上 下
403 / 731
第三章 上級編開始

第401話 魔術師リアムの上級編初日の休暇交渉

しおりを挟む
 リアムが夜用なるものを着用して白い視界の中部屋に戻ると、祐介がどこかへ電話を掛けているところだった。呼び出し音が暫く鳴った後、出たのは男の声だ。

「あ、潮崎さんお疲れ様です。お休み中にすみません」

 電話の相手は潮崎の様だ。何だろう? リアムは疑問に思ったが、会社で業務をこなしている間に、電話中の人に話しかけてはならないということはすでに学んでいる。祐介がリアムが立って待っているのに気付くと、ベッドを指差した。寝ていろということらしい。身体が辛かったので、リアムは祐介の勧めに素直に従うことにした。

「実は、木佐さんに連絡を取りたかったんですけど連絡先を知らなくて。今ご一緒ですか?」

 何故祐介が木佐ちゃんと電話で話したいのだろうか。リアムとの勝負は互いに負け、潮崎の一人勝ちだったかと思ったが、まだ密かに勝負を続けるつもりなのだろうか?

「はい、お願いします」

 祐介が、ベッドに横になり自分を見つめているリアムを見て、頬を撫でてきた。その手があまりにも温かくて、リアムは暖を取りたくなり、祐介の手を上から押さえ、目を閉じた。

「――あ、木佐さん、お休み中にすみません。実は明日のサツキちゃんの出勤についてご相談がありまして」

 電話の向こうから、木佐ちゃんの声が聞こえてきた。どうやらあちらはずっと一緒に過ごしていたらしい。羽田からは何も被害はなかったのだろうか。心配ではあったが、この感じだと接触はなかったのかもしれない。木佐ちゃんの家で過ごしているとの話であったので、家の場所は羽田にはばれていないのかもしれなかった。

「実は、かなり生理痛が酷そうで。――はい、あ、やっぱりそうだったんですか? 今も真っ白になって寝てるんですけど、頑張り屋だから無理して仕事に行っちゃいそうで。――はい、ありがとうございます、そうさせてもらえると助かります」

 これは思うに、明日の休みの申請をしているのではなかろうか。そうか、木佐ちゃんがリアムの上役であるということは、休暇の確認は木佐ちゃんに取れということなのだ。リアムは納得した。

「で、これは僕の我儘なんですけど、羽田さんのことがあって、どうしても一人にしておくのが心配で。――あ、すみません」

 営業を統括しているのは最年長の潮崎だ。どうも今木佐ちゃんは、潮崎に祐介の休みを確認しているらしい。ん? 祐介も休むのか?

「祐介? 私は一人でも何とかなると思うぞ」

 家から出なければいいだけの話だ。すると、祐介がじと、といった目でリアムを見下ろした。

「信用できない」

 リアムは、何も言い返せなかった。確かにこちらに来てからのリアムといったら、祐介なしには何も出来ていない状態であったから。

「あ、大丈夫ですか? すみません、電話は繋がる様にしておきますので。――はい、ありがとうございます。今日はうどんの卵とじに」

 何の話になっているのだろうか。

「ホッカイロを貼るんですか? お腹に? あ、やっぱり体温て下がってるんですね。道理で触ると冷たいと」

 何か助言を受けている様だが、ホッカイロとは何だろうか。

「分かりました。じゃあ僕が温めます」
「は?」
「ありがとうございました。はい、また明後日に。失礼します」

 祐介が、電話を切った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

性欲排泄欲処理系メイド 〜三大欲求、全部満たします〜

mm
ファンタジー
私はメイドのさおり。今日からある男性のメイドをすることになったんだけど…業務内容は「全般のお世話」。トイレもお風呂も、性欲も!? ※スカトロ表現多数あり ※作者が描きたいことを書いてるだけなので同じような内容が続くことがあります

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

[恥辱]りみの強制おむつ生活

rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。 保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。

処理中です...