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第三章 上級編開始
第412話 OLサツキの上級編、フレイのダンジョン一階のバトル後
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この階で会ったモンスターは、結局はこの二回だけだった。
「モンスターの数が少ないな」
ユラが不思議そうにに呟く。確かに、初級ダンジョンではもっと頻繁にモンスターに出くわしていた。この暑くなった環境に何か関係があるのだろうか。
二回目のバトルが終わった後、ようやくユラはサツキの肩を解放してくれた。理由は簡単だ。サツキがリアムの姿に戻って肩を組みにくくなったからだ。
「代わりに俺の腕掴んでて」
そう言って腕を差し出したのだ。
いつ何時敵が現れるか分からない状態なのだが、戦い慣れていない所為かサツキの反応は他の皆よりもワンテンポ遅い。
「魔石の効果もなるべく二人で分け合いたいし」
という理由があるそうなので、サツキは素直にユラの腕に手を掛けた。まあこれなら男同士だ、後衛の二人も気にしないだろう。
次の階へ降りていくと、地下一階よりも暑くなった気がした。
ユラがウルスラ達を振り返って尋ねる。
「なあ、火龍草ってどの辺に生えてるんだ? ていうかどんなやつだ?」
「あ、俺知ってる!」
アールが手を挙げたので、ユラが指差した。
「はい、アール」
アールは自信満々に言った。
「前は温泉の近くに生えてたぞ! 多分、水がないと育たないんだ!」
「おお、アールにしてはまともな答えじゃねえか」
ユラが見直した様に言った。さすがにアールもその意見には異論があるらしく、少しむっとし、拳を握り締めて主張し始めた。
「皆俺のことバカバカ言うけどな、俺は物分かりが悪いだけで物覚えが悪い訳じゃない!」
サツキは納得した。そして物分かりが悪い自己認識があることに驚いた。この驚きも、アールには失礼かもしれないのだが、その顔面の良さと頭の作りに余りにもギャップがあるのがアールの馬鹿っぽさを際立たせている一番の理由かもしれなかった。
あれだ、おバカキャラのアイドル。立ち位置があれだと思えば。
サツキは気になっていたことを質問してみた。
「温泉はどこにあるの? ていうか、地図は?」
アールが拳を握り締めたまま、止まった。静寂が場を支配する。アールの隣にいるウルスラが、大きな溜息をついた。
「……地図は、見つからなかったの」
するとユラが非難する様に言った。
「地図がないって、地図の携帯は冒険者の基本中の基本じゃねえか」
はあー、と大きな溜息をついた。二人目だった。
「あのー、地図って、私も持ってないけど」
するとユラが慰める様に言った。
「サツキは仕方ねえよ。荷物ごとドラゴンに焼かれちまったからな。……正直、リアムの地図は相当凄そうだったから、勿体ねえけど」
「凄い? どういう意味?」
すると、ウルスラが教えてくれた。
「サツキ、私達冒険者はね、一人一枚の地図をずっと大切に持つの。そうすると、自分が足を踏み入れた場所の地図が記録されていくのよ」
「一人一枚?」
「そうよ。リアムはかなりの熟練冒険者だったから、色んな場所の情報が地図に入っていたの。で、ダンジョンの転移魔法陣は地図からの情報を読み取ってるらしいのよ」
と、いうことは。サツキの表情を見て、ウルスラが深刻そうに頷いてみせた。
「最下層手前まで行ったアールのデータは、ないの」
なんてこった。サツキはアールを信じられない思いで見た。
「モンスターの数が少ないな」
ユラが不思議そうにに呟く。確かに、初級ダンジョンではもっと頻繁にモンスターに出くわしていた。この暑くなった環境に何か関係があるのだろうか。
二回目のバトルが終わった後、ようやくユラはサツキの肩を解放してくれた。理由は簡単だ。サツキがリアムの姿に戻って肩を組みにくくなったからだ。
「代わりに俺の腕掴んでて」
そう言って腕を差し出したのだ。
いつ何時敵が現れるか分からない状態なのだが、戦い慣れていない所為かサツキの反応は他の皆よりもワンテンポ遅い。
「魔石の効果もなるべく二人で分け合いたいし」
という理由があるそうなので、サツキは素直にユラの腕に手を掛けた。まあこれなら男同士だ、後衛の二人も気にしないだろう。
次の階へ降りていくと、地下一階よりも暑くなった気がした。
ユラがウルスラ達を振り返って尋ねる。
「なあ、火龍草ってどの辺に生えてるんだ? ていうかどんなやつだ?」
「あ、俺知ってる!」
アールが手を挙げたので、ユラが指差した。
「はい、アール」
アールは自信満々に言った。
「前は温泉の近くに生えてたぞ! 多分、水がないと育たないんだ!」
「おお、アールにしてはまともな答えじゃねえか」
ユラが見直した様に言った。さすがにアールもその意見には異論があるらしく、少しむっとし、拳を握り締めて主張し始めた。
「皆俺のことバカバカ言うけどな、俺は物分かりが悪いだけで物覚えが悪い訳じゃない!」
サツキは納得した。そして物分かりが悪い自己認識があることに驚いた。この驚きも、アールには失礼かもしれないのだが、その顔面の良さと頭の作りに余りにもギャップがあるのがアールの馬鹿っぽさを際立たせている一番の理由かもしれなかった。
あれだ、おバカキャラのアイドル。立ち位置があれだと思えば。
サツキは気になっていたことを質問してみた。
「温泉はどこにあるの? ていうか、地図は?」
アールが拳を握り締めたまま、止まった。静寂が場を支配する。アールの隣にいるウルスラが、大きな溜息をついた。
「……地図は、見つからなかったの」
するとユラが非難する様に言った。
「地図がないって、地図の携帯は冒険者の基本中の基本じゃねえか」
はあー、と大きな溜息をついた。二人目だった。
「あのー、地図って、私も持ってないけど」
するとユラが慰める様に言った。
「サツキは仕方ねえよ。荷物ごとドラゴンに焼かれちまったからな。……正直、リアムの地図は相当凄そうだったから、勿体ねえけど」
「凄い? どういう意味?」
すると、ウルスラが教えてくれた。
「サツキ、私達冒険者はね、一人一枚の地図をずっと大切に持つの。そうすると、自分が足を踏み入れた場所の地図が記録されていくのよ」
「一人一枚?」
「そうよ。リアムはかなりの熟練冒険者だったから、色んな場所の情報が地図に入っていたの。で、ダンジョンの転移魔法陣は地図からの情報を読み取ってるらしいのよ」
と、いうことは。サツキの表情を見て、ウルスラが深刻そうに頷いてみせた。
「最下層手前まで行ったアールのデータは、ないの」
なんてこった。サツキはアールを信じられない思いで見た。
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