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第三章 上級編開始

第466話 OLサツキの上級編、フレイのダンジョン地下十階の混浴での迷子

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 ユラがブラインドの黒煙の奥に消えたので、サツキも恐る恐るその場で服を脱ぎだした。一応ログハウス側からも見えない側にいるので、間違ってアールに見られることもないだろう。

 ブラインドは足元まできっちりとかかってくれたので、しゃがんでも問題はなさそうだ。サツキは服を畳んで床に置いた。

「サツキ」
「おわっ!!」

 いきなり目の前にユラの手が飛び出してきて、サツキの心臓が飛び上がった。

「びっくりさせないで!」
「悪い悪い、見えないから適当に手を突っ込んでみた」

 手のひらを上に向けて何かを探している仕草を見せた。

「な、なに」
「いや、思ったよりもブラインドが足元まで効いてるから、転ばねえ様に手を繋ごうと思って」
「びっくりしたよ」

 当たりどころが悪ければ、思い切り胸を触れていた可能性だってある。というか、もしやそれを企んだんじゃないかという気もしないでもなかったが、それを聞くのも憚られたのでサツキは素直にその手を取った。

「おし、じゃあ入ろうぜ。滑りやすいから気をつけろよ」
「うん」

 ユラに手を取られ、サツキは目の前の岩風呂の階段に足を付けた。思ったよりもぬるい。お湯の中にもブラインドは効いているだろうかと見てみたが、黒煙はしっかりと地面までぴったり伸びていた。

「何にも見えねえ」

 ユラがぶつくさと言った。サツキの方には黒煙がないところを見ると、ユラはわざわざ黒煙の中に入ってサツキが転ばないようブラインド効果の外に出してくれているらしい。

「ユラこそ転ばないでよ」
「階段、あとどれ位あるんだ?」
「あと二段あるかな」
「分かった……っうわ!」
「ユラ!?」

 ユラはパッと手を離してくれたが、突然のことにサツキの方が離すことが出来ず、大きく黒煙の方へと引っ張られる。バジャン!! と大きな音が立ち、思い切りお湯を呑み込んでしまった。

「カハッ!! ゴホッ!!」

 鼻にも入ってしまい、鼻の奥から喉までツン、と痛んだ。辺りは真っ暗闇で、何も見えない。思い切り転んでしまった所為で、どちらが来た方向かも分からなくなってしまった。

「サツキ、お前な、わざわざ手を離したのに付いてきちゃう奴があるかよ! 大丈夫か!?」
「鼻に……ゴホッ!」
「あーもう何やってんだよ」
「そもそもユラが転ぶから、ゴホッ」
「だってこっち側は何も見えねえんだよ」
「よくそれで人に手を貸して気をつけろとか言えたよね」
「格好つけたかったんだ、悪いか」
「ぶはっ」

 思ってもみなかった可愛い返事が来て、サツキは思わず笑ってしまった。

「笑うなよ。でもまあ声で大体分かった、その辺だな」
「え!?」
「ブラインド、効き過ぎだぞこれ。真っ暗闇じゃねえか。どれだけ見られたくなかったんだよ」
「仕方ないでしょ」
「まあ見るなって言うから見ないけどさ」

 ユラの声が、段々と近付いてくる。でも距離感が分からない。

「サツキ、俺の声のする方に手を伸ばせ」
「え、どこ? どっち?」

 ジャボジャボと手を伸ばしてみたが、あまりの暗闇に方向も距離も見失ってしまった。確かにこれはやり過ぎたかもしれない。あまりにも何も見えなくて、怖くなり声が震える。

「ユラ? どこ?」
「怖いのか? お前ちょっと喋り続けてろよ。方向がこうも分からなくなるとはな」
「ねえ、ブラインドって音も通さないの?」
「通しにくいらしいな、この感じだと」
「ユラ、こっちだよ! ユラはどこ!?」

 段々恐怖に心を奪われつつあったサツキは、切羽詰まった声でユラを呼んだ。
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