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第三章 上級編開始
第470話 OLサツキの上級編、フレイのダンジョン地下十階・暗闇の中の続き
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ユラが思い切りサツキの顎を掴んだ。
「あれ? ここどこだ?」
「顎です」
「首を掴む予定だったのに、やっぱり暗闇って距離感なくなるな。ていうか、きっとまだサツキとの触れ合いが足りないんだな。だから距離感が」
「顎痛いから離してくれる?」
「話の続きって何だったっけ?」
人に向かってうるさいと言っておいて、話している内容すら忘れるとは。しかも顎から手を離す気はないらしい。サツキがあまりのことに呆れ返って何も言えないでいると、何を勘違いしたのか、ユラが楽しそうな声で言った。
「やっぱりいいよな、直接触れる人肌って」
「いやいやいや、この状況はさすがにどうかと思う」
「でも逃げねえじゃねえか」
サツキはハッと気が付いた。そうか、嫌なら隙を見て逃げ出せばよかったのだ。前までの自分だったらそうしていたが、正直言ってユラと離れがたいのはあるし恥ずかしいけどまあ見えないなら羞恥も半減だったので、そもそも逃げようという選択肢が思い浮かばなかった。こういうのを不覚と呼ぶに違いない。いやでも今からでも遅くはない。ここでユラと何か間違いでも起きてしまったら、もう明日から会わす顔もないし、それに惨めさで多分もう本当に立ち直れなくなるから。
「サツキ、今逃げようと思ったろ」
「逃げるよ」
湯船の中でフリーズの魔法はさすがに危険だろうか。サツキが一瞬躊躇していると。
「逃がすか」
ユラが顎を引き寄せ、唇を重ねた。今日はもうやらないと言った後に、これでもう二回目だ。ユラに対する信頼って何が根拠だったっけ。サツキはそう思った。
腰にするりと手が回る。すると、それに力が込められ、サツキはユラにぎゅっと羽交い締めにされてしまった。そして繰り返されるキス。抗議しようにも、息継ぎが出来ない位長くてもう苦しさと羞恥で死にそうだった。
いやいやいや、滅茶苦茶裸で密着してるし! 胸とか、ユラの胸に押し当たってるし!! ていうか足に何か固い物当たってる気がするのは気の所為ですかユラさん!
サツキが心の中でシャウトしていると、ユラが口を離し、言った。
「サツキ、襲っていいか?」
「駄目に決まってるでしょ」
「今なら誰も見てないぞ、それに暗闇の中だから恥ずかしさも軽減されんじゃないか?」
「そういう問題じゃないから」
「じゃあどういう問題なんだ」
また答えにくいことを聞いてくるのだ。サツキが男性と付き合ったこともなければ、ユラとするまでキスだってしたことがなかったことも知っての上で、そういうことを聞いてくるのだ。さすがに少し腹が立ってきた。
「とにかく離して。ここを上がったら、今日は寝る。それで明日ウルスラと女湯に行くから、ユラとの混浴はこれでおしまい」
「離したら離れるだろ?」
「離れるよ」
サツキの口調が冷たかったからだろう。ユラが少し戸惑った様な声を出した。
「……サツキ、怒ってるのか」
「怒って……いるよ。少しはね」
「少しだけか?」
何と答えればいいだろうか。少し腹立たしいのは確かだ。ユラが、他の人間が好きな癖にこういうことをしてくるからだ。でも、殆どの感情はそれではない。
「少し怒ってて、後は虚しい」
望みがないと分かっているものを、馬の前に人参をぶら下げる様なこの行為は、堪らなく惨めだった。それでも光に集まる虫の様に飛びついてしまう自分が余りにも情けなくて、涙が滲んだ。
「あれ? ここどこだ?」
「顎です」
「首を掴む予定だったのに、やっぱり暗闇って距離感なくなるな。ていうか、きっとまだサツキとの触れ合いが足りないんだな。だから距離感が」
「顎痛いから離してくれる?」
「話の続きって何だったっけ?」
人に向かってうるさいと言っておいて、話している内容すら忘れるとは。しかも顎から手を離す気はないらしい。サツキがあまりのことに呆れ返って何も言えないでいると、何を勘違いしたのか、ユラが楽しそうな声で言った。
「やっぱりいいよな、直接触れる人肌って」
「いやいやいや、この状況はさすがにどうかと思う」
「でも逃げねえじゃねえか」
サツキはハッと気が付いた。そうか、嫌なら隙を見て逃げ出せばよかったのだ。前までの自分だったらそうしていたが、正直言ってユラと離れがたいのはあるし恥ずかしいけどまあ見えないなら羞恥も半減だったので、そもそも逃げようという選択肢が思い浮かばなかった。こういうのを不覚と呼ぶに違いない。いやでも今からでも遅くはない。ここでユラと何か間違いでも起きてしまったら、もう明日から会わす顔もないし、それに惨めさで多分もう本当に立ち直れなくなるから。
「サツキ、今逃げようと思ったろ」
「逃げるよ」
湯船の中でフリーズの魔法はさすがに危険だろうか。サツキが一瞬躊躇していると。
「逃がすか」
ユラが顎を引き寄せ、唇を重ねた。今日はもうやらないと言った後に、これでもう二回目だ。ユラに対する信頼って何が根拠だったっけ。サツキはそう思った。
腰にするりと手が回る。すると、それに力が込められ、サツキはユラにぎゅっと羽交い締めにされてしまった。そして繰り返されるキス。抗議しようにも、息継ぎが出来ない位長くてもう苦しさと羞恥で死にそうだった。
いやいやいや、滅茶苦茶裸で密着してるし! 胸とか、ユラの胸に押し当たってるし!! ていうか足に何か固い物当たってる気がするのは気の所為ですかユラさん!
サツキが心の中でシャウトしていると、ユラが口を離し、言った。
「サツキ、襲っていいか?」
「駄目に決まってるでしょ」
「今なら誰も見てないぞ、それに暗闇の中だから恥ずかしさも軽減されんじゃないか?」
「そういう問題じゃないから」
「じゃあどういう問題なんだ」
また答えにくいことを聞いてくるのだ。サツキが男性と付き合ったこともなければ、ユラとするまでキスだってしたことがなかったことも知っての上で、そういうことを聞いてくるのだ。さすがに少し腹が立ってきた。
「とにかく離して。ここを上がったら、今日は寝る。それで明日ウルスラと女湯に行くから、ユラとの混浴はこれでおしまい」
「離したら離れるだろ?」
「離れるよ」
サツキの口調が冷たかったからだろう。ユラが少し戸惑った様な声を出した。
「……サツキ、怒ってるのか」
「怒って……いるよ。少しはね」
「少しだけか?」
何と答えればいいだろうか。少し腹立たしいのは確かだ。ユラが、他の人間が好きな癖にこういうことをしてくるからだ。でも、殆どの感情はそれではない。
「少し怒ってて、後は虚しい」
望みがないと分かっているものを、馬の前に人参をぶら下げる様なこの行為は、堪らなく惨めだった。それでも光に集まる虫の様に飛びついてしまう自分が余りにも情けなくて、涙が滲んだ。
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