐介。私だって、まさかドラゴンに焼かれてここに来るなど想像もしていなかったのだからな」
「……だけど」
「祐介」
リアムも、濡れた手で祐介の頬に触れてみた。涙と水が混じり合っていく。
「これは約束だ。違えることはない」
リアムがそう言うと、祐介はまた肩を震わせながら、リアムに縋り付くかの様に抱き締めたのだった。
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