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第三章 上級編開始

第435話 魔術師リアムの上級編二日目の限界

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 祐介も着替えをすると、洗面所で顔を洗い終え歯磨きを済ませた。

「お待たせ。行こうか。お腹痛くない?」
「薬を飲んでいるから大丈夫だ」
「きつかったらすぐに言ってね」

 休みの日の祐介の前髪が好きで、リアムは玄関で先に靴を履いて待つ間、祐介を見ていた。視線に気付き、祐介が照れ臭そうに笑う。

「なに? そんなじっと見つめて」
「なに、祐介の休日の前髪が私は好きでな」
「……え」
「あ」

 思わずサラッと答えてしまったが、これはあれではないか? 祐介のことを好きだと言っている様なものでは。

「……へへ、なんか嬉しいな」

 祐介もリアムに続いて靴を履くと、もう習慣になりつつある覗き窓から外の様子を窺った。

「大丈夫そうか?」

 祐介がリアムに手を貸して立ち上がらせると、熱の篭った目でリアムを至近距離から見下ろした。

「どうした?」

 何故何も言わないのか。リアムが首を傾げると、祐介がリアムを扉に押し付けた。

 な、何だ何だこれは! どうした祐介!

 リアムは焦った。すると、祐介が言った。

「やっぱり、さっきのあんなのじゃ納得出来ない」
「え? さっきのあんなの? 何のことだ?」
「どうせならしっかりやった方がいいと思うんだよね」

 祐介の顔が近付いてくる。これは、まさか。リアムは祐介の目から目を離せないまま、尋ねた。

「だから祐介、お前は一体何の話をしているのだ」
「キス」
「え? いやちょっと待て祐介、早まってはいかんぞ! お前には未来がある……」
「もうそれ聞き飽きた」
「いやしかしだな!」

 祐介の唇が、リアムの唇のすぐ上まで来た。

「この次は、君からしてくれるまで僕ちゃんと待つから。だから今回だけ大目に見てよ」
「え?」

 次はリアムからするまで待つ? 待つのか? 祐介がリアムを? リアムが混乱しかけたその瞬間。

 祐介の唇がリアムの唇に触れた。

「ゆっ」

 カアッと身体が暑くなり、祐介の名を呼ぼうと口を開けたその隙間に、祐介の舌が入り込んできた。リアムの舌を絡め取ろうとする様な荒々しさに、リアムの頭が真っ白になる。

 当たる息の余りの熱さに、全身がぞわぞわし始める。何故だ、何故祐介は中身がリアムなのにこんなことをしているのだろうか。

 リアムの膝がガクッと落ちそうになった。すると、祐介が咄嗟にリアムの両脇を抱え、上から何度も何度もリアムの唇を奪っていく。

「ゆ、祐介、これ以上はもう……」

 立っていられない。息苦しくなり、は、と息を吐くと、祐介が切なそうな目でリアムを見た。

「次の機会っていつ来るのかな? 余計なこと約束しちゃったな」

 祐介はそう言うと、ズルズルと落ちていくリアムをしゃがんで膝の上に乗せる。

「だからもうちょっとだけ」

 そんなに飢えているのか? それともそうではなく、サツキの身体のみに欲情したのであろうか?

「顔、赤いよ」

 リアムを見てそう言って笑うと、また深い口づけを繰り返したのだった。
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