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第三章 上級編開始

第458話 OLサツキの上級編、フレイのダンジョンの火竜草の花探索の続き

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 二人手を繋ぎ、薄暗い、湿気を含んだ中を進む。

 男女別の温泉の入り口付近に到着すると、ユラが手を離した。

「サツキ、念の為女湯の中に生えてないか見てきてくれるか?」
「うん、分かった」

 木製の引き戸をカラカラと開け中に入ると、小さな石が敷き詰められた洗い場。その奥にはかなり広い露天風呂があった。サツキは天井を見上げた。前回、ルーンのダンジョンでは上には植物の目隠しがあったからだ。だがここはそういったものはなく、ただダンジョンの高い暗い天井が見えただけだった。

 念の為、湯気で視界が悪い露天風呂の奥までぐるりと見てみることにした。火竜草はおろか、草の一本も生えてはいない。基本放ったらかしの設備なのだから雑草位すぐ生えてきそうなものなのに、と思って壁を見ると、ログハウスの中にあった魔法陣と似た様な物があった。その中心に、木の絵が描かれている。何となく、これの所為だと分かった。

「サツキー? 大丈夫か?」

 外からユラの声がしたので、サツキは急ぎ戻ることにした。引き戸を開け顔を出すと、ユラがすぐ目の前にいた。

「ユラ、雷に打たれちゃうよ」
「外なら大丈夫だ。で、どうだった?」

 サツキは先程中で見た魔法陣をユラに説明した。

「そっか……この階はきっちり管理が魔法陣でされてるってことなのかもな」
「ここまでも殆ど植物って生えてなかったよね?」

 ユラが顎に手を当てつつ考え込む様に言う。

「前に来た時は、もっと大きな植物がいっぱい生えてた記憶があるんだよな」
「あれじゃない? 温度が上がったから、育たなくなっちゃったんじゃないかな」

 気候変動があると、育ち易い植物の種類も変わる。暑くなった原因は分からないが、前に植物が生えていたというユラの記憶が確かなら、この気温の変化は一日二日で起こったものではないのだろう。

「下手をすると、他の階にもない可能性もあるな……」
「下に行けば行く程暑くなるなら、そうかもね」
「サツキ、お前結構頭いいんだな」
「私、とろいけどそこまで馬鹿じゃないと思うよ」

 くすり、と笑ってそう答えると、ユラが薄く笑った。この笑顔も卑怯な笑顔だ。心臓を鷲掴みにするから。

 ユラは、アールとウルスラの接近をどう捉えているのだろうか。ここでサツキが暗く思い悩んだところで何が変わる訳ではないだろうが、それでもユラが悲しむ姿は見たくはなかった。二人の様子が直接見えない様、移動や戦闘時以外は距離を置くのも一つの案かと思ったが、あの二人を二人きりにすればする程、距離も縮まってしまうに違いない。

 あっちを取ればこっちが成り立たず、こっちを取ればあっちが成り立たず。

 いっそのこと、サツキが何とかしてアールをサツキに向かせたらどうか。始めはかなりサツキに興味がある様だったから、完全に脈なしということはないだろう。

 そしてそれからどうする? アールをユラから奪って、ウルスラからも奪って、大切な人を二人共失えばいいのか。

 考えるだけで凹んだ。

「サツキ、さっきから何落ち込んでるんだよ」
「え? 別に何も」
「嘘つけ」

 ユラがサツキの前に立つと、腰を屈めて伏せているサツキの顔を覗き込んできた。
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