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第三章 上級編開始
第402話 OLサツキの上級編、フレイのダンジョン、ウルスラの敗北
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アールを見ると、ウルスラの頭を脇に抱え込み自分に力一杯押し付けている。ウルスラが文句を言っていると思ったら、力づくで押さえつけられていた訳だ。
「アールって思ったよりも力があるんだね」
サツキが隣のユラに話しかけると、ユラが首を傾げた。
「でもウルスラは相当な馬鹿力だぞ? あれ位振りほどけるんじゃねえの?」
「そんなに馬鹿力なの?」
「だから俺がゴリラ女って呼んでんだよ」
確かに、初めてこちらの世界に来た時にドラゴンの首を一刀両断していたかもしれない。
「ユラ! 無事でよかったなー!」
ようやくウルスラを解放したアールが、にこにこしながら駆け寄ってきた。あれ、ウルスラが来ない。ウルスラの足元で、須藤さんが心配そうにウルスラを見上げているのが見えた。
サツキは気になって、アールに尋ねた。
「ウルスラどうしちゃったの? どっか痛くなっちゃったんじゃない?」
「えー? ウルスラが暴れるからさ、全力で押さえつけちゃったけど、痛くない様にした筈だぞ」
「ウルスラには力で勝てないんじゃないの?」
するとアールが笑った。おう、爽やか。
「俺も一応剣士だからさ、単に力勝負だったら多分ウルスラにだって勝てると思うぞ」
「え? そうなの?」
「剣の腕はウルスラの足元にも及ばないけどな!」
にっこにこで敗北を認めるあたり、やはりこの人はいい人そうだ。もうちょっと向上心があってもいいかな、とは思うが。なんせこの人だって通り名はへっぽこ剣士だ。
では、ウルスラは何故まだ頭を下げたまま背中を向けて立ち尽くしているのだろうか。サツキはハッと気が付いた。まさか、力で勝てないことが悔しくて凹んでいるとか?
慌ててウルスラの元に駆け寄った。
「ウルスラ、大丈夫!?」
ウルスラの背中に手を置き、下から覗き込んでみると。
「……ウルスラ?」
「み、見ないでサツキ」
ウルスラの顔は、見事に真っ赤になっていた。いやいやいや、滅茶苦茶可愛いんですけど。普段は強く逞しく凛としたウルスラが、なんですかこの乙女みたいな反応は。
サツキはこそっと尋ねた。
「ウルスラ、思ってたよりもアールの力が強くて照れちゃった?」
「サツキって時折遠慮なくぶっ込んでくるわよね」
「いや、どういう心境なのかなって」
「……今ここでは、ちょっと」
ウルスラの口が尖っていた。サツキはぽん、と肩を叩くと、慰める様に言った。
「後で女湯で聞くから」
「女湯……そうね、そこなら確かに誰にも聞かれないわ!」
「でしょでしょ?」
「サツキさすがね!」
「ふふ、さ、元気出して行こうよ」
「うん……ありがとう!」
ウルスラはようやくいつもの調子を取り戻した様だ。よかったよかった。ウルスラはアールにはそこまで興味がないようなので、アールの意外な一面を見てちょっと驚いただけかもしれないな、とサツキは思った。
ユラとアールを振り返る。二人は楽しそうにじゃれ合っていた。サツキは、ユラの恋を応援するとユラに言った。でももしウルスラもアールに恋をしたら、一体どちらを応援したらいいんだろうか。
サツキの悩みは尽きなかった。
「アールって思ったよりも力があるんだね」
サツキが隣のユラに話しかけると、ユラが首を傾げた。
「でもウルスラは相当な馬鹿力だぞ? あれ位振りほどけるんじゃねえの?」
「そんなに馬鹿力なの?」
「だから俺がゴリラ女って呼んでんだよ」
確かに、初めてこちらの世界に来た時にドラゴンの首を一刀両断していたかもしれない。
「ユラ! 無事でよかったなー!」
ようやくウルスラを解放したアールが、にこにこしながら駆け寄ってきた。あれ、ウルスラが来ない。ウルスラの足元で、須藤さんが心配そうにウルスラを見上げているのが見えた。
サツキは気になって、アールに尋ねた。
「ウルスラどうしちゃったの? どっか痛くなっちゃったんじゃない?」
「えー? ウルスラが暴れるからさ、全力で押さえつけちゃったけど、痛くない様にした筈だぞ」
「ウルスラには力で勝てないんじゃないの?」
するとアールが笑った。おう、爽やか。
「俺も一応剣士だからさ、単に力勝負だったら多分ウルスラにだって勝てると思うぞ」
「え? そうなの?」
「剣の腕はウルスラの足元にも及ばないけどな!」
にっこにこで敗北を認めるあたり、やはりこの人はいい人そうだ。もうちょっと向上心があってもいいかな、とは思うが。なんせこの人だって通り名はへっぽこ剣士だ。
では、ウルスラは何故まだ頭を下げたまま背中を向けて立ち尽くしているのだろうか。サツキはハッと気が付いた。まさか、力で勝てないことが悔しくて凹んでいるとか?
慌ててウルスラの元に駆け寄った。
「ウルスラ、大丈夫!?」
ウルスラの背中に手を置き、下から覗き込んでみると。
「……ウルスラ?」
「み、見ないでサツキ」
ウルスラの顔は、見事に真っ赤になっていた。いやいやいや、滅茶苦茶可愛いんですけど。普段は強く逞しく凛としたウルスラが、なんですかこの乙女みたいな反応は。
サツキはこそっと尋ねた。
「ウルスラ、思ってたよりもアールの力が強くて照れちゃった?」
「サツキって時折遠慮なくぶっ込んでくるわよね」
「いや、どういう心境なのかなって」
「……今ここでは、ちょっと」
ウルスラの口が尖っていた。サツキはぽん、と肩を叩くと、慰める様に言った。
「後で女湯で聞くから」
「女湯……そうね、そこなら確かに誰にも聞かれないわ!」
「でしょでしょ?」
「サツキさすがね!」
「ふふ、さ、元気出して行こうよ」
「うん……ありがとう!」
ウルスラはようやくいつもの調子を取り戻した様だ。よかったよかった。ウルスラはアールにはそこまで興味がないようなので、アールの意外な一面を見てちょっと驚いただけかもしれないな、とサツキは思った。
ユラとアールを振り返る。二人は楽しそうにじゃれ合っていた。サツキは、ユラの恋を応援するとユラに言った。でももしウルスラもアールに恋をしたら、一体どちらを応援したらいいんだろうか。
サツキの悩みは尽きなかった。
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(追記2018.07.24)
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(追記2018.07.26)
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