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第三章 上級編開始

第465話  魔術師リアムの上級編の魔法陣作成本番開始

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 今宵も共に布団で寝たいと言われ、リアムはさてどうしようかと考えた。

「祐介は今晩は処理しなくて大丈夫なのか?」

 リアムがそう尋ねると、祐介が思い切りむせた。

「鼻、鼻に入った……っ」

 そう言うと、ティッシュで鼻をかんでから少し涙が滲んでしまった瞳でリアムを見た。

「もうそれはいいから」
「いや、どうもまだ足りなさそうだったのでな」
「僕そんなに飢えてる感じに見えるの?」
「大分な」
「……」

 昨晩寝る時は人の下腹部に手を当てながらぴったりと身体をくっつけて寝てきたし、朝はこれでもかという位激しいキスを繰り返され、ようやく落ち着いたと思ったら今度は首や肩や背中に唇で触れまくり、最後にはキスマークを付けている。これら全てが一日で為されている。これはどう考えても溜まっているとしか思えなかった。

「無理せずとも、私の腹はもう痛くないぞ」
「いや、無理してるつもりは全くないけど」
「明日から化粧もあるから当面は早起きが続く。各々しっかりと寝ておいた方がよかろう」
「……分かった」

 祐介は、リアムの体調不良を気遣ってこれを提案したのだろう。だがこんな興奮状態では寝れるものも寝れまい。どうも今日祐介の様子がおかしいのは、それが原因に違いなかった。

 そうと分かれば対処のしようもあるのだ。

「しかし若さとは羨ましいものだな。ははは」
「はははって……。今ので何となくサツキちゃんの思考回路が読めたよ」
「洞察力も魔術師には必要な要素だぞ祐介」
「僕は魔術師じゃないけどね」

 祐介がふ、と笑うと、大きな紙を床に広げ始めた。

「魔法陣、描くんでしょ? 手伝うよ」
「おお、助かるぞ祐介」

 正直、リアムは線を真っ直ぐに描いたりするのが比較的苦手である。祐介はその点器用そうなので、祐介が手伝ってくれれば百人力だ。

 全く何もない所から描けと言われると祐介もきつかろうが、今は手元に先程効果を確認したお手本がある。リアムがキュポッと油性ペンの蓋を取ったその瞬間、祐介がリアムの手首をガッ! と掴んだ。

「待って待って待って、今直接まんまいこうとしたよね!?」
「そうだが、それがどうした」

 祐介は、リアムがもう片方の手に持っていた蓋を奪うと、油性ペンも手から奪い蓋をしてしまった。何か問題だっただろうか。

「サツキちゃん、ただでさえこっちの小さいお手本の方の円だってすっごいいびつなのに、もっと大きな紙にいきなり本番描くとかやったら、それ絶対失敗するやつだから!」
「歪……」

 リアムは、お手本の二枚を見た。まあ、確かに綺麗な円ではない。だが、歪とはあまりな言い様ではなかろうか。

「多少歪んでおろうが、円がきっちりと閉じていれば効果は問題ないと聞いたが」
「いや多分この大きさだと円にすらならない気がする!」
「お前も時折失礼だな」
「そもそもさ、下書きしようよ! ね!?」
「下書き……?」

 すると、祐介が頭をガシガシ掻いた。

「あああああもうっ」

 祐介のこれも久々だ。

「僕がやる! 大丈夫! 僕器用だから!」

 これも前に聞いた覚えがあるな、と思いながら、邪魔扱いされたリアムはベッドの上に追いやられたのだった。
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