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第三章 上級編開始
第467話 魔術師リアムの上級編の魔法陣作成本番の続き
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祐介が、物凄く真剣な表情で大きな紙に向き合っている。
「何かここはこれじゃないと駄目とかいった決まりってあるの?」
「とりあえず円が閉じていればよい。大事なのは発動させる魔法をその円の中に封じ込め作動させることだからな」
「じゃあこの文字っぽいところは最後に回すから、サツキちゃん今の内にお風呂入っちゃいなよ」
「いやしかし、祐介に任せっぱなしだというのもな」
すると、床に座り込んで鉛筆なる物で下書きをしていた祐介が、呆れた様な視線を送ってきた。
「……なんだその目は」
「サツキちゃん、ベッドに座ってるだけでしょ。いいから入ってきなよ」
何も言い返せなかった。正に事実そのものであったので。
リアムはすごすごと支度をすると、風呂場に向かった。出血量は午前中より減ったとはいえ、まだまだ多い。残念だが、今日もシャワーで済まそう。リアムはそう思い、今度こそ間違わぬ様風呂場の扉をきちっと閉めてから服を脱いだ。
昨日から今日までの激動の内容を、まだ少し冷たいシャワーの水を頭から被りながら思い出していた。露天風呂での出来事以降の祐介の急接近について、こうして冷静に振り返る時間がこれまでなかった。それ程にリアムは常に祐介と共におり、急ぎの買い出し以外は常に傍にいたからだ。さすがにこれは一緒に過ごしすぎなのではないか、そういう思いもあり、夜も共にいたいという祐介の申し入れを断った。
多分、祐介は血迷っているのだ。サツキの身体には破壊力が備わっており、あれだけ若く元気な男であればこれだけ四六時中過ごせばそれは我慢の限界も来るだろう。しかも表向きには恋人同士ということになっている。祐介は、もしかしたら錯覚し始めているのではないか、リアムはそう推測していた。
これは幾度も考えたことだ。祐介はリアムのことを女として扱っている。勿論身体は女だから、祐介からしてみたら至極当然のことであろう。だが最後まで手を出そうとしないのは、祐介も薄々理解しているからなのではないか。リアムはリアムのままなのだと。リアムがサツキになることはないのだと。
いっそのこと、心まで女となれたら良かった。だがリアムの心はいつまで経っても男のリアムのままで、なのに男の祐介を好きになってしまった。男が男を好きになることもあろう。相手が男のリアムを受け入れてくれるのであれば、リアムとてすんなり納得がいった筈だ。だから問題なのは、身体が女であるということ、ただそれに尽きる。
祐介は、暗闇の中であろうがリアムといたいと言ってくれた。あれがどれだけ嬉しかったことか。
頭を洗い終わり、化粧を丹念に落とした。少しゆっくりと身体を洗い始める。今、自分が酷い顔をしていることは、鏡を見ずとも理解していたからだ。
今ならまだ、元の世界に戻れるならば戻って、そしてここで起きたことは全て夢だったのだと忘れ去ることが出来るのではないか。祐介がいない世界に行ければ、祐介の存在などそもそもいなかったのだと自分に言い聞かすことが出来るのではないか。
リアムがそこまで考えたその時。
風呂場の扉が、バン! と乱暴に開かれた。
「何かここはこれじゃないと駄目とかいった決まりってあるの?」
「とりあえず円が閉じていればよい。大事なのは発動させる魔法をその円の中に封じ込め作動させることだからな」
「じゃあこの文字っぽいところは最後に回すから、サツキちゃん今の内にお風呂入っちゃいなよ」
「いやしかし、祐介に任せっぱなしだというのもな」
すると、床に座り込んで鉛筆なる物で下書きをしていた祐介が、呆れた様な視線を送ってきた。
「……なんだその目は」
「サツキちゃん、ベッドに座ってるだけでしょ。いいから入ってきなよ」
何も言い返せなかった。正に事実そのものであったので。
リアムはすごすごと支度をすると、風呂場に向かった。出血量は午前中より減ったとはいえ、まだまだ多い。残念だが、今日もシャワーで済まそう。リアムはそう思い、今度こそ間違わぬ様風呂場の扉をきちっと閉めてから服を脱いだ。
昨日から今日までの激動の内容を、まだ少し冷たいシャワーの水を頭から被りながら思い出していた。露天風呂での出来事以降の祐介の急接近について、こうして冷静に振り返る時間がこれまでなかった。それ程にリアムは常に祐介と共におり、急ぎの買い出し以外は常に傍にいたからだ。さすがにこれは一緒に過ごしすぎなのではないか、そういう思いもあり、夜も共にいたいという祐介の申し入れを断った。
多分、祐介は血迷っているのだ。サツキの身体には破壊力が備わっており、あれだけ若く元気な男であればこれだけ四六時中過ごせばそれは我慢の限界も来るだろう。しかも表向きには恋人同士ということになっている。祐介は、もしかしたら錯覚し始めているのではないか、リアムはそう推測していた。
これは幾度も考えたことだ。祐介はリアムのことを女として扱っている。勿論身体は女だから、祐介からしてみたら至極当然のことであろう。だが最後まで手を出そうとしないのは、祐介も薄々理解しているからなのではないか。リアムはリアムのままなのだと。リアムがサツキになることはないのだと。
いっそのこと、心まで女となれたら良かった。だがリアムの心はいつまで経っても男のリアムのままで、なのに男の祐介を好きになってしまった。男が男を好きになることもあろう。相手が男のリアムを受け入れてくれるのであれば、リアムとてすんなり納得がいった筈だ。だから問題なのは、身体が女であるということ、ただそれに尽きる。
祐介は、暗闇の中であろうがリアムといたいと言ってくれた。あれがどれだけ嬉しかったことか。
頭を洗い終わり、化粧を丹念に落とした。少しゆっくりと身体を洗い始める。今、自分が酷い顔をしていることは、鏡を見ずとも理解していたからだ。
今ならまだ、元の世界に戻れるならば戻って、そしてここで起きたことは全て夢だったのだと忘れ去ることが出来るのではないか。祐介がいない世界に行ければ、祐介の存在などそもそもいなかったのだと自分に言い聞かすことが出来るのではないか。
リアムがそこまで考えたその時。
風呂場の扉が、バン! と乱暴に開かれた。
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