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第三章 上級編開始

第394話 OLサツキの上級編、フレイのダンジョン地下一階の続き

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 ユラの手が、サツキの顎を掴んだ。

 ユラは前衛の二人がこちらに注意を払っていないのを確認すると、ねだる様に言った。

「俺に足りないのは可愛さか? 可愛ければ俺の方を見るか?」

 顎を掴まれているので、歩きにくくて足が止まってしまった。

「ユラ、ほら、前の二人が行っちゃうよ」
「答えろよ」

 ああ、行ってしまう。それにこの近さ。アールに見られたら大変だ。あとウルスラにも。

「ユラ、私は別にアールが好みだからって見てた訳じゃないから、安心して、ね?」
「じゃあ何で見てたんだよ」
「そんなこと言われても、裸の男の人なんて殆ど見たことなかったし。ああいい筋肉だなって思っただけだし」
「本当か?」
「本当だよ。アールを盗っちゃおうとか思ってないし」
「盗る? ……ああ」

 ユラが一瞬不可解そうな表情を浮かべたが、理解したのか頷いた。

「だからほら、離して」
「つまりあれか? お前は、俺が他の奴がアールを見るのを嫉妬してて見ないで欲しいから、だからお前に俺を見ろと言っていると思っているってことか?」
「うん」

 ユラが、はあ、と深い溜息をついた。はっきりと肯定されて怒ったのだろうか? でもあまり怒った様には見えないが。

「本っっ当、斜め左下……」

 ユラがぶつくさ言っている間にも、前の二人はどんどん進んで行ってしまっている。サツキは慌てて顎にあったユラの手を掴むと、走り出した。ラムも急いでサツキの隣を走る。

「ほらユラ! 早く走って!」
「大丈夫だって。サツキは心配性だなー」

 そう言いながらも、ユラはサツキに合わせて走ってくれている。あ、しまった。普通に手を握ってしまっていた。そう思い手を離そうとしたところ、逆にぎゅっと掴まれてしまった。

 え? と思って走りながらユラを見ると、うっすらと笑っている。またこうやってからかっているのだ、この人は。

 ようやく二人に追いつきそうになった所で、走りながらユラが唐突に叫んだ。

「バリアーラ!」

 途端、パーティーを白いキラキラが覆い、ウルスラとアールが剣を構えた。

「え!?」

 どこに敵がいるんだろう? すると、ユラが緊張した様な顔に笑みを浮かべて教えてくれた。

「サツキ、前のあの炎を見てみろ」
「炎……」

 サツキはバリアーラの白っぽいバリアの壁の外を探す。すると、人魂の様に揺れている物があった。炎? いや、違う。炎の周りに半透明の膜の様なものが見える。ボール?

 巨大な一つ目がこちらをぎろりと見た。目も半透明だが、ほんのり黄色の蛍光色で、所々血走っている。

 すると、そこからニョン! と腕みたいな触手が出た。うげ! そう思っていると、どわああああ! と次から次へと腕が生えてくる。

「相変わらず気色悪いなーこいつ」

 ユラがサツキの手を繋いだまま言うと、前衛の二人に声をかけた。

「どっちか、採取用の瓶は持ってるか!?」
「私が持ってるわ!」

 ウルスラが答えた。アールがユラに聞く。

「ユラ! こいつの倒し方って凍らせるんだよな? 物理攻撃効かなかった記憶があるんだけど!」
「今回は凍らしちゃ駄目だ。火種が採取出来なくなる」

 ユラが言った。サツキの視線に気付き、教えてくれた。

「あれがファイヤーゴーストだよ」

 そしてぎゅっと手を握り直した。
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