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第三章 上級編開始
第411話 魔術師リアムの上級編初日の晩ご飯の支度へ
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結局、祐介が起きたのはその暫く後になってからだった。
「何かさ、幸せな夢を見てたんだ」
祐介は、ベッドに横になってぽうっとしたまま、ベッドのへりに腰掛けたリアムの腰を引き寄せた。
「ゆ、祐介?」
「お腹冷えてない? 大丈夫?」
驚いた。何だ、ただ腹の冷え具合を確認したかっただけらしい。ならばすぐに離すかと思いきや、そのまま腰に顔を付けている。
「ゆゆゆゆ祐介?」
「腰、冷えてない?」
「痺れている感覚はあるが、大丈夫だと思うぞ」
「ちゃんと温めてね」
「分かった、分かったから」
リアムが身体を捻り祐介を上から覗き込むと、祐介の片目だけが見え、そして目が合うとそれが笑った。
「ねえ、寝てる僕に何かしなかった?」
リアムはぎくりとした。まさかあれのことだろうか。
「しっしてないっ」
慌てて否定すると、声が裏返ってしまった。しまった、これではやりましたと白状した様なものではないか。
「……動揺してる。何かしたよね?」
「断じてしていない!」
今度は低めのいい声が出た。よし、いける、これならいけるぞ、リアム!
リアムは自分を奮い立てた。
「……別に正直に言えばいいのに」
「正直に語っている!」
「本当? 何かムキになってない?」
「こっこれは腹が減ったのだ!」
そしていい具合に、そう言った瞬間腹がぐううう、と鳴った。リアムは祐介の目をしっかりと見つめ、頷いてみせた。
「腹は正直だ」
「成程」
祐介はまだ何か言いたそうだったが、時計を見ると「お」と言い、ようやく腰に回していた腕を解いた。やれやれである。
むくりと起き上がると、呑気に伸びをした。
「さーて作るか!」
「済まないが、よろしく頼む」
「ぜーんぜん。サツキちゃんが美味しいって言ってくれたらそれで僕満足だし」
そう言い立ち上がる祐介を目で追い、リアムは心から思った。
「祐介は無欲なのだな」
リアムに対し、祐介はひたすら与え続けているばかりで大して何も望まない。これでは随分と不公平なのではなかろうか。
かと言って、何度何かして欲しいことがないかと聞いても、些細な願いしか言わないのだ。これを無欲と言わず何と呼べばいいのか。
祐介は冷蔵庫から卵とうどんを取り出す。
「そんなことないと思うけど」
「いや。もう少し欲というものを持っても、祐介なら許されると思うぞ」
「え、じゃあもっと我儘言ってもいいのかな」
「じゃんじゃん言った方がいいぞ」
「じゃあ今夜はここに泊まる」
台所で背中を向けながら、祐介がサラリと言った。
「……え?」
「我儘言っていいんでしょ? それとも駄目?」
別に構いはしない。というか、何だかんだでほぼ連日の様に同じ所で寝ている。それに祐介は手を出す様なことはないだろう、それは分かっていた。
後は単純に、リアムの心臓の持ち具合だけの問題だ。
「……駄目?」
祐介がしょんぼりとしてしまった。途端、自分が余りにも酷いことをしてしまった気になり、リアムは慌てて言った。
「駄目ではない! いいぞ! それに祐介は暖かいからな、身体が冷えずに済む!」
思ったよりも大きい声が出てしまい、リアムの慌てぶりに驚いた顔をした祐介が、破顔した。
「やった」
くすくす笑いながら、小さく言った。
「何かさ、幸せな夢を見てたんだ」
祐介は、ベッドに横になってぽうっとしたまま、ベッドのへりに腰掛けたリアムの腰を引き寄せた。
「ゆ、祐介?」
「お腹冷えてない? 大丈夫?」
驚いた。何だ、ただ腹の冷え具合を確認したかっただけらしい。ならばすぐに離すかと思いきや、そのまま腰に顔を付けている。
「ゆゆゆゆ祐介?」
「腰、冷えてない?」
「痺れている感覚はあるが、大丈夫だと思うぞ」
「ちゃんと温めてね」
「分かった、分かったから」
リアムが身体を捻り祐介を上から覗き込むと、祐介の片目だけが見え、そして目が合うとそれが笑った。
「ねえ、寝てる僕に何かしなかった?」
リアムはぎくりとした。まさかあれのことだろうか。
「しっしてないっ」
慌てて否定すると、声が裏返ってしまった。しまった、これではやりましたと白状した様なものではないか。
「……動揺してる。何かしたよね?」
「断じてしていない!」
今度は低めのいい声が出た。よし、いける、これならいけるぞ、リアム!
リアムは自分を奮い立てた。
「……別に正直に言えばいいのに」
「正直に語っている!」
「本当? 何かムキになってない?」
「こっこれは腹が減ったのだ!」
そしていい具合に、そう言った瞬間腹がぐううう、と鳴った。リアムは祐介の目をしっかりと見つめ、頷いてみせた。
「腹は正直だ」
「成程」
祐介はまだ何か言いたそうだったが、時計を見ると「お」と言い、ようやく腰に回していた腕を解いた。やれやれである。
むくりと起き上がると、呑気に伸びをした。
「さーて作るか!」
「済まないが、よろしく頼む」
「ぜーんぜん。サツキちゃんが美味しいって言ってくれたらそれで僕満足だし」
そう言い立ち上がる祐介を目で追い、リアムは心から思った。
「祐介は無欲なのだな」
リアムに対し、祐介はひたすら与え続けているばかりで大して何も望まない。これでは随分と不公平なのではなかろうか。
かと言って、何度何かして欲しいことがないかと聞いても、些細な願いしか言わないのだ。これを無欲と言わず何と呼べばいいのか。
祐介は冷蔵庫から卵とうどんを取り出す。
「そんなことないと思うけど」
「いや。もう少し欲というものを持っても、祐介なら許されると思うぞ」
「え、じゃあもっと我儘言ってもいいのかな」
「じゃんじゃん言った方がいいぞ」
「じゃあ今夜はここに泊まる」
台所で背中を向けながら、祐介がサラリと言った。
「……え?」
「我儘言っていいんでしょ? それとも駄目?」
別に構いはしない。というか、何だかんだでほぼ連日の様に同じ所で寝ている。それに祐介は手を出す様なことはないだろう、それは分かっていた。
後は単純に、リアムの心臓の持ち具合だけの問題だ。
「……駄目?」
祐介がしょんぼりとしてしまった。途端、自分が余りにも酷いことをしてしまった気になり、リアムは慌てて言った。
「駄目ではない! いいぞ! それに祐介は暖かいからな、身体が冷えずに済む!」
思ったよりも大きい声が出てしまい、リアムの慌てぶりに驚いた顔をした祐介が、破顔した。
「やった」
くすくす笑いながら、小さく言った。
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