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第三章 上級編開始
第421話 魔術師リアムの上級編二日目の諍い
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祐介は続けて言った。
「どうしたらどこにも行かないでいてくれるの? ここにいてって何度も言ったよ。どうして信じてくれないの?」
「し、信じているぞ、でも」
「それとも何? もう僕といたくない? 僕といるのが嫌になっちゃった?」
「祐介、そんなことは断じてない、私だって祐介とずっといたいと思っている」
怒らせたい訳ではなかった。ただ、いずれ離れるのが急に寂しくなって、それでついあんな馬鹿なことを聞いてしまったのだ。
祐介が言った。祐介の前髪がリアムの鼻をくすぐる。祐介の目は真剣そのもので、ああ、あの温厚な祐介をこれ程までに怒らせてしまう位これは言ってはいけないことなのだ、とようやくリアムは理解した。
「なら、僕は君が僕を信じてくれるまで待つよ。いつまでも待つよ。だから頼む、お願いだからどこかに行こうだなんて二度と思わないで」
祐介の親指が、リアムの唇を撫でた。
「ゆ、祐介、分かった、悪かった……少し気弱になっていたのだ、許してくれ」
リアムが必死にそう紡ぎ出すと、祐介の指の動きが止まった。眉が情けなく垂れ下がった。
「気弱……そうか、いきなり思ってもない生理がきたもんね、そりゃ不安にもなるか」
「すまない、あまりにもこの状況に戸惑ってしまったのだ」
それは事実だった。身体から出る血と共に、心からも不安が溢れ出してしまったのだ。
「……だから逃げ出したくなったの?」
「……それは否めない」
リアムは素直に吐露した。それを聞いて、ふう、と祐介が息をする。
「僕はさ、さすがに生理は代わってあげられないけど、後のことだったら何だってやる。だから、お願いだ、お願いだからどこも行かないで」
それは、サツキだからか? リアムだからか? それとも傍にいてくれるなら誰でもよかったのだろうか? さすがにそれは聞けなかった。聞いて、それでリアムの望む返答が返って来なかった場合、リアムはもう立ち上がれなくなりそうだったから。
代わりに、涙が出た。
「……怖いのだ」
「……!」
祐介が、がばっとリアムを抱き起こしきつくきつく抱きすくめた。まるでリアムの全てを覆うかの様に。
震える声で、祐介が言った。
「ごめん、僕、自分のことばかりだった」
「そうじゃない、違うんだ祐介、私はまだ色々変化に戸惑っていて、ついていけてないだけだから」
「僕が焦り過ぎたんだ、やっぱりそうだよね、考えれば当然のことだった。ごめん」
祐介がそう言うと、リアムはその言葉の意味が理解出来ずに止まった。
「……祐介が、一体何に焦ったのだ?」
「……今のは口が滑ったので忘れて下さい」
「口が滑った?」
「いや、まだ早かったな、と」
「早い? 何がだ?」
「いや、だからね、いつかちゃんと時期をみて話すから、今は忘れて下さいお願いします」
「え……?」
「さ、薬飲もうか」
「いや祐介、理解が出来ないのだが」
「理解出来る様になった頃話します」
「何をだ?」
「……薬飲もうね」
どうも言う気がない様だ。祐介はリアムの拘束を解くと、さっと立って行ってしまった。両手で頬をパン! と叩いている。全く意味がわからなかった。
祐介に抱き締められたその形のまま、リアムは訳が分からずただぼうっと祐介の背中を見つめていたのだった。
「どうしたらどこにも行かないでいてくれるの? ここにいてって何度も言ったよ。どうして信じてくれないの?」
「し、信じているぞ、でも」
「それとも何? もう僕といたくない? 僕といるのが嫌になっちゃった?」
「祐介、そんなことは断じてない、私だって祐介とずっといたいと思っている」
怒らせたい訳ではなかった。ただ、いずれ離れるのが急に寂しくなって、それでついあんな馬鹿なことを聞いてしまったのだ。
祐介が言った。祐介の前髪がリアムの鼻をくすぐる。祐介の目は真剣そのもので、ああ、あの温厚な祐介をこれ程までに怒らせてしまう位これは言ってはいけないことなのだ、とようやくリアムは理解した。
「なら、僕は君が僕を信じてくれるまで待つよ。いつまでも待つよ。だから頼む、お願いだからどこかに行こうだなんて二度と思わないで」
祐介の親指が、リアムの唇を撫でた。
「ゆ、祐介、分かった、悪かった……少し気弱になっていたのだ、許してくれ」
リアムが必死にそう紡ぎ出すと、祐介の指の動きが止まった。眉が情けなく垂れ下がった。
「気弱……そうか、いきなり思ってもない生理がきたもんね、そりゃ不安にもなるか」
「すまない、あまりにもこの状況に戸惑ってしまったのだ」
それは事実だった。身体から出る血と共に、心からも不安が溢れ出してしまったのだ。
「……だから逃げ出したくなったの?」
「……それは否めない」
リアムは素直に吐露した。それを聞いて、ふう、と祐介が息をする。
「僕はさ、さすがに生理は代わってあげられないけど、後のことだったら何だってやる。だから、お願いだ、お願いだからどこも行かないで」
それは、サツキだからか? リアムだからか? それとも傍にいてくれるなら誰でもよかったのだろうか? さすがにそれは聞けなかった。聞いて、それでリアムの望む返答が返って来なかった場合、リアムはもう立ち上がれなくなりそうだったから。
代わりに、涙が出た。
「……怖いのだ」
「……!」
祐介が、がばっとリアムを抱き起こしきつくきつく抱きすくめた。まるでリアムの全てを覆うかの様に。
震える声で、祐介が言った。
「ごめん、僕、自分のことばかりだった」
「そうじゃない、違うんだ祐介、私はまだ色々変化に戸惑っていて、ついていけてないだけだから」
「僕が焦り過ぎたんだ、やっぱりそうだよね、考えれば当然のことだった。ごめん」
祐介がそう言うと、リアムはその言葉の意味が理解出来ずに止まった。
「……祐介が、一体何に焦ったのだ?」
「……今のは口が滑ったので忘れて下さい」
「口が滑った?」
「いや、まだ早かったな、と」
「早い? 何がだ?」
「いや、だからね、いつかちゃんと時期をみて話すから、今は忘れて下さいお願いします」
「え……?」
「さ、薬飲もうか」
「いや祐介、理解が出来ないのだが」
「理解出来る様になった頃話します」
「何をだ?」
「……薬飲もうね」
どうも言う気がない様だ。祐介はリアムの拘束を解くと、さっと立って行ってしまった。両手で頬をパン! と叩いている。全く意味がわからなかった。
祐介に抱き締められたその形のまま、リアムは訳が分からずただぼうっと祐介の背中を見つめていたのだった。
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