401 / 731
第三章 上級編開始
第399話 魔術師リアムの上級編初日はぐったり
しおりを挟む
バタン、と玄関の扉が閉じる音がして、リアムはいつの間にか自分が寝ていたことに気が付いた。手に握り締めていたガラケーと接触した皮膚が汗ばんでいる。
ガサゴソ、とビニール袋が擦れる音がする。
「……祐介?」
すると、祐介がひょっこりと顔を覗かせた。急いで行ってきたのだろうか、少し息が弾んでいる様だ。ビニール袋を戦利品の様に嬉しそうに掲げ上げてみせるその姿は、虫を捕らえることが出来て喜んでいる子供の様だ。
「買ってきたよ。説明するね」
そう言うと、ベッドの端に腰掛けて袋から取り出したのは三種類の生理用ナプキンだった。祐介がへへ、と笑う。
「実はやっぱり全然分からなくて、郁姉に聞いちゃった」
「郁姉に? それは郁姉にもお手間を取らせてしまったな」
「あの人は頼られるの大好きだから。ていうか下手するとこっちに来たい位の勢いだったから、断るの大変だったよ」
「そうなのか?」
祐介がにこにこと頷いた。
「サツキちゃんに会いたいみたい。随分と気に入られちゃったね。――来なくていいのに」
最後はぼそっと呟いていた。祐介よ、郁姉に対する態度が酷すぎやしないか。
「で、サツキちゃんの様子を、勝手にどうかなとは思ったけど説明しちゃった。大丈夫だった?」
「別に問題はないが……様子とは?」
祐介がこめかみを指でぽりぽりと掻いた。
「あのー、その、出血量とか、顔色も悪かったし、具合も悪そうだし、ふらふらだしとかそういうこと」
リアムは納得した。
「むしろありがたい。私はこの身体がどういう傾向にあるのかまだ分かっていないからな。女性の経験者目線での意見があった方がそれはいいだろう」
「本当? よかった」
祐介が安心した様に笑った。本当に祐介は気遣いがしっかりとしているのだ。
「で、貧血も激しいみたいだし、出血量が多いんじゃないかって郁姉が言ってたので、しっかりと吸収出来るタイプの物を教えてもらいました。普通の日用、多い日用、あとは夜用」
「そんなにあるのか……」
リアムは別の意味で頭がくらくらした。
「で、横になっている時は夜用必須だそうなので、替えた方がいいよ。後ろから漏れるんだって」
「なんと」
女性とは、普段何もない様な顔をしているが、実は知らないところでこの様な苦労をしていたらしい。しかも毎月だ。リアムは気が遠くなった。サツキの身体にいる限り、これが続くのだ。
「で、お薬はね、痛むなら飲んだ方がいいって」
祐介はそう言うと、薬を取り出してみせた。
「まだ飲んじゃ駄目だよ」
と言いつつリアムの手のひらに薬を置き、さっと立ち上がるとグラスに水を入れてきた。
「口に入れて、ぐびっと水で飲んで。噛んじゃ駄目だよ」
「分かった」
リアムの腰はもう痺れていて感覚がないが、冷たくなっている気がして仕方がない。そして腹は痛く、脂汗が出てきていた。リアムは言われた通りに薬を飲むと、祐介の助けを借りて立ち上がり、トイレへと向かった。
「これが毎月来るのか……」
泣きたくなった。すると、祐介が言った。
「会社、月に一回生理休暇取れるよ。明日休んだ方がいいんじゃない?」
あ、でも、と祐介の表情が曇った。
「……一人にしたくない」
祐介が何かを考え始めた。
ガサゴソ、とビニール袋が擦れる音がする。
「……祐介?」
すると、祐介がひょっこりと顔を覗かせた。急いで行ってきたのだろうか、少し息が弾んでいる様だ。ビニール袋を戦利品の様に嬉しそうに掲げ上げてみせるその姿は、虫を捕らえることが出来て喜んでいる子供の様だ。
「買ってきたよ。説明するね」
そう言うと、ベッドの端に腰掛けて袋から取り出したのは三種類の生理用ナプキンだった。祐介がへへ、と笑う。
「実はやっぱり全然分からなくて、郁姉に聞いちゃった」
「郁姉に? それは郁姉にもお手間を取らせてしまったな」
「あの人は頼られるの大好きだから。ていうか下手するとこっちに来たい位の勢いだったから、断るの大変だったよ」
「そうなのか?」
祐介がにこにこと頷いた。
「サツキちゃんに会いたいみたい。随分と気に入られちゃったね。――来なくていいのに」
最後はぼそっと呟いていた。祐介よ、郁姉に対する態度が酷すぎやしないか。
「で、サツキちゃんの様子を、勝手にどうかなとは思ったけど説明しちゃった。大丈夫だった?」
「別に問題はないが……様子とは?」
祐介がこめかみを指でぽりぽりと掻いた。
「あのー、その、出血量とか、顔色も悪かったし、具合も悪そうだし、ふらふらだしとかそういうこと」
リアムは納得した。
「むしろありがたい。私はこの身体がどういう傾向にあるのかまだ分かっていないからな。女性の経験者目線での意見があった方がそれはいいだろう」
「本当? よかった」
祐介が安心した様に笑った。本当に祐介は気遣いがしっかりとしているのだ。
「で、貧血も激しいみたいだし、出血量が多いんじゃないかって郁姉が言ってたので、しっかりと吸収出来るタイプの物を教えてもらいました。普通の日用、多い日用、あとは夜用」
「そんなにあるのか……」
リアムは別の意味で頭がくらくらした。
「で、横になっている時は夜用必須だそうなので、替えた方がいいよ。後ろから漏れるんだって」
「なんと」
女性とは、普段何もない様な顔をしているが、実は知らないところでこの様な苦労をしていたらしい。しかも毎月だ。リアムは気が遠くなった。サツキの身体にいる限り、これが続くのだ。
「で、お薬はね、痛むなら飲んだ方がいいって」
祐介はそう言うと、薬を取り出してみせた。
「まだ飲んじゃ駄目だよ」
と言いつつリアムの手のひらに薬を置き、さっと立ち上がるとグラスに水を入れてきた。
「口に入れて、ぐびっと水で飲んで。噛んじゃ駄目だよ」
「分かった」
リアムの腰はもう痺れていて感覚がないが、冷たくなっている気がして仕方がない。そして腹は痛く、脂汗が出てきていた。リアムは言われた通りに薬を飲むと、祐介の助けを借りて立ち上がり、トイレへと向かった。
「これが毎月来るのか……」
泣きたくなった。すると、祐介が言った。
「会社、月に一回生理休暇取れるよ。明日休んだ方がいいんじゃない?」
あ、でも、と祐介の表情が曇った。
「……一人にしたくない」
祐介が何かを考え始めた。
0
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
性欲排泄欲処理系メイド 〜三大欲求、全部満たします〜
mm
ファンタジー
私はメイドのさおり。今日からある男性のメイドをすることになったんだけど…業務内容は「全般のお世話」。トイレもお風呂も、性欲も!?
※スカトロ表現多数あり
※作者が描きたいことを書いてるだけなので同じような内容が続くことがあります
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
[恥辱]りみの強制おむつ生活
rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。
保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる