421 / 731
第三章 上級編開始
第419話 魔術師リアムの上級編二日目開始
しおりを挟む
祐介はほかほかだ。だから祐介と接触した部分は大体その内汗ばんでくる。
本来なら汗をかいた男と肌が触れ合うだけでも御免であるが、祐介の場合は何とも思わない。これが人を好くということなのだと、リアムは初めて知った。祐介に包み込まれる様に守られ、これがどれだけ幸せなことか。
これまで好印象だった女性達とは尽く続かなかったが、あれはリアムが包容力がある方ではなく、実は包容力がある者に魅力を感じる性質があったからかもしれない。
このことにしても、祐介と出会って初めて気付いたのだから、我ながら呆れてしまうが。
リアムは装着している生理用品に違和感を感じ、まだ暗い中トイレに向かった。確認してみると、元は白かったそれが真っ赤に染まり、タプタプしていた。リアムは思わずクラクラし、便座に座りながら頭を抱えた。そして、また腹が痛くなってきていた。薬の効果が切れたのだろう。
今日は一日、まともに動けそうもない。リアムは情けないと思ったが、だがこれは純粋にきつかった。無理を通してもいいことはあるまい。大人しく過ごすのが良策と思われた。
トイレで交換して部屋に戻ると、祐介がベッドに腰掛けていた。
「すまん、起こしてしまったか?」
「いや、そうじゃなくて。いないなと思って。――お水飲む?」
「ああ、そうだな。汗をかいてしまったので欲しい」
「ちょっと待ってて。座って待っててよ」
「ああ」
すれ違いざま、祐介はリアムの頭をわしゃ、と撫でていった。
「祐介……」
「ん?」
は、と気付いた時にはもう遅く、リアムは流しに向かっていた祐介の背中にしがみついていた。
「サツキ、ちゃん?」
祐介が戸惑った様な声色で言った。それはそうだろう、自分から触れようとしないリアムがいきなり抱きついてきたのだ。
「は、腹が痛くなってきた」
「え? 大丈夫?」
「薬が欲しいのだ」
「薬? うん、分かった、用意するから」
「祐介」
「うん? どうしたの?」
祐介が否定の言葉など言わないのを分かっていて、リアムは口に出した。
「私は本当にここにいていいのだろうか。本当にこのまま、祐介といていいのだろうか?」
「何言ってんの、いいに決まってるでしょ」
「だが私はサツキではないのに」
祐介の返答が、止まった。
暫くして、祐介が言った。
「振り向きたいから少し手を離して」
「……嫌だ」
「じゃあ無理やり向く」
祐介はそう言うと、リアムの手首を掴んで力づくで剥がした。そしてそのままくるっと振り返ると、なんとリアムの腰に手を回しそのまま抱き上げてしまったではないか。リアムは咄嗟に顔を逸した。
「こっち見て」
「……嫌だ」
「じゃあ、無理やり見る」
祐介はそう言うと、スタスタとベッドまでリアムを運んだかと思うと、ベッドにリアムを仰向けに寝かせ上に跨ってしまった。なななななにをしているのだ、祐介は! リアムは激しく動揺した。
祐介はリアムの肩を腕で押さえつけ両手で頬を押さえると、上から覗き込んだ。
「聞いて」
「断る」
「じゃあ勝手に話す。――あのね、君がどう思ってるか知らないけど、僕は別に暗闇の中にずっといて君の姿が見えなくたって、君といたいんだ。だから、すぐにそうやっていなくなりそうなことを言わないでくれる?」
祐介の声は、怒っていた。
本来なら汗をかいた男と肌が触れ合うだけでも御免であるが、祐介の場合は何とも思わない。これが人を好くということなのだと、リアムは初めて知った。祐介に包み込まれる様に守られ、これがどれだけ幸せなことか。
これまで好印象だった女性達とは尽く続かなかったが、あれはリアムが包容力がある方ではなく、実は包容力がある者に魅力を感じる性質があったからかもしれない。
このことにしても、祐介と出会って初めて気付いたのだから、我ながら呆れてしまうが。
リアムは装着している生理用品に違和感を感じ、まだ暗い中トイレに向かった。確認してみると、元は白かったそれが真っ赤に染まり、タプタプしていた。リアムは思わずクラクラし、便座に座りながら頭を抱えた。そして、また腹が痛くなってきていた。薬の効果が切れたのだろう。
今日は一日、まともに動けそうもない。リアムは情けないと思ったが、だがこれは純粋にきつかった。無理を通してもいいことはあるまい。大人しく過ごすのが良策と思われた。
トイレで交換して部屋に戻ると、祐介がベッドに腰掛けていた。
「すまん、起こしてしまったか?」
「いや、そうじゃなくて。いないなと思って。――お水飲む?」
「ああ、そうだな。汗をかいてしまったので欲しい」
「ちょっと待ってて。座って待っててよ」
「ああ」
すれ違いざま、祐介はリアムの頭をわしゃ、と撫でていった。
「祐介……」
「ん?」
は、と気付いた時にはもう遅く、リアムは流しに向かっていた祐介の背中にしがみついていた。
「サツキ、ちゃん?」
祐介が戸惑った様な声色で言った。それはそうだろう、自分から触れようとしないリアムがいきなり抱きついてきたのだ。
「は、腹が痛くなってきた」
「え? 大丈夫?」
「薬が欲しいのだ」
「薬? うん、分かった、用意するから」
「祐介」
「うん? どうしたの?」
祐介が否定の言葉など言わないのを分かっていて、リアムは口に出した。
「私は本当にここにいていいのだろうか。本当にこのまま、祐介といていいのだろうか?」
「何言ってんの、いいに決まってるでしょ」
「だが私はサツキではないのに」
祐介の返答が、止まった。
暫くして、祐介が言った。
「振り向きたいから少し手を離して」
「……嫌だ」
「じゃあ無理やり向く」
祐介はそう言うと、リアムの手首を掴んで力づくで剥がした。そしてそのままくるっと振り返ると、なんとリアムの腰に手を回しそのまま抱き上げてしまったではないか。リアムは咄嗟に顔を逸した。
「こっち見て」
「……嫌だ」
「じゃあ、無理やり見る」
祐介はそう言うと、スタスタとベッドまでリアムを運んだかと思うと、ベッドにリアムを仰向けに寝かせ上に跨ってしまった。なななななにをしているのだ、祐介は! リアムは激しく動揺した。
祐介はリアムの肩を腕で押さえつけ両手で頬を押さえると、上から覗き込んだ。
「聞いて」
「断る」
「じゃあ勝手に話す。――あのね、君がどう思ってるか知らないけど、僕は別に暗闇の中にずっといて君の姿が見えなくたって、君といたいんだ。だから、すぐにそうやっていなくなりそうなことを言わないでくれる?」
祐介の声は、怒っていた。
0
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
性欲排泄欲処理系メイド 〜三大欲求、全部満たします〜
mm
ファンタジー
私はメイドのさおり。今日からある男性のメイドをすることになったんだけど…業務内容は「全般のお世話」。トイレもお風呂も、性欲も!?
※スカトロ表現多数あり
※作者が描きたいことを書いてるだけなので同じような内容が続くことがあります
[恥辱]りみの強制おむつ生活
rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。
保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる