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第三章 上級編開始
第447話 魔術師リアムの上級編二日目の午後
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リアムが言い出したらなかなか意見を曲げないことは、祐介はもう熟知しているのだろう。
「……てことは、あのメイクをするのね」
諦めた様に言った。祐介の協力なしにこれを実行するのは難しかった為、リアムは内心ほっとしていた。無難な化粧は出来る様になったものの、郁姉レベルの化粧はまず無理だ。リアムの手によるものよりも、先日温泉で祐介が施してくれた化粧の方が余程上手かった。
リアムは誠心誠意を込めて、祐介に頼んだ。目をじっと見つめたまま。
「頼めるか? 祐介だけが頼りなのだ」
下から見上げてくるリアムの視線に耐えられなかったのか、祐介はリアムの肩を掴むと肩に額を付けてしまった。
「……その顔は卑怯です」
「卑怯とは何だ、卑怯とは」
「ああもう……分かった、分かりました!」
祐介が情けなく眉を垂れ下げつつ、顔を少し上げた。顔が異様に近いが、この様な往来のど真ん中で何をする訳でもないだろう。
「ありがとう、祐介」
「僕がやらなきゃ、他の人に頼んだりするんでしょ。それだけは絶対嫌だもんね」
口が尖ってしまっているが、それでもリアムを優先してくれるこの懐の広さ。さすがは祐介だ。そして可愛い。リアムより遥かに背は高く男らしいのに、この可愛さ。これが人を好きになるということなのか。笑顔も可愛く、不貞腐れている顔も可愛い。ここまで来ると、もう自分が血迷っているとしか思えない。
そう、確かに血迷っているのだ。だから、身体が勝手に動いた。
祐介の肩に手を置くと、リアムは祐介の鼻の上にキスをした。ついしてしまった。正直に言おう。故意を持ってキスをした。
すると、祐介がぷるぷると震え出した。
「ど、どうした祐介」
「不意打ちは卑怯なり……」
「へ?」
祐介までリアムの様な口調になってしまった。リアムが伏せている祐介の目を探すと。
祐介が、がばっとリアムを抱き締めた。道行く人々が、リアム達をジロジロと見ているのが分かった。リアムはそれに気付くと、顔がかあっと赤くなってしまった。
「祐介? ほら、周りの者が注目しているぞ!」
「あんな約束、しなきゃよかった……」
「へ?」
「でもさ、鼻にしてくれたってことは鼻にはしていいんだよね? そうだよね?」
「祐介、何を言っている?」
「そうしたらおでこ位ならいい? ほっぺはどうかな? いい? いいよね?」
「祐介、しっかりしろ、言っていることがおかしいぞ!」
リアムが祐介の背中をパンパン叩くと、祐介が物凄く物欲しそうな顔をしてリアムを見た。しまった、祐介の何かを刺激してしまったらしい。リアムはその事実を悟った。なので、話題を逸らすことにした。
「とりあえず一回帰ろう、な?」
「……うん」
「しかししっかりとした化粧をするなら、もう少し身体の線がはっきりと出る服の方が合うと思うのだが、祐介はどう思う?」
「身体の線……」
駄目だ、失敗したらしい。リアムがさてどうしようかと思い悩んでいると、祐介がようやくまともな返事を寄越した。
「駅の反対側にある、海外のファストファッションのチェーン店に売ってると思うよ。高くないし、ニ着位買うのもいいとは思うよ。確かにサツキちゃんのスーツ、上がサイズ合ってないし。海外のブランドなら胸の大きさも合うと思う」
「分かった! それで行こう!」
言っていることは殆ど分からなかったが、リアムはとりあえずその提案に乗ることにした。
「……てことは、あのメイクをするのね」
諦めた様に言った。祐介の協力なしにこれを実行するのは難しかった為、リアムは内心ほっとしていた。無難な化粧は出来る様になったものの、郁姉レベルの化粧はまず無理だ。リアムの手によるものよりも、先日温泉で祐介が施してくれた化粧の方が余程上手かった。
リアムは誠心誠意を込めて、祐介に頼んだ。目をじっと見つめたまま。
「頼めるか? 祐介だけが頼りなのだ」
下から見上げてくるリアムの視線に耐えられなかったのか、祐介はリアムの肩を掴むと肩に額を付けてしまった。
「……その顔は卑怯です」
「卑怯とは何だ、卑怯とは」
「ああもう……分かった、分かりました!」
祐介が情けなく眉を垂れ下げつつ、顔を少し上げた。顔が異様に近いが、この様な往来のど真ん中で何をする訳でもないだろう。
「ありがとう、祐介」
「僕がやらなきゃ、他の人に頼んだりするんでしょ。それだけは絶対嫌だもんね」
口が尖ってしまっているが、それでもリアムを優先してくれるこの懐の広さ。さすがは祐介だ。そして可愛い。リアムより遥かに背は高く男らしいのに、この可愛さ。これが人を好きになるということなのか。笑顔も可愛く、不貞腐れている顔も可愛い。ここまで来ると、もう自分が血迷っているとしか思えない。
そう、確かに血迷っているのだ。だから、身体が勝手に動いた。
祐介の肩に手を置くと、リアムは祐介の鼻の上にキスをした。ついしてしまった。正直に言おう。故意を持ってキスをした。
すると、祐介がぷるぷると震え出した。
「ど、どうした祐介」
「不意打ちは卑怯なり……」
「へ?」
祐介までリアムの様な口調になってしまった。リアムが伏せている祐介の目を探すと。
祐介が、がばっとリアムを抱き締めた。道行く人々が、リアム達をジロジロと見ているのが分かった。リアムはそれに気付くと、顔がかあっと赤くなってしまった。
「祐介? ほら、周りの者が注目しているぞ!」
「あんな約束、しなきゃよかった……」
「へ?」
「でもさ、鼻にしてくれたってことは鼻にはしていいんだよね? そうだよね?」
「祐介、何を言っている?」
「そうしたらおでこ位ならいい? ほっぺはどうかな? いい? いいよね?」
「祐介、しっかりしろ、言っていることがおかしいぞ!」
リアムが祐介の背中をパンパン叩くと、祐介が物凄く物欲しそうな顔をしてリアムを見た。しまった、祐介の何かを刺激してしまったらしい。リアムはその事実を悟った。なので、話題を逸らすことにした。
「とりあえず一回帰ろう、な?」
「……うん」
「しかししっかりとした化粧をするなら、もう少し身体の線がはっきりと出る服の方が合うと思うのだが、祐介はどう思う?」
「身体の線……」
駄目だ、失敗したらしい。リアムがさてどうしようかと思い悩んでいると、祐介がようやくまともな返事を寄越した。
「駅の反対側にある、海外のファストファッションのチェーン店に売ってると思うよ。高くないし、ニ着位買うのもいいとは思うよ。確かにサツキちゃんのスーツ、上がサイズ合ってないし。海外のブランドなら胸の大きさも合うと思う」
「分かった! それで行こう!」
言っていることは殆ど分からなかったが、リアムはとりあえずその提案に乗ることにした。
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